秋・貴族=諦めが悪い
「貴族ってホントに諦め悪い…なんで?ほっといてよ……」
フィラは空き教室に逃げ込んでいた。いつかの放課後みたいだ。今回は無数の男子生徒ではなく二人の生徒が相手だ。
告白した翌日の放課後、フィラは流石に告白相手に勉強を教えてもらう気にはなれずに帰ろうとしていたところ、レオに見つかったのだ。レオだから、と思って相手をしていたらマリノにも見つかった。向こうは二人でフィラを捕まえる気らしい。
それが二日前だ。
「……サクリちゃん帰っちゃったし…うぅ、一人で最終時刻まで逃げ切るのか……」
この学園の最終下校時間は夜九時。中々遅くまでいることが出来る。フィラはアルバイトに行かなければいけないのでさっさと外に行きたいのだが、校門前にはここ二日、レオが見張っている。それも、フィラのバイトの時間までだ。そのため、フィラは泣く泣く遅れるかレオを吹っ切りアルバイト先に逃げるしかないのだ。
昨日はサクリがいたためレオの気を引いてもらって逃げていたのだ。だが、今日はお兄さんとデートと言って遊びに行ってしまった。多分、こき使う気満々だ。
「……ま、まぁ、昨日みたいに逃げたらいいのか…な」
昨日、フィラは一度マリノに追い詰められていた。向こうはどこか落ち着いているのに怖い顔をしていた。
ただの壁なら捕まっていたが、その時フィラが追い詰めりていたのは窓のある所だった。そこで、フィラは窓を開けてそこから飛び降りたのだ。危険すぎて今日の朝教師から怒られたが仕方がない。どうしようも無いことはあると思う。
「い、いませんように…」
フィラはオドオドしながら扉を開ける。人はいないようだ。フィラはコソコソ進む。
他の生徒は変な視線を向けてくるが今はそれどころではないのだ。
(…校舎裏の木登ったら確か出られるはず)
校舎裏には過去の卒業生が植えた気がある。植えられて数十年経つからか、木は学園の門を超えるくらいまで育っていた。
「……いないよね」
フィラは階段を少しづつ降りていく。階段で出くわすと絶対に逃げられないからだ。
いないと判断したフィラはゆっくり降りていく。
「……いないよね」
「誰がかね」
「ぎゃっ!?」
フィラが慌てて鞄を盾にして後ろを見るとチャーリングがいた。勉強するのか鞄に大量に荷物が詰まっている。
「女が出す声ではないな。汚い声だ」
「し、しつ、失礼…」
フィラはキョロキョロして、チャーリングに反論する。チャーリングは大きなため息をついてフィラの横を横切る。
「そう、君を探しているレディがいたよ」
「女の子……?男の子じゃなくて…?」
「自意識過剰もいい加減にした方がいいね」
チャーリングは相変わらずの事を言いスタスタと校門に向かっている。チャーリングにどこにフィラを探している人がいるのか聞きそびれたフィラはとりあえず上に登る。
「…!?!?」
「見つけた…」
フィラが上に登っていると今、一番見つかりたくない相手に見つかった。
「か、かか、帰る!帰るから追いかけないで!!」
フィラは慌てて階段を降っていく。さっさと右か左に曲がれば、巻けると思ったのだ。フィラは左側に進み適当な空き教室に入る。隅っこに移動し小さくなる。空き教室の中でも一年に数回しか使われない部屋に入ったようだ。埃っぽくて仕方がない。
「うぅ、窓開けたい…」
まともに後ろを見てはいなかったが、多分真面目に追いかけてきそうだ。追いかけっこがこんなに続くとは思っていなかった。
カラッと扉が開いた音がした。片っ端から開けられていたら困るが、フィラが念の為にさらに縮こまる。髪の毛が床についている気がするが気にしない。
(来ないで来ないで来ないで……ここにはフィラはいません…いません)
フィラは何度も来ないようにおまじないをかけるがあまり意味をなさなかったようだ。すぐ隣で窓が開けられた音がした。そしてすぐ好きな声が落ちてくる。
「こんなところにいては体を壊しますよ」
「……いいもん」
「私が気にします」
フィラは反抗の意思としてぷいとそっぽ向く。困らせる気満々のフィラは結構何でもしてしまうのだ。
「そんなに私が嫌いですか?」
「……知らない」
「好かれてると思っても?」
「……ご勝手に」
フィラの口は適当に言っているが、頭の中は真っ白だ。どうやってここから逃げ出すか、今想い人はどの辺にいるのか全くわからないのだ。
とりあえず、窓は開いているようだからそこから出たいとは思っているようだ。
「返事、しても良いですか?」
「やだ」
「なぜ」
「……振られたくないから」
フィラはギュッと自身の体を抱きしめる。結局、フィラも好きな人には受け入れて欲しいと思う訳だ。フィラ自身も口に出してやっと認めたのだ。振られるとわかっていてもちょっとくらい想って欲しいと。
フィラは半泣きになり、縮こまる。もう既に小さいのにさらに小さくなってしまった。
「…私はそんなに愛されているのですね」
「……知らない…知らないもん」
フィラは、恥ずかしくて泣き出したくて顔を膝に埋める。情けなくて仕方が無いのだ。告白したのに全然感情がついてこなくて混乱しているのだ。
「こんなに感情振り回したのに……なんでそんなに、そんなに余裕そうなの…信じられない。初恋泥棒…」
「初恋…」
マリノはどこか嬉しそうだ。フィラには全く意味が理解出来ていないが、悔しくて堪らないのでまた知らないふりをしようと決める。
ぷいと下を向いていると髪の毛が上げられた。反応したら負けと思ったフィラはそのまま触れない。そのままほっといていると額に柔らかい感覚が落ちる。
「…!?!?」
「私も、貴女が…フィラの事が好きですよ」
「は、はぇ?」




