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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
9/17

女王は多趣味

「「…こーいう事か…」」


素直に時津の数学を受けた浩輔と順一は水菜達が逃げた理由を思い知った。


「…分かるか?」

「…分かんない…」


時津の数学はレベルが高くて分からないのだ。


『終わったら今日は昼まで自由時間だよ。じゃあねー』

『今日は第三研究棟の屋上でお弁当食べるから終わったら来てね!』


そうしてさっさと消えた二人。


「「まだ終わらないっ」」


きゅっとシャーペンを握り締める二人でした。


◇◇◇


「ぷぷっ」

「どうしたの?」

「ん?二人の様子。」

「あぁ…」


ついこの前の自分を思い出して苦笑いの秋。

二人は水菜の能力により過ごしやすくなった展望室にいた。


「ていうか力強くなった?」

「ん?」

「前はフード被ってたら遠くは見れないんじゃなかった?」

「うん。それに生産系能力も増えたしね。」

「良かった…って言って良いのかな?」

「重たい水とかライター持ち運ばなくて良かったよ。」

「水は重たいもんね。」


あの日、新たに現れた能力。

火、水、土、植物の生産能力。


「でも変わらず種は持ち歩かなきゃならないんだよね。」

「なんで?」

「どうやっても出てくるの花びらだけなのよ。」

「種とか出せないんだ。」

「みたいだねぇ。ま、この姿でも手を使わずに瞬間移動テレポート出来るようになっただけマシか?」


と、水菜は能力を行使し何やら作っている。

ピクニックシートの上では裁縫道具や布がたくさんあった。


「(本当に作ってる…)」

「ふん、ふふーん。」


裁縫をしない秋でも、縫い目が綺麗なのがよく分かる。


「やっぱり細かい作業は自分で出来てから能力でも綺麗なのが出来るの?」

「そうじゃない?念力でするのって手で動かす物が多いから影響はあると思うよ?」

「水菜ってなんでも出来るよねぇ。絵も上手いし料理も出来るし。」

「好きだからねぇ。」


ついこの前、眞島に頼んで厨房を見せてもらったときの事だ。

話の流れでお菓子を作る事になり、秋はクッキーを眞島に教えてもらっていたが。

その隣でケーキを作っていた水菜だったがプロのシェフ眞島が舌を巻く程の腕前だった。


「もしかして料理家だったとか?」

「ううん、違う。」

「じゃあ何の仕事してたの?」

「…介護…」

「…へ?」


聞こえたのは水菜から縁遠い介護という言葉。


「ケアマネージャーしてたよ、昔は。」

「へぇ。」


と、ここで。


「子供に戻ってからもう10年か…」

「私特に実感無いけど…皆成長しないよね。」


水菜の言葉に秋は水菜を見詰める。

そして納得したように頷いた。


「そっか、身長変えれるもんね。」

「うん。」

「そう言われてみればそうだよね。」

「仕事したらいきなり皆若返るんだもん。びっくりしたよね。」

「そうそう。でも気付いたら子供に戻ってる自分もいるしね。」

「うんうん。」


こういう話になると二人も少し大人に戻るようだ。

見た目ではなく心が。


「昔、よく時間が止まればいいのにってよく思ったけど、本当に止まるなんてね。」

「人の成長がね。」

「ね。…少子化とか高齢化社会ってどうなってるんだろうね?」

「どっちもクリアなんじゃない?だって若返って高齢者って見た目四十歳か五十歳位でしょ。で、一番多いのが新生児位から十代でしょ。マジーとか医療班の人なんか明らかに皆おっさんだし。」


その言葉に秋は笑う。


「でもそうなると人間は増え続けるよねぇ。」

「でも無いよ。魔獣に殺されたり…犯罪者なんかもいるんだから。」

「…怖い世の中は変わらないって?」

「じゃない?研究所に来ない人もたくさんいるらしいし、研究所が出来たって外の町とか色んな機関って普通にまだあるんだし。」

「町かぁ…たまには外に出て買い物とかしたいよねー」

「そーだねー」


結局は話が反れていき、いつのまにか好きなものの話など、ガールズトークを繰り広げる二人だった。



◇◇◇


「「よーやく終わった…」」

「お疲れさん。」

「お疲れー。はい、お茶。」

「ありがとう。」

「んでミィはなにしてんだ?」

「武器作成。」

「「は?」」


あれからガールズトークを繰り広げる二人だったが途中でまた話が変わり今度は魔獣との戦いの話となって。


「で、あたしが使いやすそうな武器を作ってくれてるの。」

「今何作ってんの?」

「飛び道具系。」

「ブーメランとか?」

「あたし接近戦メインだからなぁ。ちゃんとした資料見た方が良いよ。」

「やっぱりそうなるかー。」

「てことは。」

「第五研究棟の第一資料室かな。」

「「第一資料室?」」


順一の言葉に水菜と秋は首を傾げる。


「3フロア分ぶち抜いてあるでっかい図書室があるんだよ。」

「そんなのあったんだー」

「まだ第五研究棟の散歩は行ったこと無かったもんね。」

「オレの隠れ家だったんだよなー」

「ほんと、昔っから図書室に逃げるよね。本読まないクセに。」

「静かだから。ここの、だーれも来ないんだよ。」

「まぁカリキュラム抜ける人少ないもんね。」

「会わなかったもんねー?」


とにかくその資料室へ向かう事にした四人だった。


◇◇◇


「ふおぉぉ!」

「ひろー…そして本がびっしり…」

「てかミィテンション上がってない?」

「ちょっと飛び跳ねてんぞ…」

「そう言えば何かしら本読んでるけど…」


既に何かの本を手に取り読み始める水菜。


「それは何の本?」


と、順一が覗き込む。

が。


「うっ…」

「どうしたの?」


身を引いた順一に秋が首を傾げる。


「読めない…」

「へ?」


と、ここで二人も覗き込む。


「「…」」

「あの、ミィ?」

「んー?」

「その本何?」

「昔の漢方薬の調合書みたい。」

「英語…?」

「ううん、フランス語。こっちのはイタリア語だね。」

「「「…」」」


意外な一面を見せる水菜であった。


「武器の資料なんてあるのかな?」

「あるよ?特に中国のものは詳しく載ってるし。」

「「なんでそんな知識があるんだよ。」」

「ん?考古学好きだから?」


好きの問題ではないような気もするが、とにかく探そうとする三人に水菜が待ったをかけた。


「もうすぐお昼だよ。私がやる。」

「どうやって…」


するんだ、と浩輔が問おうとした時。

フードを外しカッと見開く水菜。


「範囲指定、第一資料室の資料全て…検索対象、武器の資料…」


暫くそのままで、ふっと力を抜くと水菜は手を上げた。

と、幾つかの棚から本が飛んでくる。


「はい、見つけた。」

「「「おおお!」」」


と、秋が拍手を止める。


「もしかして水菜の透視って…」

「そ、これが本来の使い方。範囲指定してそこにあるものの情報を視覚的に見るの。普段は自分の視界を範囲検索対象にしてるけど。」

「じゃあさっきのは?」

「さっき?」

「範囲クラスルーム、対象授業を受ける二人。」

「「覗きか!?」」

「ちなみにあっちゃんも似たような反応だった。」

「覗きか!?」

「んでも離れすぎると指定しても見えないんだよねー」

「そうなんだ。」

「風呂とか覗き放題だなー」

「そんな考えこーすけだけだし。」

「例えばだ!オレもしねぇよ!」


疑惑の視線を投げる水菜と秋。


「しないっつの。やるなら彼女にするわ。」

「彼女?いるの?」

「今はいないけど。黙ってればイケメンだからねぇ。昔は言い寄られる事は多かったね。」

「オレカッコいいから。」

「自分で言っちゃただのナルシストだよね。」

「「そーだね。」」

「お黙り!!」


この後、水菜と浩輔はつねり合いを始め、秋と順一は呆れたそうな。









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