夏・魔術
夏本番特有の音が聞こえ始めた時、フィラは椅子に座って本を読んでいた。内容は、魔力や魔術について。
「難しいな…」
背中を預けていた椅子から少し離れ前のめりになる。本は、学園から借りてきたものだ。貴族たちに出て行けという視線を送られたのでさっさと選んで逃げてながら借りたものだ。
「魔力は毎年増え続け二十歳にとまる……使うとさらに増えていく……」
フィラは本に書いてある一文を読んでいく。魔力の増加方法、魔術の使い方、術式陣とは…様々な事が書かれている。
「…毎年増えているけど…これ、使ったらさらに増えるんだ…」
フィラは己の手を見てみる。変哲もない手だ。だが、どうやらこの本によると魔力がある人間は魔術を使う事ができてしまうらしい。一番少ない魔力で使える魔術は物を浮かせる風魔術だ。魔力量十で使う事ができる。そのため、平民でも使おうと思えば使えるものだ。父はこの魔術を使いリピルの収穫をしてたりする。
本当に簡単なものはフィラや周囲の人でも使えたりするのだが、率先して使う人は今のところあまり見ない。
「風魔術って攻撃術なんだ…はぇ……変なの」
この王国には八つの魔術があるとされている。攻撃術、空間術、治癒術、魂術、精神感応術、結界術、幻創術、強化術だ。それぞれの利点が違う魔術だ。フィラからしてみれば、魂術と精神感応術が同じではないかと疑問で仕方がない。結界術と強化術は同じでないかとも思ってしまう。だが、これを父に聞くと良く分からないと言われた。
「魔術陣…違うんだ。術式陣…難し」
魔術を行使するには、術式陣と呼ばれるものが必要となる。これは、自身が決めた詠唱を言えば出てくるというものらしい。魔術師にとって、術式陣は芸術に近いと呼ばれている。絵や銅像を見て人が美しい、凄いと感じるように魔術師は術式陣を見てその人の実力と繊細さを見ている。実力のある人ほど術式陣は大きく、繊細に扱える人ほど模様が美しいらしい。
術式陣は魔力を消費しない唯一の魔術だ。風を扱うにも、人の心を読むにも、幻を見せるにも必ず必要になる。ただ、術式陣を見られると魔術を行使していることが分かるので秘密裏に魔術を使いたい人は、地面にとても小さいサイズにして出現させ行使するらしい。
ちなみに、術式陣を魔術陣と言うと専門家はキレられるらしい。
「ねーちゃん。遊びに行ってくるー」
「はーい。気を付けてー」
フィラは、奥の方から聞こえたテイルの声に返事をすれば元気よく外に飛び出した音がする。テイルは相変わらず元気だ。
「…続き続き…えっと…まだいっぱいだ」
フィラはパラパラと少しページを眺めてみる。図や表があるが全く意味が分からない。なんのための図なのか、何のための表なのか教えてくれる図や表が欲しいと思ってしまう。
「難しい…えっと、魔術師検定?なにこれ…適性に属性?なにそれ…」
フィラは頭を抱えながら本をめくる。中盤までは魔術や魔力について書かれていたが中盤からは魔術の詠唱についてしか書かれていない。世の中は魔術師や魔力について知っていて当然だよね?のような風潮が強い。
「とりあえず…外行こ」
フィラは本を持ち外に出る。フィラは自宅の庭に空いてある椅子に本を置くに、日焼けしないように布をかぶせている。本当に本の日焼けを防いでいるのかは怪しいラインだ。
「えっと、術式陣の詠唱を考える…何がいいんだろ」
フィラは手を目の前に突き出したが詠唱の言葉が全く思いつかず結局本の元に向かう。
「詠唱とか載ってたりしないかな…」
パラパラページをめくるも載っている気配がない。
「あ、おすすめは…覚えやすくて好きな物?」
うーんと考えてみる。この間、初等部の子が術式陣を召喚して遊んでいたのだが、その時の詠唱はかなり雑なものだった。中等部になるとあれは少し後悔すると思ってしまうほどだ。
「…花とか?うーん、ふらわー、みたいな?」
フィラが一人でうなっていると、ふと思いついたことがあった。フィラはそのまま本を抱えて手を目の前にかざした。
「…月華」
すると、目の前に小さな術式陣が出てきたのだ。フィラがパッと顔を明るくするも直ぐに消えてしまう。術式陣は使用者の感情によって操作されるのだ。
「できた!!出来ちゃった!!」
わーいわーいとフィラがクルクルしている。そして、フィラは本を開く。次は本当に簡単な魔術を使う様だ。
「えっと、水、風、土、炎…この四つが属性?なにがいいんだろ…そもそもわたしの属性って何?」
フィラは疑問を抱きながらも適当に開いたページが炎だったので家の目の前の謎すぎる草花が咲き乱れた場所に行く。間違っても家に炎がついてしまったら怒られるでは済まない。
「えっと、月華…灯火?」
そうすればフィラの手に小さな炎が灯る。
「やった!!出来た……あれ」
フィラは膝が床に着いたことは認識できたがそれからの記憶は飛んだ。




