夏・時間にルーズ。それっていいの?
フィラは二人から聞いた事を纏めてみる。
「とりあえず!明るくなればいいんだね!」
「え、俺は俺の思ったいい所は?」
「レオくんは…その、みんなに言ってそうだから参考にならないなぁと今気づいた…」
「なんで!?」
レオはうわっという顔をしていた。マリノも少し複雑そうな顔をしている。フィラだけが一人で納得していた。
「フィラ。もう一人いる一人」
サクリは自分の方に指を指している。フィラはハッとしてサクリの方に行く。
「ね、サクリちゃん。わたしのどういうところは好ましいと思う?」
「顔」
「…顔?」
「童顔で幼い。可愛いし、クリっとしている」
「…褒められてる?」
「褒めてる褒めてる…ねぇ?男ども」
突然振られた事にレオとマリノは身体を固くした。フィラはあわあわして止めようとする。性格や全体と言われるならまだしも容姿について言われるのはあまり慣れていない。それに、いつもいる人から容姿を直接言及されるのには勇気がいる。それに、この二人は目も肥えているだろう。この学園にはもちろん、その親達だって美形な人が多いのだから。
「そうだなぁ…フィラちゃんは…うん。綺麗と言うより可愛いの方が似合うとは思う…な、そうだろ…な?」
「そうですね……。魅力的かと」
「ほらぁぁ!フィラの顔は男どもにも結構好評!!」
「好評だからなにかできるの…」
フィラの冷静なツッコミはサクリには届かない。そして、マリノは少し気まずいのかふい、とフィラと目を合わせようとしない。反対にレオは吹っ切れたのか、フィラちゃんは可愛いから大丈夫!とフィラをさらに口説いている。
「うぅ、顔なんて言われても困るよ…」
「大丈夫。最悪顔でどうにかできるから…ね」
「何させる気…?」
フィラは咄嗟にギュッと自身の体を抱きめした。サクリのことだ。どうせ良くないことを想像しているのだろう。それに気がついたサクリはごめんごめんとバンバン肩を叩いてくる。いたい、とフィラが言うと力は弱まったがバンバンも叩かれるのは止まらない。
そのままレオの方をむくとあちらも何故かバチンとやられている。レオがきっと何かをしでかしたのだろう。何かがなければマリノは基本的に人を叩いたりはしない。
何をしたんだろ…とフィラが叩かれながら眺めているとふと二人と視線があった。まずい、と思ったのかフィラはふい、と分かりやすく視線を逸らす。二人から見れば突然視線を外した変な子だ。
「フィラちゃーん?なにかやましい事でもあるのかなぁ?」
「な、無いよ!清廉潔白!!」
「自分で言っちゃうのそれ」
レオは呆れている。サクリは大笑いしている。ツボに入ったようだずっと笑っている。
「うぐっ…なんか悔しい」
フィラは拳を作って悔しそうにしている。何故かは不明だ。
「てか、アタシ帰んないと。兄貴がさぁ。お見合い持ってきたの忘れてた」
「え!?時間大丈夫?」
「うーん…アウトだね」
サクリはグッと親指を立てる。どこも安心できる材料が無いのにドット構えているサクリはやはり神経が図太い。
時間が危ないらしいのにサクリは呑気に鞄を持っている。
「い、急がないと!首飛んじゃうよ!!」
「飛ばない飛ばない。どうせ相手は子爵の息子だし。アタシの方が上だから大丈夫」
「?子爵の上が……伯爵?であってる?」
「そーそー。アタシが真ん中ね。で、マリノが一番下。レオがアタシの一個上」
サクリは暇そうに貴族階級を教えている。だが、ここにいつまでも引き止める訳には行かないフィラはサクリの肩を押して扉の外に出す。
「頑張れサクリちゃん!応援してる!」
「しなくていいよ。今回も潰してやるから」
サクリのドヤっとした顔に困ったフィラだが、サクリを見送ることに成功した。だが、とある疑問を抱きフィラは二人の方を見る。
「お見合いって潰していいの?」
「ダメだろ」
「あまり良くはありませんよ」
二人ともやはり潰すのは良くないと言っている。だが、二人ともどうやらお見合いは来ているらしいが全て断っているとも聞く。フィラは二人がお見合いを潰しているのではと少し怪しんでいるのだ。
「…まぁいっか」
「おい、フィラちゃん何考えた」
レオからのツッコミが飛んできたがベシッとフィラは知らないふりをする。
フィラはノコノコと自分が座っていた椅子に座る。そして頬杖をつく。何かをする訳でもないので、何となく目の前に座っているマリノの顔をまじまじ見てみることにした。この間は誰か知らない貴族の令嬢に頼まれレオの容姿を一人で勝手に観察していたのだ。レオにはついに俺に惚れた!?惚れちゃった!?と騒いでいたが知らないふりをして、その言葉と共に令嬢に伝えた。彼女は、レオにお見合いを申し込んだのだろうか。
「……先程からなんでしょうか。何も出てきませんよ」
「観察中」
「……暇なら勉強をしてみては」
「ヤダ。やりたくない」
「……あまり見られるのも困るのですが」
「女の子に情報を売れるかもしれないじゃん」
「売らないでください」
はぁとため息をついたマリノは立ち上がり鞄を持った。それについて行くようにレオも鞄を持ち始めた。
「帰っちゃうの?」
「やる事が無くなりましたので」
「そーそー。てか、俺妹に写生会行こうって言われてたの忘れてたんだけど」
レオもサクリももっと自分の予定を把握しておくべきだと思うとフィラは感じる。二人はさっさと教室を出ていってしまった。フィラは一人取り残されムスッとする。そして、アルバイトに行くために鞄に手をつけ始める。
「……かっこよかったな」
そんなつぶやきは一人、教室に消えた。




