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真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
六年目・高等部一年生
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夏・バイト

「フィラちゃーん。こっちおねがーい」

「はーい」

 フィラはバタバタとお店の表に出る。フィラは去年の春で十五歳になった。そのため、表立ってアルバイトが出来るようになったのだ。接客も少しずつ挑戦している最中だ。

「シルクさん、どうしましたか」

「これ、マスターが仕入れたガラスポットなんだけどさ、ちょっとあっちの方に飾ってくれない?」

「わかりました!」

 フィラはおっとっと、とバランスを取りながらガラスポットを持っていく。シルクが言ったあっち側というのは店の顔とも言えるショーウィンドウだ。春には宝石などを飾っていたがあっという間に売れ今店にあったぬいぐるみで補っていたのだ。

「猫さんお疲れ様ですっ」

 フィラはショーウィンドウに数週間いた猫のぬいぐるみを隅っこに置いておく。冬に猫のモニュメントを作ってからマスターは完全に猫を使って商売している。ちなみに、シルクが書いていた案は結局獅子だったらしい。見えないと言ったら同じネコ科だからいっかと言っていた。シルクが能天気で助かった瞬間でもあった。

「ガラスポットと…紅茶とか置いておこうかな」

 フィラはショーウィンドウでも少し高いところにガラスポットを置く。これはマスターの指示だ。

 ショーウィンドウに展示をしているとよく小さな子が手を振ってくれる。それにフィラが手を振り返すとキャッキャと喜んでくれるのだ。そして、たまに猫のぬいぐるみで手を振って見るとキラキラした目で見てくれるのだ。小さい子はやはり可愛い。

「店員さん?これどこかしら?」

「はい。これは…お店の裏にはあります!」

「早く出してちょうだい」

「はいっ」

 フィラはパタパタとお店の裏の方に行く。そして、求められているものを持っていく。

「どうぞ!」

「どーも」

 お客さんは不貞腐れながらも他の商品を見ている。

 ここのお店に来る人は大体貴族だ。そのため、平民が店員ということを知っている人は半分くらい高圧的な態度を取ってくる。だが、マスターもシルクも口酸っぱく言ってきたことは絶対に反抗するなというもの。反抗したら店の評判を落とされるかららしい。

 世の中難しいものだ。

「続きっ。えっと、猫さんもまた頑張ってもらおうかな。猫さんにはガラスポットを割れないように護衛してもらおう」

 フィラはガラスポットの横に猫のぬいぐるみを置く。一匹では寂しいのでお店の奥に眠っていた謎の生命体のぬいぐるみも置いていく。可愛いのかよく分からないが、同じクラスの令嬢の間では流行っているらしい。

「これでいいのかな」

 フィラはふぅと汗を拭う。まだ暑くはない方だがもう少し先になるともっともっと暑くなる。涼しくする手段が窓を開ける、氷を置くくらいしかないため、夏の商売は大変だ。

「…あれ、マリアンネさん」

 フィラがショーウィンドウから通りを見ていると見慣れた顔が。退学したあともたまにこの店に来るマリアンネだ。今日は隣に男性を連れている。

(デートかな。頑張れ!)

 フィラはショーウィンドウから応援する。

 マリアンネの婚約者はそれなりに良い人ということをマリアンネ自身から聞いた。貴族の婚約はほぼ確実だ。一応、男の人から離縁は切り出せるが離縁すると暫くは何か色々言われるらしい。ちなみに、女の人からは離縁を切り出すことはできないらしい。実に不平等な世界だ。

 フィラがショーウィンドウから離れ、商品を綺麗にしているとお店のベルが鳴った。

「…!?」

 そこに居たのはマリアンネと男性だ。マリアンネはどことなく不安そうに髪を触ったりしている。だが、フィラを見るけると助かった!とでも言うような顔をする。そして、男性に何か言ったあとフィラの方に来た。

「い、いらっしゃいませ…?」

「少し話しましょう」

「へ、あ…ま、マスターさん!休憩失礼しまーす!」

 フィラはマリアンネに手を引かれてお店の外に出る。外は灼熱だ。街の人はよくこんな中歩けるなと思ってしまう。

「えっと、どうしたの…?」

「お願い!婚約者に似合う服を仕立てて欲しいのよ!」

「へ?ふ、服…?」

 フィラは頭の頭上に疑問符が沢山並んだ気がした。マリアンネが言っていることは服を仕立ててと言うものだ。生憎、フィラの働いているのは商店。布は売っていても服は仕立てられない。

「えっと、お洋服ならお店でとかは?」

「貴族は、お店で服を買わないのよ!仕立てるの!!」

「じゃ、じゃあ、お家とかで…」

「結婚前の男女が同じ家にいるなんてハレンチよ!」

「なんで!?」

 とりあえず、フィラは落ち着いてマリアンネに説明するが、マリアンネは色々追い詰められてそうだ。

「そ、そもそもなんで服…?」

「い、いいじゃない!なんでも!!」

 マリアンネはフィラを少し見下していたが今は大分貴族のような態度を取っている。そこまで頭が回っていないのだろう。フィラは裏に行き、シルクにマリアンネの事情を説明する。

「あー。まあ、やれるっちゃやれる。うん、代わりに料金ちょっとかさむよ?」

「構いませんわ!」

 シルクは裏にあるお客さん用の場所にマリアンネの婚約者を呼んでいる。

「…接客って大変だなぁ」

 フィラの独り言はマリアンネに呼ばれて散った。

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