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真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
四年目・中等部四年生
28/59

春・高熱

「あら、熱ね」

「…ん」

 フィラは布団の中にいた。

 昨晩から身体が熱くて辛くなったのだ。知らないフリをして寝たらこの有様だ。

「ねーちゃん治る?」

「寝てれば治るわよ。じゃあ、フィラ。私仕事行くから」

「…ん」

「俺!今日すぐに帰ってくるから!!」

「ふぇい」

 フィラは理解しているか怪しい返事をして、二人を見送る。父は既に農地に行っているようだ。リピルを植えているのだろう。

「…あっつい」

 フィラは冷えたものを求めてぬいぐるみを抱きしめる。全く冷えていないので意味は無い。

「…授業遅れちゃう…治さないと」

 フィラは布団を深く被り寝ようとする。だが、まだ起きたばかり。眠気は全くやってこない。代わりに熱と息苦しさだけが襲ってくる。

(うぅ、あっつい)

 フィラは起き上がり、水を飲みに向かう。

 最近は水道水が普及してきたのだ。貴族には既に普及されていたようだが、平民にもやっと便利なものが入ってきた。

 それまでは井戸の水を汲んで過ごしていたのだ。

「…ないよりマシ」

 フィラは水を飲むと、部屋に戻ろうとする。

 だが、ズクンと熱が広がるような感覚に陥る。熱に体力が奪われるようにフィラは足を床についた。

 春になったばかりの王国はまだ寒い。そのため、床も冷たく今のフィラには心地よい。

「…冷たい。ここ」

 ぐるぐると渦巻いている熱をどうにかして床に流しこもうと手を床についた。手のひらから感じる冷たさが少し染みる。

 しばらくすると、大分楽になった。

「…よし。今なら」

 フィラは机に手をついて思い身体を持ち上げる。

 部屋に戻るとベッドにダイブする。身体が熱く、一度布団に入ってしまうと中々動くことは出来ない。ふぅと一息ついて布団を持ち上げる。部屋にはフィラしかいないので、とても静かだ。平日の誰も居ない時間はゆっくりと時間が流れていく。


♧♧♧


 フィラが目を覚ますと、時間は昼時になっていた。空腹なのは間違いないが、食欲は無い状態が続いている。歩ける気力も無いのでフィラは布団にこもったままだ。もう一度眠ろうかと思っているとトントンという、外からのノック音が聞こえた。

「…お客さん?」

 フィラは、重い体を引きずりながら外につながる扉を開ける。

「ふぁい。どちら、様…?」

「貴方ね。フィラちゃんは」

「……だれ」

 扉の前にいたのはフィラよりもほんの少しだけ身長が高い女性だ。真っ青な髪の毛に、女性らしいスタイル。同性のフィラでも一瞬ドギマギしてしまう。そん美しさと全ての人を魅了してしまう華やかさ、それらを兼ね備えた女性だ。

「ふふ、そう警戒しないで頂戴。わたしはそうね…貴方を看病しに来た人よ」

「…来客の、予定は、聞いて、ま、せ……ん」

「熱が上がってきてるわ。言葉もとぎれとぎれ…さぁ、休みましょう。わたしは貴方を煮たり焼いたりしないわ」

 フィラの頭は何一つ回らないまま、謎の女性に言われるがまま部屋に通してしまう。そして、自室のベッドに腰かけると一気に倦怠感と熱が上がってきたような感覚になる。

「じゃぁ、少し触るわね」

 女性はトランクケースを開けてなにか凄そうな物を取り出した。フィラがボケっと見ていると、女性は謎の物をフィラに差し出す。

「ここのくぼみに指を置いてちょうだい」

「…はい」

 いわれたからしただけとでもいうようにフィラは素直にくぼみに指を置いた。すると、謎の物に数字が浮き出てきた。三百三十二と言う数字だ。

「あら。随分と高いわね。ふふ、例の子かしら」

「…例の」

 ただ復唱しているだけだが、この女性はフィラの何かを知っている様だ。例、と言われて思いつくのは魔力推薦の事だ。大体これを指される時は例の生徒、例の平民と言われる。

 そんなことを考えていると、ヒヤッとした綿が当てられた。それを見ていると先の尖っている注射が刺される。

「いた…」

「我慢して頂戴ねぇ」

 女性は刺し終わると注射を布に包み、鞄にしまう。フィラは、それを眺めているだけだ。

「明日にはきっと効果が出るわ。今日明日は寝て直すことが大事よ」

「ふぇい」

「それと、貴方のお父様にはこれを渡して頂戴」

 そういってフィラに渡されたのは紙だ。それも紙の中でも最も高い羊皮紙。

「お、お金。払います…いくら、ですか」

「あら、わたしはお金を求めていないわ」

「こ、こんな立派な、紙に書いているのなんて、お金の、請求でしょ、う」

「警戒心が高いのは立派ね。でも、中身を見ないで決めつけるのは良くないわ」

 フィラは、丸くされた羊皮紙を慎重に開く。そこにはフィラの名前と父の名前、そして代金が書かれていた。代金欄には0と言う数字が書いてある。

「こ、これ…詐欺とかじゃ…」

「信用ないわねぇ。詐欺じゃないわよ」

 医療品は全て隣国からのものだと聞いている。そのため、非常に高価なのだ。医者もいるにはいるがなるのも難しく、そして少し嫌われ者の仕事である。特に平民からは好かれていない職だ。医者はわざわざ農村地には来ないし、来ても後で高価な料金を請求されるからだ。だが、この女性は無償でフィラを見てくれた。

(変わった人…)

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