秋・初恋
フィラは、スカートを払って鏡の前に立つ。基本的に女子生徒のために至る所に鏡はセットされている。普段のフィラなら基本的に使わないが、今日は別のようだ。
「…頑張れ自分!頑張れ!!」
フィラは、鏡の中の自分を応援する。鏡に映っている自分は夕暮れで頬が赤くなり、髪の毛が紫ぽくなる。
フィラは自身に勝を入れると、サクリがいるところに向かう。サクリは今年度も沢山やらかしていた。今日は、提出物を連続八回も忘れたため怒られていたのだ。フィラが少し席を外している間に教師に連れていかれたらしい。
フィラが教室に戻ると、作文用紙を折り、飛びそうな何かを作っていた。
「…なにそれ」
「お、フィラ。これはねぇ、魔術を参考にして作った超飛ぶ何か」
「命名すらできてない…」
フィラは席に置いていた荷物を取り、扉の方へ進む。サクリもついてくる。
「で?マジでやるの」
「う、うん…失敗するのにクヨクヨするのは柄じゃないもん」
「うーん。その先は考えてるの?」
「…最悪、マスターさんの知り合いの人かなって」
「まぁ、フィラがいいならいいんだけど」
サクリは少し困っている様だ。フィラは少し不安そうだが、覚悟を決めている。
フィラが今から実行しようとしていることは、貴族にはあまり縁がない告白と言うものだ。フィラは振られる気満々という状態だ。それには簡単な理由があった。周りの令嬢たちが、告白をしても振られたと嘆いているからだ。サクリは、本気の恋して可哀そうと言っていたことは秘密だ。 ちなみに、レオに告白すると大体受け入れてもらえるという噂が流れているので、振られた子の半分はレオに慰めてもらっているらしい。二人ともモテモテだ。
「お、いたよ。目的の人」
「うぅ。なんか心臓出てきそう…」
フィラは心臓を抑えている。サクリは制服の上から着ている服にポケットに手を入れている。
「ほら、頑張れ」
「…な、慰めてね…」
「はいよ。今日は奢ってあげるから」
フィラが恋を認めてしまってからまだ半年程だ。このくらいの時期に告白すると決めたのは、もう未知の感情に振り回されたくないからだ。たった一人の人に感情が左右されるのはフィラが全く耐えられなかったからだ。
目的の相手マリノはレオと共に歩いていた。何か言われているのかすごく嫌そうな顔をしている。
今日は、フィラが実行すると決めていたので勉強会はなしにしていたのだ。
「ほら、がんばーれ」
「うぅ、レオくん噂広めないでね…」
フィラは、サクリから離れチョコチョコとマリノに近づく。二人は何も言わずに近づいてきたフィラを疑問に思っている様だ。警戒されていないのは今までの信頼があるからだろう。
フィラは今からこの信頼を崩すかもしれないのだ。
「フィラちゃん?なにした。なんかあった?」
レオはフィラを気にしてくれるがフィラの頭は真っ白だ。ソロリと顔を上げてみる。やはり、二人とも顔が良い。女子生徒に人気そうな顔をしている。
「あの…ね。その…」
フィラはサクリに助けを求めて向こうを見る。
(…ゆ、有志を見届けようとかないわけぇぇ)
サクリは呑気に栗を食べていた。一体どこから出てきたのかモグモグ食べている。めちゃくちゃ堂々と食べている。むしろ、あれで食べていないと言われても全く信用できない。
フィラが恨みの念を送ると気いたのかフィラの方を向いた。そして、ひらひらと手を振ってきたのだ。完全に他人事だ。
(しってたけど…サクリちゃんがそういう人なの知ってたけど!!)
サクリはあまり、本気の恋に積極的ではない。だが、恋の話は好きだ。大人になったら、恋の話と失恋話でお酒を飲みそうだ。
フィラは諦め、二人の方を見据える。ドキドキしすぎてまともに顔を見れないが致し方ない。
「…あのね、その…あぅ…ほ、本日はお日柄もよくっ」
「俺らって他人だっけ」
「あぅ…ち、違うけど…」
レオの鋭いツッコミにフィラは縮こまる。
レオのツッコミに吹っ切れたのか、下ばかり向いていた顔を上げフィラは、マリノの手を取った。マリノは困惑してるようだ。そして、レオはマリノ以上にえ?え?と困惑しているようだ。
「……そ、そのっ、す、好きなんですっ。貴方が、好きですっ」
フィラはそれだけを言うと手を離し、サクリの方へ逃げる。サクリはフィラが来ると手を取って走り出す。途中レオの声がしているがサクリは止まらずに走っている。
「いいじゃーん。頑張って」
「な、慰めてぇぇ」
♧♧♧
「ねーちゃん。何見てんの」
「…教本」
「へぇ。勉強熱心だ」
テイルはフィラがまだ夕飯前にいることに驚きつつも、いつも通りに接する。フィラの手が一向に進まないのを知らないふりをする。
「ねーちゃん何食べたい?今日は俺がつくるんだ!!」
「…パスタかな」
「俺の好きな食べ物じゃん」
「バレちゃった」
フィラはえへへと笑ってテイルの方を見る。テイルはぶつぶつ文句を言いながらもエプロンをして台所に向かった。フィラはそれを見届けるととあるものを近くに寄せる。
瓶の中に咲いた花が水の中に閉じ込められているものだ。名前は知らないが、とても綺麗なものだ。春の花が閉じ込められている。夏のお礼と言われ受け取ったものだ。
ぷかぷかと優雅に上品に、寂しそうに浮かんでいる。
「…好きだよ」




