【11】拍子抜け
二ヶ月近くも開いてしまい、申し訳ございませんm(_ _)m
しかし今後もテスト続きで、更新不定期になると思います。
重ねて申し訳ありません!
あと! やはり人物の思考は()の中に入れることにしました!
やはり()無しは私には無理ですよ〜〜
ということでどうぞ〜!!
「行くぞてめぇらァァァアアアアアア!!」
『オオォオオオオオオオ!!』
チャイムと共に、屈強な猛者達が食堂へと駆けていった。ちなみに率いているのは悠馬だったりする。
「よくもこう毎日毎日・・・・・・」
呆れて溜息をつく除夜を尻目に、瑛士はいそいそと弁当を取り出した。彼は寮生の、しかも男子にしては珍しく、自分で弁当を作って持参することにしている。
というよりは、ある人から強制されているのだが、考えぬが華である。
「平和だな・・・・・・・・・・・・」
「あ、天城・・・・・・。
お前はあの血で血を洗う食堂戦線を見てそう口にしているのか・・・・・・?」
震える声で問われるその質問に軽く首肯しながら、瑛士は空を見上げていた。
(実際、今この瞬間にも、姫川は刺客と殺り合ってるんだ。平和で当然だろうさ......)
そう、先日のファンタジーでアクロバティックな体験から数日、瑛士の日常は別段変化なく過ぎていった。それは臨死体験以前から続いていた普通の日常だ。
別に彼は、扉を開けた途端に腹を穿たれる様なデンジャラスな日常が好きなわけでも、気を抜いたら自らの血で湖が出来上がる様なスプラッタな光景が見たいわけでも無い。
しかし、しかしだ。
転入してきた美少女が神の使いで、この世界を含め八つの異世界が有ることを知り、あまつさえ協力を持ちかけられたのだ。
年頃の高校生ならば、自分の日常が少なからず非日常に傾いていくものと、信じて疑わない筈だ。それは無論、周りの男子よりは数段落ち着いている瑛士からしても、当然のことだった。
だが、現実は時に無情......彼の日常は傾くどころか一遍の変化すらしはしなかった。
詰まるところ、
(なんだこの圧倒的な拍子抜け感はっ!)
瑛士は巻き込まれたかったのだ。例えそれが、命懸けの戦場なのだとしても......。
故に平和だと、彼は説く。
そんな彼の頭上に、ぬっと影が差した。
瑛士が「ん?」と顔を上げると、屈強な男達が三人ほど、彼の横に立っていた。
瑛士はこの男達を知っている。
一人は、去年の全国大会で全ての試合をKOで制し、見事高校生ヘビー級のボクシングチャンプへと成った、紀伊馬大和先輩。
一人は、こちらも高校生の槍投げで全国二位の源丸鷹義先輩。
一人は、一年生の内からエースピッチャーとして甲子園に出場を果たしている天才投手、蒲田優悟先輩。
三人が三人とも、この天伸学園の顔とも言える人物だ。
そんな先輩方三人が、瑛士をじっと見据えている。
(あれ〜、 俺なんかしたっけ?)
疑問と共に静かな焦りを抱きながら、瑛士は彼等へ問いかけた。
「どうしましたか、先輩方?」
「......天城瑛士というのはお前か?」
(声低っ! なにこれ怖い!!)
紀伊馬先輩の余りの迫力に内心ビビりまくる瑛士だが、しかし勿論外には出さない。
「はい、天城瑛士は私です」
なんとか冷静に返した瑛士に向かって、蒲田先輩がずいっと腕を突き出した。その手には重なった三枚の写真が握られていた。
「......なっ!?」
写真を見つめた瑛士の顔が、次の瞬間真っ赤染まった。
一枚目に写っていたのは、姫川の胸に顔を埋める瑛士の姿。そう、転校初日の、あの保健室での出来事だった。
「な、なんで先輩達が、そにゃ、そんな写真をっ!?」
噛み噛みの瑛士を無視して、蒲田先輩はその写真を、クラスの皆に見えるよう頭上へと掲げた。
『ほぅ......』
教室に残っていた弁当組の男子達から、黒い殺気が放たれる。
(ダメだー! こうなったらもう野獣は止められない!)
「君、この前入ってきた転入生、二人ともものにしたらしいね?」
その状況に人の悪い笑みを浮かべながら、源丸先輩が言葉を紡ぐ。
「そ、そんな事してませんよ!」
「じゃあ、これはなんだ?」
蒲田先輩が写真をずらし、二枚目と三枚目が露になる。
すると、二枚目の写真は瑛士と姫川が一緒に屋上から出てくる場面、三枚目は、この前未來とファストフードを食べていた時の写真だった。
「......あ、あぁ。 なんだそれか......」
ふぅ、と一つ溜息を吐き、瑛士は落ち着きを取り戻す。先輩達の話は事実無根で、その誤解を作り出したものがこれまた誤解の代物だったからだ。
「先輩方、これはそういう写真ではありません。
一枚目の写真は、この間姫川さんに相談に乗って貰った時に、思わず感極まって泣いてしまった時のもの。
二枚目は、頻繁に授業を抜け出す姫川さんを連れ戻した時のもの。
三枚目は、この前の土曜に、新炉さんに街を案内した時のものです。
よって、別に二人と恋愛関係にあるわけではありません。ご安心を......」
「ほぉ、街を案内? それはデートじゃないのかい?」
源丸先輩の言葉に、瑛士は眉を顰める。
(デート? んなわけないじゃないか。
ただ未來と街をぶらぶら歩いて、最後にファストフードを食べて、一緒に帰った。
これの何処が......何処が......あれ? これデートじゃない?)
「で、でも、そんなつもりは一切。
あくまであれは街案内の「あれ? デートじゃなかったの?」一環として......」
「み、未來、変なところで入ってくるなよぉ。誤解されちゃうよ? いいの? いいの!?」
瑛士は心の中で戦慄した。今の未來の一言は、不味い、と。
ずい、と。紀伊馬先輩が一歩近づいて来た。更に顔を瑛士の目の前まで下げてくる。
(こ、このプレッシャー、ニュ◯タイプかっ!?)
「お前さ、転入生したての美少女二人とイチャコライチャコラしてて、むかつくんだよ......」
(だ、だから誤解だってのに......ていうかそこっ! そこのクラスメイト達、頷くな!つかいつの間に食堂組帰ってきたの?
まあどうせ面白そうだから途中で引き返して来たんだろうが......)
"むかつく"宣言に横から口を出しそうになった除夜を左手で制し、続く先輩の言葉を待つ。
そして発せられる......その言葉。
「......【無能】のくせに出しゃばるな......」
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教室の、空気が変わった。面白半分に瑛士を追い立てていたクラスメイト達の矛先が、先輩三人に凝縮されたのだ。
三人は察する、此処は自分達にとって、完全にアウェイだと。
そして気付く、クラスメイト達の配置が、自然と瑛士を取り巻く様に変化していることに。その布陣はさながら、王とそれを護る近衛達の如く。
いつの間にか、彼ら三人は教室の扉の近くにまで気圧されていた。
「......チッ! 今度から出しゃばんなよ!」
そう捨て台詞を吐いて、先輩達は退場していった。
「............皆、助かった。 ありがとう」
完全に先輩達の足音が消えたのを確認して、瑛士は皆に頭を下げる。この光景は、瑛士達が入学してから、もう四、五度ほど繰り返されている、たまに起こる現象。これもまた、彼等の日常だった。
「いいって、でも瑛士、お前今回は割と平気っぽいな? 前まであんなに真っ青になって震えてたのに」
「べ、別に震えてねぇよ!
まぁ、今度からはそこまで重症にはならないと思う。自分の中である程度の方が付いたからな」
「そうか......なら、良かったな」
瑛士と悠馬、それにクラスメイト達は、お互いに笑い合う。この絆、この一体感こそが、瑛士が此処にいたいと思える、最大の理由。
「よしっ! お前等ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
食堂戦線第二波、行くぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
『オオォォォォォォォォォォ!!!』
圧倒的な音量と共に、悠馬達は食堂へと引き返して行った。
(やっぱり、日常も悪くないかな......)
だが、現実は時に無情............日常を肯定すれば、図ったようにやってくるのは"非"日常。
________ゴオオオォォォゥゥゥゥン!!________
窓の外から聞こえてくるその音に、瑛士達は一斉に音源を注視する。
そこにあったのは、倒壊していく女子寮の姿。
瑛士は察する。
この音は、この轟音は、
"非"日常という名の......怪物の咆哮なのだと......。
如何だったでせうか?




