秋・お貴族様のお屋敷…でっかい!
「こ、ここでほんとに合ってるの…?間違ってないよね!?」
フィラは一人でとある屋敷の前をウロウロしていた。屋敷は広く、噴水までついている。芝生も整えられ、整備士のような人もいる。本当にその職業なのかは不明だ。
フィラは門を潜ることさえ恐れ多く、たが、人に声をかける勇気も持ち合わせていなかったのでウロウロしているのだ。
(あぅ…さすがお貴族様だ…サクリちゃんこんなところに住んでいるんだ…)
フィラが来ているのはサクリの家リュンカ伯爵本邸だ。サクリの家は布地に強い家らしい。噂に聞く程度だが貴族のドレス専門の布を作っているらしい。
「…き、聞かないと」
フィラは通行人を待つ。だが、数分経っても誰も来ない。むしろ、歩く人はいない。いるのは馬車で横を通り過ぎる馬だけだ。
「お、終わった…?」
フィラはどうするか真剣に悩んでいると後ろから声が聞こえてきた。
「サクリお嬢様のご友人でしょうか」
「ひゃ、あ、はい!サクリ…様、の友達…ですっ!」
「左様ですか。ではこちらに」
謎のおじいさんの後ろをフィラはついて行く。初めて貴族の屋敷に足を踏み入れるのだ。フィラは珍しく綺麗めの服を引っ張り出し着てきたのだ。なるべく質素とは思われない服にした。
「サクリお嬢様。ご友人ですよ」
「はーい」
屋敷に入るとすぐにおじいさんがサクリに声をかける。サクリの声は二階から聞こえた。フィラはキョロキョロ周りを見てしまう。至る所に黒と白を基調としたメイド服を着ている人がいる。とても可愛い人達だらけだ。
「お、フィラやっほー。やっと来た?」
「う、うん…」
サクリはいつもの制服ではなく、短いスカートとカーディガンを着ていた。サクリはビビットカラーが似合うとよくわかる。
「さぁさぁ、どうぞ?こちらが貴族の舘でーす」
「す、すごいねここ…。広いし…お庭もあるし…すごい」
「そう?多分レオの方がもっといい暮らししてるよ。あいつ、一応侯爵の長男だから」
「侯爵…よく分かんないけどすごいだね!」
「そーそー。多分マリノもこの位の生活してんじゃね?商家の坊ちゃんだし」
「はぇ…。商家はいいんだ」
フィラとサクリはそんな話をしながらサクリの部屋に向かう。途中でサクリの兄弟達の部屋の前を通った。扉が開けっ放しになってる人もいたが、どの部屋も共通して広く、リンとなっていた。
「広いね…やっぱり。外から見た以上に…」
「下手したらこの位のか、これ以上の人の元に嫁ぐかもよ?」
「うっ…一番下の人でいいかな…」
「一番下って言ったっていい暮らししてる人はしてるじゃん。ほら、商家の坊ちゃんに、アルコール関係の令嬢、オルガンのとこの坊ちゃんとか」
「うっ…」
フィラはうぐぐとなっている。よっぽどあまり想像ができていないらしい。
「はい、ここがアタシの部屋ー」
サクリは堂々と部屋を開ける。
そこにはとても広いベッドと机、椅子、またまた机…のような空間があった。すごい空間だ。天井にはとても高価なシャンデリアというものがついている。ロウソクを毎回変えるのが大変そうだ。
「な、なんか…広いし…意外と綺麗」
「意外とって何意外とって」
フィラのイメージのサクリは基本的にガサツだ。そのため部屋もぐちゃぐちゃだろうと思っていたのだ。だが、実際は綺麗になっている。ベッドの上は色々置かれているがそれ以外は綺麗なままだ。
「さぁさぁ、どうぞ。腰掛けてくださいな」
「は、はい…」
フィラは恐る恐る立派な椅子に座る。いい椅子なのかふかふかだ。
「これ、すごい沈む…寝れそう」
「ソファっていう椅子。異国から入ってきたって」
「異国かぁ…」
なら買えないなぁとフィラはソファを撫でる。そういう気分になったのだ。異質な空間にいつものサクリ。だが、周りは貴族ということを示している。
何故か心細くなるのだ。
「で?どうよウチは」
「…立派すぎて萎縮する」
「こーゆーところに慣れてもらわんと。まぁ、公爵レベルに嫁ぐのも有り得そうな魔力になってるからなぁ…下手したらレオの家よりも広いところで過ごすかも」
「ひぇ…」
フィラの今年度の魔力量は三百六十。順調に伸びていっている。魔術師になるのなら恵まれた事だが、フィラは魔術師になる予定がない。そのためほぼ無意味、欲しい人に渡したいくらいなのだ。
「一回レオの家行ってみれば?アイツなら喜んで見せてくれるでしょ」
「うぅ…レオくんは…その、女の子とよく遊んでるからな。女の子に色々言われるのはちょっと…」
「なーんかまた女遊び激しくなったよなアイツも。悩みか?」
「分かんないけど…」
ここ最近、レオは女子生徒とよく帰っている。サクリの言う恋愛ごっこだ。レオは侯爵家の跡取り。結婚はほぼ親が決めると決まっているらしい。それに呆れてしまったのか、それとも今のうちに女で遊ぼうと思ったのか、はたまた、ただの暇つぶしなのかよくデートやら何やらしている。
「それで?フィラはどうすんのマジで。決めるなら今だけど」
「?高等部でも五十人くらい入ってくるでしょ?」
「入ってくるけどさぁ…それって面倒な誘いがさらに増えるだけだぞ?」
「……それはやだ」
「じゃあ、いい感じの男見つけた?てか、フィラって好きなやつとかいるの?」
フィラは好きな人、と言われてパッと思いついたのは数名。
まずは家族だ。フィラは家族のために生きていると言っても過言では無い。
次にシルクとマスターだ。バイトを教えてくれる優しい先輩。たまに怒ると怖いがそれは大体フィラが何かをやらかした時だ。
最後に友人達だ。サクリにマリノ、レオ。大事な三人の友人だ。学園生活ではだいぶ頼らせてもらった。
「…家族、先輩、友達が好き」
「いやいやいや、恋愛的に考えて。家族を恋愛的な目で見てるの?」
「見てないし…見れないよ…」
うぐっと言うフィラの声が響いた。




