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真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
一年目・中等部一年生
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夏・発注ミス

 太陽がてっぺんに上り日差しが強くなっている。

 夏がやってきたのだ。

「あっつ……」

 フィラは鞄を頭に乗せて街を歩いていた。制服は冬のままだが、袖を捲っているため問題は無い。

「おはようございまーす」

「あら、こんにちはフィラちゃん」

「あ、おはようございます。マスターさん」

 フィラを出迎えてくれたのは商店のマスター。初めは随分と警戒されていたが今はアルバイトとして認められたのだろう。

 優しくてたまに中々お目にかかれないココアをくれる。

「もうすぐお店開けるから、着替えて来なさい」

「はーい」

 フィラはお店の奥に行き、鞄を置く。学園の制服を脱ぎ、お店の制服になる。

「お、フィラちゃん、やっほー」

「あ、おはようございます。シルクさん」

「おはようの時間じゃなくない?」

「むっ、いいんですっ」

 ムスッとしながらフィラが応えるとシルクは大笑いを始めた。

 この商店の店員はマスターとシルクだけらしい。少ない理由を聞いてみると、どうやらここのお店を経営しているのは一世紀と半分位商店を営んでいる貴族らしい。その貴族は王国に七件店を構えている。その内の一件であるここの経営はそこの令息が考えているらしい。

 それだけなら貴族の特に商家なら普通の事らしい。問題はその令息が大変美形らしい。そうなるとお分かりの通り令息目的で来る女性が増える。

 マスターは相当激怒したらしく当時採用していた職員を全員クビにしたらしい。

 それで残ったのはマスターだけ。シルクはマスターが裏路地で叫んでた所を目撃してしまったらしい。マスターは黙らせる代わりに欲しいものを聞いた。そうすると、シルクは働き手と言ったので仕方なくお店に入れたのが経緯だ。

「……そういえば、シルクさんのお名前って高級の布と同じ名前ですよね」

「あー、ドレスとかのシルクね」

「そうです。響き素敵です」

「お、言われたことなーい。やったね」

 だったら、令嬢では無く平民を採用すれば良いと考えたマスターは平民を数人採用し、仕事をしていた。だが、平民は中々お目にかかれない品物に目が眩み、盗んだりしていたらしい。それからマスターは人を増やすのを諦めたらしい。

 なんで年下の経営者に頭下げないといけない訳!?と一時期毎日のように叫んでいたとシルクが言っていた。

「着替えたー?てか、シルク!この荷物は何!?」

「え、発注っす」

「何が発注なのよ!これ全部期限近いじゃない!?」

「えー、もうすぐ夏の感謝祭なのでいけるかって思って」

「ふざけないでちょうだい!」

 フィラはマスターが持っている箱の中身を覗く。花冠だ。薔薇や百合、チューリップ等で作られている。どれも、平民がプロポーズの時に使う花冠だ。

「……、これ、経営者さんの戦略ですか?」

「いいえ、シルクが独断で発注しやがった……どう落とし前つけんの?」

「マスター。言葉遣い!フィラちゃんに移ったらどうするんですかぁぁ」

「あんたのせいでしょ?」

 マスターは怒ると言葉遣いが悪くなる事が時々ある。シルクさん曰く、マスターはちょっとやんちゃしていた時期があるらしい。

 本当にやんちゃで済んだのかは不明だ。

「これ、本物のお花だからすぐ枯れちゃいますね……」

「そう!そうなの!花は鮮度が命……おまけに今は暑いから枯れやすいのよ」

 マスターはシルクの方を向き肩をガシッと掴んだ。

「どうする気?これ、売り切れなかったら私があの経営者に頭下げるんだけど?」

「えー、十一歳の経営者なんて大丈夫でしょ」

「この店の経営者はあの令息だけそこの商店の組としての経営者はあの令息の父親よ」

「……やばいっすね」

 フィラは話についていけていないが、花冠をどうするか考えていた。

 このお店のターゲット層は学生と社会人だ。近くに学園があり、王都にも近い。そこを任されている当たり相当その令息は信頼されているのだろう。

「むむっ……結婚を考えてる人にプレゼントとか?うーん、赤字になっちゃう……」

「ダメ!フィラちゃんダメダメ!マスターの前で……」

「え?」

 フィラが振り返るとシルクの相手をしていたはずのマスターが後ろに立っていた。ぴゃっと飛び上がるとマスターはフィラの肩を掴んだ。

「フィラちゃん?誰にプレゼントだって?」

「あ、えっと……結婚を考えている人?」

「ははは、フィラちゃん。二度と私の前で結婚とか言わないでね?」

「はは、はい!はい、わかりました!」

 フィラの返事に満足したのかマスターは箱を抱えてお店の表に向かった。

「こ、怖かったぁ」

「フィラちゃん、マスターに結婚って言葉は禁句だよ」

「うぅ、わかりました……」

「適齢期過ぎてるからカッカしてんだよ」

「うぅ、マスターさんいい人見つけてくださいねぇ…」

 フィラは涙ぐみながらお店の方に行く。マスターはどうにかして売ろうとお店の一番見えやすいところに花冠を置いていた。

 花冠は平民がよく使うプロポーズの品物だ。貴族は宝石を嵌めた指輪とやらを送るらしいが、宝石も、アクセサリーも高い。そのため、比較的安く女性が好む花冠を使って世の平民は求婚しているらしい。

 だが、平民のプロポーズ時期は大体冬だ。一年の始まりにする人は、これから二人の人生を始めよう的なことを言うらしい。一年の最後の日に言う人は、これから新たな時を過ごそうと言うらしい。余談だが、フィラの父は一年の最後の日の前日に母にプロポーズをしたらしい。わざわざ前日?とたまに言っているのを聞いた事がある。

「シルクさん…そ、その売る方法とか考えているんですか?」

「ぜーんぜん!!」

 てへぺろと言う効果音が着きそうな表情をするシルク。それをマスターが吸血鬼のような形相で睨んでいた。

 

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