春・自信満々。いいことだね
フィラはいつも通り自身の席に着くとはぁと鞄に顔を埋める。正直、昨晩は全く寝れなかったのだ。テイルにはため息が多すぎて、ねーちゃんが狂った…許さない誰?と詰め寄られたのだ。誰でもなくこれは自身の問題なので適当にあしらった。
「お、フィラ。おはよー」
「…うん。こんにちわ…」
「あー。大丈夫そ?」
サクリはチュッパチャプスを加えて堂々と学園に来た。本来、昼食以外に何かを食べる事は禁止とされているが、サクリはそんなの関係ない!というように堂々と何かを咥えている。夏場は特に何かを咥えていることが多い。
「おーい。生きてるー?」
「二次不等式なら生きてるよ…」
「こりゃやばい」
サクリは流れるようにチャーリングの席を奪う。チャーリングはまだ来ていないので良いが、これから来たらまた何かを言われるだろう。
サクリは鞄からパンを取り出し開ける。そして、フィラの口に突っ込んだ。
「むぐっ!」
「食え食えー。で?何したん。話聞こか?」
「…ナンパの常套句…」
フィラは不貞腐れながらもパンをモグモグする。周りの女子生徒はサクリとフィラを異質な物のように見ている。どうやら、サクリは結構有名どころの伯爵令嬢らしい。普通なら、サクリには大量の子爵、男爵の取り巻きがいてもおかしくない。だが、態度も性格も悪いためサクリは初等部の時、孤立させられたらしい。この状態で好きを貫き通したのは尊敬できる。それを嫌がっている女子生徒がサクリには嫌味と恨みの視線を向けている。フィラは言わずとも、男子からの視線を集めていることに対する恨みと妬みが向けられている。
「今日、模試が返しで死にそうとか?」
「そ、それもあるけど……今回の模試で今後が決まる…うぅ」
「あー。順位か。今回から百位以下補習でしょ?アタシは行ける自信ある」
「全くないから怖いよぉ…」
フィラはぴぃとサクリに不安をぶつける。
「ねぇ、その、僕の席」
「うげ、また来たなお前」
「元々僕の席だ。何か言うことはないのか」
「へいへい。ここ借りてますからぁぁ」
サクリはちっと舌打ちをしている。フィラがあわあわしているとチャーリングは大きなため息をついてどこかへ行った。
「あいつマジで誰?」
「チャーリングさん…」
「チャーリング?えっと…チャーリングチャーリング……あ、公爵だ」
「侯爵?レオくんと同じ?」
「違う違う。男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵の一番高い階級公爵」
「侯爵と公爵…よく分からない」
フィラは未だに階級を覚えられていないが、サクリの説明的に一番高い、つまり一番偉い人だと言うことは分かった。
「サクリちゃん、その…公爵?ってどのくらいすごいの…?」
フィラにはイマイチ階級の偉さがよく分からない。伯爵のサクリが侯爵のレオをパシっているのをよく見ている。そして、侯爵のレオは普通に男爵のマリノに絡んでいる。このよく分からない状態にいるため、フィラは階級についてそこまで知る機会がなかったとも言える。
「王族の一二等親以内の家系か、すっごい功績の人」
「……?一二等親ってほぼ他人じゃん…」
「それな」
サクリは指でバシッとフィラを指さす。フィラは指向けないで!と言いっているが、サクリはそれを無視している。
「サクリちゃん、すっごい功績って何?」
「えぇ?歴史変えたとか?あ、ナイフブリッチ公爵は水道水普及させたからこの間公爵になったよ」
「…???」
「とにかく、なんかすっごい功績ね」
「はぇ」
フィラは何か誤魔化されている気がしたが、諦めてサクリの方から目を逸らす。生憎の雨だ。ふぁと欠伸をすると教師が入ってきた。
「授業するぞー。座れー」
その声にサクリは舌打ちをしたが自身の席に戻った。その瞬間にチャーリングが席に座る。ずっと近くで待機していたのだろう。
「今から返すぞー。はい、アヌハラジュン!」
教師の声とともに生徒は立ち、受け取る。フィラの番がやってくるとビクビクしながらフィラは受け取る。書かれているのは九十六の数字。フィラはホッとしている。
「へぇ、君頭も悪いんだ」
「…むっ。突然なんですかっ」
「平民だからか。でも、向こうの平民は頭いいようだね」
チャーリングが指さしたのは同じクラスにいるもう一人の平民。中等部で学力推薦を貰った子だ。初めて同じクラスでまともに顔を見たがやはり見覚えはなかった。
「彼は学年順位五位だ。君と比べ物にならないね」
「……失礼だ!」
フィラはムキッとして威嚇の視線を浴びせるが、チャーリングは堂々と紙をフィラの前にチラつかせる。そこに書いているのは三位の文字。
「僕はこの学年で三位の男。崇めなよ平民」
「…凄いのは確かだね」
確かに、三位は凄いと思う。だが、フィラはチャーリングよりも頭の良い男二人を知っているのだ。
「学年順位張り出したからなー。勝手に見に行けー」
それを言うと教師は授業の教本を取りに行ったのか教室から居なくなる。その間に皆、順位を見に行く。チャーリングは堂々と自信満々に座っている。
「行かないの?」
「どうせ一位と二位との差は極わずか。見に行かなくても良いのさ」
「ふーん」
フィラはちょこちょことサクリの元に向かい一緒に順位表を見に行く。
「へぇ、フィラ九十六…ギリギリじゃん」
「うぅ、サクリちゃん高くない…?おかしい…」
「崇めなよ!!フィ・ラ・ちゃ・ん?」
サクリの順位は七十九。中等部の時と何も変わらない順位だ。フィラは下がったのにサクリは全く微動だにしていない。さすがだ。
「さてさてー?あの二人は……お、不動の一位と二位だ」
やはり、マリノとレオは何も変わっていない。三位との差は五十点もあるレオ。そして、一位と二位の差は十点程度だ。二人がとんでもなく頭が良いのが見てわかる。
「すごいね…あの二人」
「ほーんと。やばいよアイツら」




