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真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
五年目・中等部五年生
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春・初事実

「たっだいまー」

 フィラはいつも通り夜遅くにバイトを上がり、家に帰ってきた。明日は休日だ。今夜、フィラは自由に過ごせる!とルンルンなのだ。

「…おかえりねーちゃん」

「あれ?テイル。まだ起きてるの?」

「起きてる決まってるだろ!?今何時だと思ってんだ!!八時半だ!!!」

「おかしいな…数年前のテイルならこの時間に寝てたはず…」

「俺はもう、十二歳!!中等部二年生!!」

 テイルはキッとフィラの方を見ている。タオルを首にかけているのを見るにお風呂上がりなのだろう。

 テイルは二年前、近くの中等学校に入学した。フィラの通う学園は魔術に特化しているので魔術が使えないテイルは入学できなかったのだ。

「うーん。おかしい…記憶の中だとまだ幼いのに…」

「俺は何歳なんだよ!!」

 テイルのキレッキレなツッコミが家中に響く。はーはーと息を切らしたテイルはふぅと汗を拭い改めてフィラの方を見る。

「…ねーちゃん。父さん達が話そうだって」

「え!?説教!?」

「知らないよ…とにかくさっさと行った方いいかも」

「うわぁ…怖い…」

 フィラはビクビクしながら父と母のいるであろう部屋に向かう。

 両親の部屋はフィラとテイルの部屋の部屋の隣だ。よく、お酒を飲んで騒いでいる声が隣にまで届く。

「お、お母さん…?お父さん…?フィラだよ…」

 扉を恐る恐るノックする。すると、どうぞーという気が抜けた母の声がした。フィラは制服をピンと伸ばし扉をバンッと思いっきり開けた。勢いよく開けすぎたせいで扉がすごい音を発したが知らないフリをする。

 父と母はベッドに腰掛けてた。

「えっと…説教ですか、ね?」

「とりあえず、そこに座りなさい」

「ひぁい」

 確実にいつもとは違う雰囲気の母に怖気付き、ビクビクしながら椅子に座った。父は一言も発さない。

(こわ…なにこれ…怖すぎるでしょ)

 フィラは手を固く結ぶ。

「えっと…何かな…その。縁切るとかじゃないよね…?」

「本の読みすぎよ」

 最近、フィラはミステリー小説をサクリから借りて読んでいることが多かった。そこに、親と縁を切って探偵を目指すと言う内容があったのだ。

「あぅっ…じゃあ、バイト禁止とか…?」

「好きに続けていいわよ」

「…じゃあ…その、えっと、成績悪い…とか?」

「それはもう頑張れとし言えないわ」

「ひぇん」

 フィラはだんだん分からなくなってくる。自分のする何かを怒られると思っていたが、どうやらそうではないらしい。それが怖いのだ。予想が出来ないというのはフィラにとって大きなプレッシャーと恐ろしさが襲ってくる。

「フィラ」

「ひゃい!!」

「…最近どうだ」

 父がやっと口を開いたと思えば普通の世間話だ。久しぶりに再開した友人に初めに話しかけるような言葉を投げかけてきた。

「最近…?バイト楽しいよ。えっと、勉強もしてるし、お友達ともたまに遊びに行くよ」

「そうか」

「……うん。そんな感じ」

 フィラはこくこくと頷く。すると父は安心したのか、新たな悩みが出来たのかうーんと唸り始めた。手も組んだので悩みだろう。

 フィラはただそれを眺めているだけだったが、決心したように父が口を開いた。

「…そのだな、いい貴族とやらは見つかったのか?」

「え、あー…その、えっと…」

「見つかってないんだな」

 フィラはその言葉にギクリとし身を固くする。

 フィラの思う良い貴族はサクリにとってはぶっちゃけどうでもいい所らしい。優しい人がフィラの思う良い貴族だ。だが、サクリは貴族に良い人なんていないと言う。

 フィラが結婚すべき相手はフィラという人に想いを寄せている人だ。フィラがどう思っていても関係なく、恋心を向けられていれば優しいし、守ってくれる、嫁姑問題もどうにかなるとの事らしい。

 それを言われて早数年。フィラは全くそんな相手を見つけていなかった。そもそも、マリアンネも言っていたが本気の恋をする貴族はいない。そんな相手を探すのは骨が折れる事だ。

「えっと、その…うん。どうにかするよ」

「…あまり言いたくはなかったが…最近、貴族からお見合い状が来ている」

「へ?」

「どれも、断っているのだが…折れないやつもいてな」

「何それ…聞いてないんだけど…」

「中には…俺と同い年の人も…」

 うわぁ、とフィラのドン引いた声が寝室に響く。多分、父と同い年くらいの人はフィラを妻ではなく愛人として迎えるつもりなのだろう。

 この王国は貴族の男性に限り愛人制度を許可している。学園にいる女の子たちは皆、愛人を取らない人の元に嫁げるのが一番と愚痴っていたりする。

「まぁ…色々あって断れてはいるんだが…変な奴もいるとは覚えていた方がいいぞ」

「…うん、覚えておく」

 はぁとフィラは大きなため息をこぼす。サクリの言う良い貴族を探すのに時間がかかっている理由はもう一つある。それは、フィラ自身が全く恋愛というものに興味が無いからだ。フィラ自身は恋をしては意味が無いのでこれに関しては良いのだが、興味が無ければ探すことに意識が向きにくい。

 実際フィラが今一番意識を向けているのは勉強だ。来年は高等部に進学する。内部進学になるが、模試は受けることになるらしい。これの学園が決めた目標ラインを越えられなければ進学は難しくなるらしい。

「…その、だな…俺はフィラを嫁に出す気はないんだが…絶対に出したくないが…考えてみてくれ」

「…はぁい」

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