冬・モニュメント制作
「ふぅ…さっむ」
フィラはアルバイトしている店の前に積もりに積もった雪を集める。一箇所に集めた雪をモニュメントにして小さい子を誘うのが今年シルクが立てた作戦らしい。去年はランタンをちょっと派手に飾ったがあまり人が来なかったのでリベンジのつもりなのだろう。
「マスターは、なんかしてるなぁ…シルクさんはお休みだし」
モニュメントの発案者であるシルクがいないのは珍しことではない。大事な日に限ってシルクは何か予定を入れて休んでいる。
今日はマスターが夜までやってくれる。フィラは朝から夕方まで担当だ。昨年、知らない人に話しかけられたという話をしたら、夜遅くまでは働かせないと決めてもらったのだ。マスターには頭が上がらない。
「すみません。王宮役所ってどこですかっ」
フィラが少し視線を下げると防寒着を来た男の子立っていた。右手には籠を持っている。両親のどちらかに昼食を届けるのだろう。平民向けの窓口には平民が受付をしていると最近聞いた。
「えっと、ここから三つ目の角を右に曲がると目の前に大きな門が見えるよ。その中に王宮役所があるよ」
「!ありがとうおねーさん!!」
少年は大きく手を振って走りながらフィラの言った道順に進む。フィラはホカホカした気持ちになり雪を集めながらふんふん、鼻歌を歌う。
「フィラちゃん。看板出してくれる?」
「あ、はーい」
マスターが外に顔を出して、看板をフィラに渡す。まだ新年明けだからお店を開ける時間は早いのだ。
フィラが看板を雪で固定して、少し高い位置に置く。雪ならではの強調方法だ。そして、その隣に頑張ってモニュメントを作らなければならない。
「えっと、シルクさんの案は……なにこれ」
シルクに昨日渡された蝋板にはよく分からない絵が書かれていた。犬なのか、猫なのか、はたまたまた別の物体なのかよく分からない。
何かが生えているので多分動物だろう。これでランタンとか言われたらシルクの絵のセンスを疑う。
「…ま、マスターさん。犬と猫どっちが好きですか」
「え?あー…猫かしら」
「分かりました!」
フィラは一人で勢いの良い返事をしてまた外に出る。看板の隣に五歳くらいの少年少女くらいの大きさの猫を作らなければならないのだ。
「えっと…胴体とお顔か…」
フィラは集めた雪でも比較的きれいなものを外側にして猫の胴体を作っていく。細かい作業は得意では無いので大雑把につくって、売れなかった花で目と尻尾は作る気なのだ。これなら無駄じゃない!とフィラが無理やり押し通したのだ。
「比率は…一対一かな…その方が可愛いもんね」
フィラは一人でぶつぶつ言いながら丸い二頭身の猫の耳を作っていく。明日、来たシルクには何を言われるか知らないが、可愛ければきっと文句は十分くらいで終わるはずだ。
いつも絶対使わない!と言っていた比率を自然と出していたことにフィラは全く気付かない。
「おねーちゃん!!にゃんちゃんつくっているの?」
フィラが耳に苦戦していると、一人の女の子が近寄ってきた。奥からは少女の母親らしき人が追いかけてくる。籠から荷物が落ちそうだ。
「す、すみません!ほ、ほら謝って!!」
「いえ、大丈夫ですっ!」
フィラはにこっと笑顔を女の子とその母親に向ける。母親はとても申し訳なさそうな顔をしていたが、女の子は雪のモニュメントに興味津々だ。
「にゃんちゃん!!」
「えへへ、そうだよ。猫さん作ってるの」
「かわいい!!」
「うれしいな」
女の子はめいいっぱい身長を伸ばし、まだ完成していない猫のモニュメントを撫でる。
「完成したら見に来てね」
「うん!!」
女の子は眩しい笑顔をフィラに向けると、母親と手をつなぎ露店の方に向かった。
「頑張らないと!!」
フィラは、女の子の期待に応えられるようにグッと拳を作り気合を入れる。
しばらくするとフィラの納得する形になったようだ。その間もお客さんは出入りを続けている。お昼を過ぎたくらいでマスターが窓ガラ越しにグッと親指を立ててくれた。今日の目標の利益は出せたらしい。
それを確認してからフィラは、尻尾に花を刺していく。冬の花でもなるべく明るい物を刺して、この通りを使う人にも明るい気持ちになってもらうようにする。そして、目には真っ赤な名前が分からない木の実をはめておく。これは、近くを通った初等部の男の子がやりたがっていたので代わりにはめてもらった。男の子はとても嬉しそうにしていた。
「マスターさん!!終わりました!」
「お、見に行くー」
マスターは一度裏に行きコートを着てからフィラの作ったモニュメントの方に来た。
「あら、想像以上に可愛い…それに華やか」
「頑張りました!」
フィラはえっへんという音が付きそうな態度をとる。珍しく腰をそって、偉そうだ。
「この子に一週間は頑張ってもらいましょ」
「持って一週間なんですね…」
「…いつか無くなるものが美しい世界なんて残酷よね」
「う、言われたら確かに…」
フィラは少し後ろの方を見る。大人も子供も少し興味がありそうだ。
「マスターさん!わたし、これから品出しします!!」
「そう?じゃあお願いするわ」
フィラのアルバイトはまだまだ続く。




