秋・辛い辛いスポーツ祭
秋がやってくると盛り上がる行事がある。それはスポーツ祭だ。中等部の最後の盛り上がる行事とも言える。昨年もとても盛り上がっていた。
貴族は乗り気な人と全くやりたくない人の差が激しい。特に男子生徒は嫌な顔する人の量が多い。女子生徒は反対に結構乗り気だ。想い人の活躍が見られるかもという期待もありそうだ。
一方、平民であるフィラは全く乗り気ではなかった。
「うぅ……見せしめとか意味わかんない…辛い…」
「諦めなよフィーラちゃん?」
「サクリちゃんは速いからいいじゃん…」
フィラが抜擢された種目は陸上競技の一つリレーとテニスだ。両方得意では無い。
「平民だからできるよねって圧かけられてやらされたぁぁ。やだぁ。帰りたい…バイト行く…」
「バイトは行くんか」
フィラは半袖と短めのズボンを履いている。出たくないためフィラはずっと校舎の裏にいたのだ。少し冷える。
「うぅ、テニスやだぁ…ついでにリレーもやだ」
「リレーいいじゃん楽しいし」
「どこが…サクリちゃんもリレーなの辛い…」
フィラは決してすごく足が遅いわけではない。だが、すごく早い訳でもないのだ。ただ単に恥をかく平民が見たいというよく分からない理由だけで通されてしまったのだ。
一方、サクリは自身でやりたくて立候補したらしい。先程もクリケットで楽しそうにしていた。ルール違反をしすぎて退場させられていたが。
「女生徒は今絶賛盛り上がってるよぉ?ほら、見てなよ」
「んー」
フィラはチョコンと校舎裏から顔を出す。どうやら男子生徒の競技らしい。
「何してるの……?」
「カラーボール当てる」
「しょうもない…」
学園は勉強のし過ぎで疲れているのか、はたまた、ただふざけたいだけなのかよく分からない競技を毎年入れてくる。昨年は砂の城を作れと言われていた。
「男子だけだからさ、結構熱血なんよ」
「ふーん」
正直、フィラの知り合いの男子生徒と言えば二人くらいだ。あとは顔しか知らない人も多い。名前も知らない人もいる。
女子生徒は双眼鏡を使い見ている。あそこまで行くともう怖い。マリアンネもキャーキャー言いながら友人達と見ている。
フィラは興味を無くし校舎裏に戻る。
「サクリちゃん、もうすぐでしょ。頑張って」
「フィラは?」
「サクリちゃん終わったあとの……」
「ふーんじゃ、あたしの有志とくとご覧あれ!」
サクリはずざっとフィラの前から走って姿を消した。フィラは頭を抱えてうわーと悩んでいる。いっそこのまま帰りたいが帰ったら絶対に何かを言われる。一応団体競技なのだ。一人抜けたら明日何を言われるか分からない。グサッと刺されるかもしれない。
「やりたくないよぉ…帰りたい…」
「がんばれー可愛い可愛い妖精フィラちゃん」
「!?」
フィラはバッと立ち上がり声の主から離れる。
声の主はやはりレオだった。服には赤や青のカラーボールが当てられた跡がある。
「な、何してるの…?」
「えー。可愛い可愛い妖精フィラちゃんを慰めに来た」
「どしてここ?ほかの女の子もいるじゃん」
「女の子はねぇ。みんな可愛いから」
「理由になってない!」
レオはウィンクをしながらフィラに話しかける。そして、平然と隣に座る。フィラは二、三歩離れたところに座る。
「でぇ?確かフィラちゃんはテニスとリレーだっけ?俺もリレー出るんだよねぇ」
「終わった……」
「まぁまぁ、そんなに落ち込まない!」
肩を落としているとふと大事な事に気がついた。サクリとレオは同じクラスのだ。そして、サクリはもうすぐリレーと言っていた。
「レオ君ここいちゃダメじゃん…」
「お、わかっちゃった?」
「早く行きないよ!刺されるよ!」
「こわっ」
レオはカラカラ笑っているがフィラは必死だ。どうにかしてレオを校舎の方に送るのか必死に考える。
「まぁまぁ、そう考えずに俺と一緒に……」
「一緒に、なんですか?」
「うげ!?」
レオは少し低い声に立ち上がる。目の前にはマリノが立っていた。こちらもぶつけられたのか左頬に青色のインクがついたままだ。
「さっさと戻りなさい。貴方を探す人がいますよ」
「い、いやぁぁ?そのー、まあいいだろ」
「何が良いのですかね?私がわざわざ足を運んだのですが?」
「…いいだろ?」
「さっさと戻りなさい」
マリノに腕を捕まれレオは嫌だ!と叫んでいる。レオの方が筋肉があるのか、それともマリノがあまり力が無いのか分からないが、レオの方が優位のようだ。
「フィラちゃん!助けて!」
「え、あ、えぇ?」
「いいですよ。構わなくて」
ズルズルとマリノに引き摺られているレオ。ヤダヤダと駄々っ子だ。アワアワと見ているとレオはフィラの方を指さした。
「フィラちゃんだって次でしょ!?俺だけじゃねーから!!」
「巻き込まないでぇぇぇ!!」
フィラはあわあわして逃げようとするがマリノに捕まった。
「まとめて運びましょうか」
「……ひぇ」
結局、レオは駄々を捏ねてほぼ地面と引き摺られ、フィラはうう、と呻き声を漏らしながらついて行った。




