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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
8/17

女王と呼ばれる所以

「さて、本日は大切なお知らせがありますので。」

「大切な」

「お知らせ?」


前にも同じ様な事があったなと水菜は思った。


「そうです。お二人共、入って下さい。」


時津に促され入ってきたのはあの二人。


松山まつやま浩輔こうすけ君。」

「どーも。」

「それから鋳延いのべ順一じゅんいち君。」

「ヨロシク。」

「今日の訓練はもうすぐですよー。」

「へーい。」

「水菜さんは特別メニューですよー」

「ふざけんな!!」


水菜の叫びもなんのその。

笑って出ていく時津。


「頑張れ。」

「ぐぬ…おのれ悪魔メガネめ!」

「えっと、これからヨロシク。」

「ハイよ、よろしくさん。」

「ヨロシク。でも何でいきなりクラス異動なんか…」

「だよなぁ。」


その言葉に秋は水菜を見た。

水菜は二人に背を向けてウサギを見ていた。

その姿はまさに子供だった。


「ミィ?」

「…これ、ポシェットに出来ない?」

「ん?大きさ的に少し無理じゃ…」

「だよねぇ。ちっまた作らなきゃいけねぇじゃんか。」


ボソリと呟く水菜に秋がピタリと止まる。


「それ、ミィが作ったの?」

「え?なにが?」

「だから、そのリュックサック…」

「当たり前じゃん。不器用の神トッキーにそんな芸当無理だって。」

「「不器用の神って…」」

「トッキーが器用なのは機械の前だけだしね。」


随分な言われようだが実際その通りなのだ。


「よいしょ。そうそう、あんた達がここに来たのは滅多に見ない力を持ってるからだよ。」


ウサギを背負いながらさらりと水菜は言った。


「滅多に見ない力?」

「そう。…む…手が…」

「はいはい、ほら。」

「ん。」


秋が手伝い、ちゃんと手を通す。

水菜の袖は長い。

大きくなった時にはちょうど良い長さになるようにしてある為だ。


「へぇ、おチビちゃんは何か知ってるの?」

「知ってるも何も…」


浩輔に問われ、睨む水菜。

フードに隠れて見えないが。


「昨日の暴走の原因があんた達だからよ。」


予想もしていなかった言葉に三人の視線が水菜に集まる。


「私の能力の中で特に強いものは総裁の能力封印を掛けてる。あんたのせいでそれが「消えた」の。」

「オレ?」

「で、それに気付かないままその次にあんたに触れた。あんたの力は「増強」、つまりブースター。…結果、他の能力発現もあっての反動で暴走。」

「息止まってたのはその結果ってことなの?」

「…違う。いや違わない?結論で言えばそうなるのかな。まぁ、似たようなものか。」


一人納得する水菜。

その姿に少し寂しくなる秋。


「(…きっとこれは聞いても答えない類いのもの、だよね…)でも無事で良かったよ。」

「ま、そう簡単には死ねませんってことで。」


いつか話してくれる。

そう信じる秋。


「それから、私チビなんて名前じゃないわ。」


浩輔に向かって言い放つ水菜。


「じゃあなんて名前なわけ?オレ聞いてないけど。」

「…紫柳院水菜よ。」

「水菜ちゃん、で良いのかな?」


二人の険悪な雰囲気に困り顔で割って入る順一。


「こんな生意気なのチビちゃんで十分じゃねぇ?」


カチン。

そう聞こえた気がした秋と順一だった。

水菜も一触即発な空気を垂れ流し始めた時、秋はふと疑問に思った。


「あれ、二人は聞いてないの?」

「「何が?」」

「水菜が小さいのは能力の常時使用してる為だって。」

「「…え?」」


どうどうと水菜を宥めながら二人に問う。

だが二人の反応は知らないと物語っていて。


「一応これも訓練で…最低二つの能力常時使用してるんだけど。」

「つまり、その小ささは能力使ってるから?」

「当たり前じゃん。こんな小さな15歳居るわけ無いでしょ。」


見た目年齢は五、六歳前後ですからね。


「お、同い年…だと…?」

「何よ、悪い?」

「そ、そうなんだ!じゃあ、俺の事呼び捨てで良いよ!」


浩輔を体一杯使って制する順一と、水菜が動かないよう抱く秋。


「はいはい、皆さん仲良くね。」

「マジー。」

「眞島さん。」

「「(誰?)」」


見るに見かね入ってきたのはシェフ眞島。


「はい、今日のお弁当ですよ。さて、浩輔君、順一君。わたしは眞島。君達の食事の一切を取り仕切らせてもらっているんだ。」

「「あ、よろしくお願いします。」」


丁寧な挨拶に頭を下げる二人。


「さて、本日のお弁当は和食です。おにぎりは梅、鮭、おかかに野沢菜。夜はフレンチ。よろしいですかな?」

「てことは…」

「コリル先生のマナー講座?」

「はい。」

「マナー講座?」

「うん、あるものは学べって言うか。あとお茶とかお花に着付け…」

「水泳に陸上…とかね。毎日二時間ずつの授業があるんだよ。」

「なんで?」

「能力カリキュラムだけが人を伸ばすものではない、だそうよ。って言ってもこのクラスだけなんだけど。」


確かに今まではそんなものは無かったと二人は思った。


「理由は簡単だよ。」

「「?」」

「他のクラスと比べてトッキーの能力カリキュラムの成果が良いから、他の勉強にも力を入れられるんだよ。」


それについては水菜も秋も異存はない。

ただし。


「数学さえなけりゃあな!!」


その言葉の意味を二人が知るのは翌日の事だ。


◇◇◇


とにかくいつもの通り訓練所へ向かう。


「やっぱりちょっと重いね。」

「持とうか?」

「え!?あ、ううん大丈夫。これはあたしの訓練でもあるから。」

「そうなんだ。」

「うん。」


秋と順一は良好な関係を築けそうだ。


「ミィ、本当に体大丈夫なの?」

「残念ながら健康そのものだよ。」


そして外へ。


「ていうか何だったんだよあれ。」

「?」

「昨日の…」

「魔獣っていって…」

「要は私達と同じ様に能力に目覚めた動物だよ。」


と、水菜が勢いよく振り返りいきなり炎を放つ。


「「うわ!?」」

「あ、外には魔獣普通にいるから気を付けてね。」


二人が振り返ると葉っぱの様なものが燃えていた。


「でも最近増えた?特に植物の魔獣。」

「当たり前じゃん、今春だもん。植物の繁殖シーズンだよ?」

「あ、そっか。」


と、今度は秋が左手を真横に突き出した。

見れば別の魔獣が倒れる瞬間だった。


「えと。何した、の?」

「あたし鉱石精製の能力があって。筋骨増強で弾丸みたいに飛ばせるんだ。」


にこっと笑うがその笑顔に恐怖を覚えた二人でした。


「水菜は火?」

「今に分かる。」


ニヤリと笑う水菜にも少なからず恐怖を覚えたのでした。


◇◇◇


「では、始めましょうか。浩輔君は風、順一君は火ですね。まずはそちらを優先しましょう。秋さんはジャングルジムですね。ただし大きさは倍です。」

「「「はい。」」」

「さて、水菜さんは…久し振りにアレをしましょう!」

「…」


時津の楽しげな声に水菜は無言でフードを脱いだ。


「(あれ、珍しいな…フード取るなんて…)」


と、秋が思っていると水菜の制服のジッパーが勝手に降りていく。


「その部屋?」

「ええ!と言うわけで強化版トッシー君お出でませ!」


と、いつもジャングルジムが出るのと同じ様に大きな魔獣が現れた。


「でっけー…」

「って魔獣!?」

「ええ!これこそ私の最高傑作のトッシー君二世です!」

「時津さん楽しそうですね…」

「前回より使う力も動きも改良されています。」

「面白い。」


と、一瞬で仕切られた部屋の中に現れる水菜。

と、それまで秋すら見たことの無い変化が。


「え…まさか。」

「ふふ、トッシー君はちゃんと戻らないと戦えませんからねぇ。」


そう、水菜は初めて元の姿に戻ったのだ。


「水菜さんは子供の姿になると能力の強さも変化するんですよ。元の姿に戻った今の能力が水菜さんの本来の力の強さです。」

「へぇ。」


と、水菜が秋を見る。

振り向いた事で二人は初めて水菜の顔を見た。

当然驚く二人。

何せ緋い瞳なのだから。


「あっちゃん、コインサイズの鉱石出してほしいんだけど。」

「あぁ、うん。幾つ?」

「とりあえず…五個で良いや。」

「ん。………ってどうやってその中に?」


と、水菜はニッと笑うと人指し指をピッと上げる。

すると秋の手にあった鉱石はヒュンと消えて水菜の周りに浮かぶ。


「凄い!手を触れなくても瞬間移動テレポートした!」

「いや、元々触れなくても良いんだよ。子供の姿では出来ないんだよ。」

「へぇー。」

「それに制御もしてたしね。」


と、鉱石が4つグニャリと歪み形を成していく。


「それに子供の姿のままでは…」


時津の言葉の最中、水菜の周りに火の玉が幾つも現れる。


「使えないものも多かったですから。」

「十八番が使えないってのは困るんだよ、ね!!」


水菜が叫ぶように言ったその瞬間、物凄い電流が流れ始める。


「「おぉぉ…」」

「ミィ、スッゴーい!!」

「ここから見るのは、カリキュラムを受ける能力者ではあなた達が初めてですよ。」

「へぇ、そうなんだ。」

「そして、女王と呼ばれる所以でもあります。」


その言葉に浩輔と順一は驚いて時津を見た。

そして秋は…決して水菜から目を離さなかった。


◇◇◇


「あぁぁ…トッシー君…」


数十分の攻防の末、勝ったのは勿論水菜。

無惨なトッシー君二世の姿に時津は泣き崩れていた。


「ミィお疲れ。」

「ふふん、トッシー君二世も下してやったわ。」

「凄いね!!」

「小さいとさっきの出せねぇの?」

「残念ながら。理由は分かんない。」

「へぇ。」

「だから日夜頑張るのですよ。」


と、先程とは違い普通に話す水菜。


「さっきとは違うよね?」

「あー…多分発言に怒ったのかも。」

「そっか。」


と、秋と順一は苦笑していた。



◇◇◇



「ふっはー!」

「今日も疲れたねー」

「「…」」

「二人共大丈夫?」

「元気、だね…」

「オレ、もう無理…」

「流石に二ヶ月近くやってたから…慣れてきたのかも。」


風呂上がり、浴室から続く休憩室で文字どおり休憩する四人。

勿論水菜はコーヒー牛乳を飲んでいる。


「好きだねぇ。」

「風呂上がりの一杯はコーヒー牛乳が一番なのだよ!」

「水菜が一番元気だね。」

「ん?私は二年近くトッキーの能力カリキュラム受けてるもん。…よっ!」


相も変わらずビンを投げ入れる。

今日も綺麗な弧を描きビンはゴミ箱に入る。


「へぇ。」

「来たのは三年前か。」

「でもカリキュラムは二年って?」


順一が首を傾げる。

それに水菜は頷く。


「一年間は殆ど寝たきりだったから。」

「寝たきり?」

「ここに来たってか運ばれたのね。住んでた所、魔獣に襲われて。」


少し悲しげな表情を見せたものの、それは一瞬で。

隣に座る浩輔だけには見えていた。


「当時は雷しか無くて、それも弱かったから派手にやられてね。たまたま現地調査に来ていたトッキーに助けられたの。」

「だから十八番か。」

「そ。それから回復するのに1年近く掛かったの。殆ど死んでた状態だったって。んで、歩けるようになってから散歩したりトッキーのカリキュラム受けたりで。」

「楽しんでたって聞いたよ。」

「主にトッキーがね。やればやる程に能力が増えていくし。クラスに入れられてた訳じゃないからそのまま流れでトッキーが私の担当になっちゃったわけよ。」


当時を思い出したのか、ふふっと笑う水菜。


「そうだったんだ。所でさ、二人共アダ名で呼びあってるよね?」

「「うん?」」

「いや、羨ましいな〜って。俺達幼馴染みなんだけどそういうのって無いからさ。」

「そんなもん?」

「うん。」


順一の言葉に水菜が首を傾げる。


「別に呼び捨てでもそれはそれで良いと思うんだけどな。」

「そうかな?」

「あっちゃんも最初私の事呼び捨てだったもんね。」

「うん。」

「へえ、なんでアダ名に変えたの?」

「え、いや…なんか猫みたいだなぁって思って。」

「「ネコ…?」」

「うん猫。」

「まぁ猫好きだからいーけどさ。」


ぷ、と頬を膨らませた水菜を見て。


「「…何となく分かる気がする。」」

「なにぃ!?」

「でしょ!」


この時から水菜は二人からもミィと呼ばれる様になってしまった。


「順くん。」

「ハイハイ。」

「…」

「…」

「こーすけ。」

「いやそれただの呼び捨てじゃん!」

「…こーすけ。」

「良いんじゃないの、こーすけ。」

「お前な…」


ともあれ何とか仲良いですね。



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