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真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
四年目・中等部四年生
33/58

秋・お説教

 フィラはあの後何故か教師にとても怒られた。もちろんマリノとヴォルガーノと共にだ。一番ペコペコしていたのはフィラだったりする。

 そして、現在のフィラははぁと大きなため息をついてパタリと机に頬をついている。目の前にはマリノもいる。

「…お怪我は」

「今絶賛不貞腐れてます。お話は受け付けてません」

「それは…困りましたね」

「あぁ!もう!!」

 フィラはバンッと頭を机に叩きつける。マリノは戸惑っているようだ。フィラはそのまま髪の毛をくしゃくしゃにする。紺色の髪が指に絡まってしまう。

「なんなのあの先輩!先生に怒られても堂々としているし、反抗するし!うるさいし!!もっと謝罪の意が欲しいのに!!」

「…そうですか」

「マリノくんも!!スンってしてるだけでなんにもしてない!!わたしだけがごめんなさいしてバカみたい!!」

 うわぁぁとフィラは上手く飲み込めない言葉を必死にくだこうとしている。いつもわかりやすいが今日は特にわかりやすい。

「…何か言うことは?」

「え?」

「言うことはありませんかっ」

「…ご迷惑をおかけしてすみません」

「…固いけど…許そう」

 フィラは考えた末にグッとマリノの方に向けた。それにホッとしたようだ。肩が少し降りていた。

「そもそも、何したの…先輩に目をつけられるとか…お酒飲んでた?」

「未成年は飲めませんよ」

「そうだけどさぁ…」

 この王国の飲酒可能年齢は十九歳、成人してからだ。一応、十九歳からは煙草も吸えることになっている。フィラには関係の無い世界だ。

「うーん。何したの?」

「少し口論になっただけですよ」

 マリノはそっぽ向いて答えた。フィラはムッという顔をして、バンッと机を叩いた。いった…と言いながらもマリノの注意を向ける。

「どんな口論?悪口言ってたの?最低」

「言ってませんよ」

「じゃあ何?」

「……本当に少し絡まれただけです」

「それで?」

 本当に少しだけならあんなにヴォルガーノが騒ぐわけが無いのだ。フィラが三階にいたのに聞こえた怒号だ。少しな訳ない。

「そ・れ・で?」

「……貴女、サクリさんに本当に似てきましたね」

「むっ、話しそらさないで」

 フィラはサクリに似てきたということに少し喜んでいたが、知らんふりをしてマリノに話を逸らされないようにする。圧倒的にマリノの方がこういうものは強いのだ。フィラがどうにかして元の軌道にしてあかないと本当にはぐらかされる。

「悪い事してないなら話して」

「…本当に少し絡まれただけです。まぁ、少し腹が立ったので言い返したのです。それが大分効いたようで…胸ぐらを掴まれましたね」

 フィラは止めに入った時、確かに珍しく制服が乱れていた。それに、マリノの言葉は確かに的を射る事が多い。それが気に食わない人も出てくるだろう。それがたまたまヴォルガーノだった訳だ。

(イラってしたんだ…イメージできない)

 フィラはむむっと考えてみるがやはりイメージができなかった。微笑んでいる訳では無いが、基本的に優しい。それに面倒見も良い。そんな人がイラッとくる事とはなんだろう。

「むぅ…何言われたのか知らないけど。知らないフリしておけばいいじゃん…」

「普段ならどうにかできるのですが…」

「ほうほう…うーん。よくわかんないけど暴力してないんでしょ?」

「殴っては無いですね」

「魔術は使ってたね」

「……えぇ」

 フィラは肘をついて髪の毛をクルクルする。フィラの癖だ。髪の毛が長くて元々毛先がクルッとなっているからだろう。

「うーん。まぁいっか」

「…え?」

「なんか、終わったことを問い詰めてもダメな気がしてきた」

 フィラはまた、頭を抱えている。今日は困る日な気がしてきた。

 フィラは、諦めて鞄の整理整頓を始めた。それを見ているとマリノがえ、という顔をしている。珍しく表情を崩している。

「本当にそれで終わりですか?」

「うん。わたし、帰るね。これからアルバイトなの」

「この話を広めたくなければ…みたいなのは無いのですか?」

「?ないよ。むしろ、広がるでしょ勝手に。わたしの時もすぐに広まったんだもん」

 フィラはこてんと首を傾げる。

 そんな人の弱みを握る事はしたくない。弱いところ含めて人なのだ。

「…そう、ですか」

 マリノは口元を抑えてふい、と横を向いた。フィラにはよく分からないため鞄を抱えて帰ることにする。扉に手をかけて振り返る。

「わたしは帰るね。明日もまた来る」

「…はい。お気をつけて」

 片手を振ってフィラは扉を閉め、歩き始める。

 もうすぐで学年が上がる。中等部で過ごすのも残り一年。

「バイトしてー、成績上げて、いい職つくぞー!!」

 フィラは一人で止まり、えいえいおーとする。周りに生徒はいなかったので良いが、教師が不審な目で見てきた。

(それと…お父さん達心配させないようにしないと)

 フィラはグッと手を握る。

 両親に自分は貴族と結婚する運命にあるらしい、と告げたのが去年の夏。大泣きされたし、信じられないと言われた。

 両親は平民の結婚方法だ。恋に落ち、愛を知った恋愛婚だ。フィラにも同じように恋をして好きな人と結婚して欲しいらしい。

(とりあえず!いいお貴族様探さないと!)

 フィラは足取りが軽くなりルンルンとアルバイト先へ向かった。

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