春・実質ダブルデート…?
「貴方、本当にいい度胸してますよね」
「お、会って早々その言葉?まぁ、遅刻しないだけマシか」
レオとマリノは出会ってから早々口喧嘩のようなものを始めた。それを眺めているのはフィラだ。ベンチに腰掛けて眺めている。
今日は紬の日だ。大切な人に感謝を伝える日。フィラはとある年だけ仕事を入れていたがいつもは家族と過ごしている。今年は初めて友人達と過ごすのだ。
「仕事だと何度言えば分かるのですか。こちらは暇では無いのですよ」
「仕事の合間縫って来てくれるなんてやっさしー!!あとは、サクリだけなんだが…来ねぇな」
「先程の話、聞いてます?」
マリノは少し怒っている。レオと上手く話が噛み合っていない状態だ。フィラは来る途中に買ったクッキーを食べる。やはり美味しい。
「よっ、遅れたー」
「おせぇぞ。コイツに怒られたんだが」
「前日に連絡を飛ばしてくるのは正気ではありません」
フィラには二日前にどうかと誘いが来ていたがレオはマリノに昨日連絡したらしい。やはり、どこか可哀想なポジションにいる。
「よし、今から出かけるぞー」
レオは元気良さそうに駆け出した。
ここ最近、レオは女遊びを控えているようだ。誰か本命の女性ができたのかマリノとサクリと話した事があるが、あれに本命は無いと一刀両断されてしまった。
「いやー、初めて祭りに来たわ」
「ふへ、わたしも初めて…お店の中からは見てたよ」
「お、じゃあフィラの初めてはアタシの物ね」
「物扱いしないで…わたしは人だから」
サクリはフィラを連れ回し、露店を歩き回る。マリノとレオは何やら相談中のようだ。喧嘩しても仲が良いとはこの事だろう。
フィラはとある露店で足を止めた。
綺麗なアクセサリーが売っている露店だった。
「これ、綺麗…」
「へぇ、どれどれ?お、宝石だ」
「宝石!?高いじゃん…」
「まぁまぁいい値段するねぇ。銀貨六枚だって」
「お、お給料二月分…」
フィラはささっと身を引く。店主に勘違いされたら困るからだ。買わないのに見ているだけは良くないと学んだ。
サクリはその隣の串焼きを買っていた。ご令嬢が串焼きを食べている姿はなんとも不思議な気分に陥る。
「サクリちゃんそういうの食べるんだね…」
「なに?美味いじゃん」
「そうだけど…なんかこう、お貴族様が食べているの見ると…変な感じ」
フィラは思った事をそのまま言っている。貴族が平民の屋台の物を食べているイメージはやはり未だに身につかない。意外と皆食べているのだが不思議に思えてしまう。
フィラは隣で食べかけのクッキーを食べていると向こうからマリノとレオがやって来た。
「サクリにフィラちゃん聞いてくれよ!コイツばっかナンパされてんだぜ!?おかしいだろ!!俺を見ろ!!」
「それさ、レオお前今日髪に女のアクセサリー着いてるから」
レオはマリノを指さして嘆いている。その理由をあっさりとサクリに言われるも、は?という反応をし髪の後ろを触る。だが中々見つけられないようだ。それに呆れたマリノがサッと容赦なく取った。いった!?と叫んでいるレオの前にアクセサリーが差し出される。
「…ガチで女物じゃん」
「だろ?」
「アイツだ…」
レオが言うにはどうやらレオの妹がつけたらしい。レオはシュリスタン家の長男だが、下に弟が二人、妹が四人いるらしい。大家族だ。きっとその四人のうちの誰かがつけたのだろう。
「サクリちゃんはお兄さん一人だよね…?」
「兄貴が一人、弟二人。男に囲まれたぜ。フィラは?」
「弟が一人いるよ。勉強熱心で頑張り屋さんなの」
フィラはふと家を出た時のテイルの顔を思い出す。何度も男?男なの?と言ってきた弟。あそこでバカ正直に男の子と女の子と遊んでくると言っていたら確実についてきていただろう。
「へぇ…で、マリノは?」
「妹が一人」
「俺の三番目の妹と同い年」
いえーいとレオがマリノの肩を組んでピースサインしている。マリノは嫌そうだ。
「てか、アンタらどこ行ってたの。男二人で。楽しい?」
「男子会って言葉があるからな。結構楽しいぞ」
「買い物に付き合わされる身にもなってください…」
どうやら、レオがあちらこちら回ってマリノに荷物持ちをさせていたらしい。今、何も持っていないのを見るときっとメイドが馬車に荷物を置いてくれたのだろう。
「てか、サクリってそんなの食べるんだな」
「フィラと同じこと言って何?そんなに食べないように見える?」
サクリはキッとレオを睨み露店の店主にもう一本追加で頼む。そこそこ良いお値段をしていたが何も考えずに頼めるのは貴族の特権かもしれない。
フィラがそれを眺めているとレオが少し近づいてきた。
「な、フィラちゃん」
「ん?」
「…あー、サクリが気になってる品物とか知らないか?」
「…レオくんもしかして…!」
「違う。マリノにも言われたけど絶対に違う。日頃の感謝だよ…一応幼なじみだし」
フィラはレオのその言葉を聞いて頭をフル回転させる。サクリが喜びそうなものと言えば甘いお菓子にケーキ、それに美味しい食べ物だ。きっとアクセサリーや宝石よりずっと喜んでくれるはずだ。
「…ケーキとか」
「…ケーキバイキングにでも連れてくか。今のうちに」
「サクリちゃん、喜んでくれるよ。きっと」
フィラはニコニコしてサクリの方を見る。まだ、露店の店主に色々注文しているようだ。フィラは今のうちにクッキーを食べてしまう。先程、サクリに狙われていたのだ。フィラのクッキーはフィラの物だ。モグモグ食べているとサクリが戻ってきた。
「アタシのクッキー無くなってる」
「ふへははらしの!」
「食べ終わってから喋って?」
「……これはわたしの!」
フィラはムスッとした様子でサクリにキッとする。サクリは気にせずに串焼きを食べている。まだ手元には三本もある。
「全部食べるんだ…」
「あったりまえじゃん!」




