冬・命の恩人!!!
フィラは改めて今の状況を確認してみる。
サクリはレオを机から突き落とし堂々と腰掛けている。落とされたレオは少しマリノを茶化した結果すごい蹴りを入れられていた。
(……レオさんが可哀想…)
フィラが少し哀れんだ目で見ているとサクリがフィラの前に来た。
「ねー、やめとこうよ。こんなよーわからん男」
「よく分からないって何ですか」
「そのまんまだよー、成り上がり男爵」
「嫌味ですか」
「そーだそーだ」
サクリはマリノに向かって成り上がりと言った。それにフィラは疑問を抱きコテンと首を傾げる。フィラの記憶では成り上がりは下克上の様なものだった気がする。
「ねー勉強ならあの……誰だっけあの平民でいいじゃん」
「その人の名前わかんないもん」
「は?」
「だったら頭良い子に教えて欲しい!」
フィラはバッとマリノにまた近づいた。全く懲りない様子にサクリは頭をかいている。
「お願いします!」
「……そう、ですね」
マリノは背もたれに寄りかかり困っているようだ。こめかみに指を当てている。その様子をレオはニヤニヤして見ていた。サクリの座っていた場所を取り返してご満悦のようだ。
「……何か他に目的はありますか」
「目的?うーん。成績上げたい」
「それ以外です」
「うーん…うーん、あ」
フィラの声にレオとマリノの雰囲気が変わった。警戒心が高まったとも言える。フィラはその様子に気が付かづに鞄を開けて、袋から何かを取り出した。
「はい、これ」
「…銀貨」
「春に貰ったやつ。返しておくね」
「え、いや、いらないのですが」
「お金は大事だよー。学費払えなくなっちゃうもん」
フィラの謎にドヤっとしている様子に三人は絶句している。学費が払えないという状態に陥ったことがない子達だからだろう。
「……これは、貴方に借りを返すために渡しました」
「お金の貸し借りはダメ!友人関係壊れちゃうよ」
「大した友人いないので大丈夫です」
「そーじゃないの!」
マリノが返そうとしてくる銀貨をフィラはむっとなり手のひらに押し付ける。
「じゃあ!その借りとやら、勉強で返して!わたし、困ってるの!」
フィラはズイっとマリノに近づく。あまり友人でも近づかないような距離だ。だが、フィラは本気だ。勉強しなければ退学の可能性があるのだ。中等学校を卒業しなければ高等学校には行けない。この学園は中等部、高等部となっているためここで退学すると高等学校の勉強は不可能なのだ。それに、中退してもう一度勉強したいと思っても不可能なのだ。独学でやるしかない。
フィラは独学での勉強は絶対にできないためここが一番不味いところなのだ。
「お願い!」
フィラはパンッと切れの良い音をさせて顔の前で手を合わせた。隣でサクリとレオが笑いを堪えている声がしているが正直フィラはそちらをどうにかするつもりはない。
今はどうにかして、この扱い方が面倒そうなマリノに頷いて貰わないとなのだ。
「どーするんだ?こんなに可愛い妖精さんがお前に頭を下げてるぞ」
「そう、ですね…どうしましょうか」
「ね、えー妖精さん」
「フィラですっ!」
「フィラちゃん、俺じゃダメなの?」
レオはどこからともなく鞄を取りだし、中身を漁る。そして取り出したのは数分前も見た紙だ。そこには二位の数字。
「俺二位なんだよねぇ」
「すごい……」
「だっろ?どう、俺の方が絶対にいいだろ」
フィラはマリノに近づいていたが、今度はレオがフィラに近づいてきた。その様子をサクリは間に入り止める。
「なーにが俺にしない?だよ。カス。名前すら覚えてないから妖精さん呼びとかきっもいんだわ」
「はぁぁ?お前に言われたくねぇわ!!」
「うっるさい!!その口縫いつけてやるか!?」
「やれるもんならやってみやがれ!!」
サクリとレオはいつの間にか取っ組み合いになっていた。フィラがどうにかして入ろうとするも、入ったら怪我をする事は分かりきっている。
「……お願い、これで退学はやなの」
「退学?」
「うん。次の模試で八十位以上取らないと退学なの…うわぁぁどうしよう……」
フィラは自分で説明していて悲しくなったのかうずくまる。紺色の髪の毛が地面についてしまっている。
「…まぁ、そうですね。それでしたら…引き受けますが…本当に成績だけですか」
「いいの!?」
「良いとは……」
「ありがとう!!えへへ、命の恩人!」
フィラはマリノの手を握りやったーと喜んでいる。隣ではまだ決闘中だ。
「ねぇ、いつからやるの?」
「……」
「ねぇ!」
「え、あ…はい。なんですか」
「いつから?わたし、次の模試まで毎日やりたいんだけど…」
「貴方が決めてください。私はそれに合わせるだけです」
「ほんと?じゃあ、授業終わってから二時間くらいどう?」
「いいですよ」
「よしっ!」
フィラは目をキラキラさせてグッとガッツポーズをしている。そして、サクリとレオがまだ取っ組み合いをしている事を確認すると、止めに入ったのだ。




