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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
6/17

増強と消去

「…やっぱりいつもの子達だね。」

「だろ?この中何があるかメチャクチャ気になるんだよな。」


死の訓練所(水菜命名)の裏手。

時津及び水菜達しか使わない訓練所に何やらこそこそする人影が。


「おっ、あそこに窓見っけ。」

「…本気で覗くの?」

「あったりまえ。」

「着替えしてたらどうすんの。」

「そんときゃラッキー。」

「君の所、大丈夫な訳?」

「ダイジョーブダイジョーブ。うちの担当テキトーだから。そっちこそ大丈夫なのかよ。」

「まぁ、うちも大丈夫だけどね。」


どこからか持ってきた台に二人して乗る。

中では勿論、水菜と秋が本日も鬼の特訓をしている。


「特訓?」

「みたいだな。」


彼らが見ているとは知らない中の三人は。


「水菜さーん、スピードアップしますよー」

「ふっざけんなやー!!」

「はっほっ」

「はーい、秋さんもスピードアップしますよー」

「えぇ!?」

「はい、秋さんは1。水菜さんは5アップー。」

「んなっ!?」

「(頑張れミィ!!)」


文句言いながらも頑張る水菜でした。


◇◇◇


「はい、昼もまたここに集合してくださいねー」


笑顔で去っていった時津の後ろ姿を睨み付ける水菜。


「あのメガネかなり楽しんでるだろ…」

「やってる最中スッゴい生き生きとしてるよね。」

「…はぁ…」

「お疲れ様。」

「全くだ。」

「お昼食べに帰ろ。」

「…最近ご飯だけが楽しみになってる気がする…」


と、不意に感じた視線に水菜は振り向く。


「ミィ?」

「…ううん、なんでも。」


勿論その視線とは先程の二人だが、フードを被っていて今の水菜には見えていなかった。


◇◇◇


一方先に戻った時津。


「予想外で驚きですね。」

「二人共凄い伸び率ですね。」


自らのデスクに座り先程のデータを纏めていく。


「えぇ。秋さんは勿論、水菜さんにも驚きですね。」

「伸び悩んでましたからね。しかし最近は楽しそうですね。」

「秋さんは水菜さんにとっていい刺激、という所でしょうね。…そろそろ一回は計測しててもいい頃ですね。予定よりだいぶと出力も上げてますし。」

「そうですね。」


二人のデータを纏めながら時津は微笑む。


「そうそう、報告忘れてました。」

「はい?」


この後、部下の言葉に頭を抱える時津であった。


◇◇◇


そして、午後。

疲れぎみな二人。

あの二人もまた見に来ている。


「(成る程アレ、ですか。)さて、お二人共。この一週間よく頑張りましたねー。」


その言葉に水菜と秋はこの特訓が終わると思った。


「これから行うテストの結果如何でもう暫くの間一日にするか半日にするか決めようと思います。」


その言葉に水菜はがくっと頭を下げた。


「結果が良ければどうなるんです?」

「良ければ半日にしようと思います。」

「マジで!?やったー!」

「結果が良ければです。やる事はいつもと変わりません。ですが…」


と、何やら操作する時津

するとふっと体が軽くなった様な感覚を覚える二人。


「このテストでは制御なし、です。その状態で全力で行ってみましょう!!」


時津の言葉に二人は顔を引き締めた。


◇◇◇


水菜達が時津の説明を聞いている頃。

外の二人は変わらず中を覗いていた。

と、一人の肩が叩かれる。


「なんだよ。」

「何が?」

「何ってさっきから肩叩いてんだろ?」

「は?俺なんにもしてないけど。」

「はぁ?じゃあオレの肩は誰が…」


二人が振り向いた先には…


◇◇◇


『『ぎゃああぁぁぁ!!』』

「悲鳴!?」

「外、だよね!?」

「…おや、魔獣が出ましたか。丁度良いですねぇ。」


落ち着く時津を怪訝な顔で見る水菜。


「あんた何言って…」

「テスト内容を変更しますね。」

「時津さん?」

「現在、ここを覗いていた二人の子達が居ます。多分今の悲鳴はその二人でしょうね。」

「「はぁ!?」」

「水菜さんにとっても初めての魔獣です。二人でそれを倒して下さい。」

「ちょっ何言って!」

「早く行かないと、外の二人は死んじゃいますよ?」


時津の言葉に水菜は舌打ちした。


「場所はそこでいいの?」

「ええ。」


水菜が顎で後ろを差す。

時津が答えると二人は手を繋いで消える。

水菜の瞬間移動テレポートだ。


「さて、この出会いはどういう結果になりますやら。」


時津が持っていた端末画面を見る。

そこにはとある男の子二人のデータと、先程消えた水菜と秋が映っていた。


「さて、皆さん。データ採集の用意は出来てますか?」

『はい、班長。既に開始しています。』

「宜しい。…さて、私も久し振りに直での観察をしますか。」


画面はそのままに時津も外へ向かった。


◇◇◇


さて、外に出た水菜と秋。

魔獣自体はさして珍しくはない水菜も目を丸くする。


「これが魔獣…」

「いやいやいや、幾らなんでも大きすぎでしょ…」


二人の視線の先には、覗きを働いていた二人を追いかけ回す巨大な鳥。


「普通は小さいの?」

「この辺りのはあそこまで大きいものはいないね。こりゃ元に戻る必要があるかも…」


その言葉に秋は期待に満ちた目を水菜に向けた。


「今すぐはしないけど。」

「ちぇ。」

「さて、と。とりあえずあっちゃん金属出して。」


これくらいの、と言いながら水菜は両手を出して大きさを見せる。


「ん。」


即座に金属を出す。

けれども驚いたのは秋自身。

制御中は大きい物は出せなかったからだ。


「それから……………よし。」


水菜も秋が初めて見た時よりも正確に且つ早くに目的の物を仕上げる。

出来たのは槍。

だが然したる感動が見えない水菜に秋は疑問に思うが今はそれ所の話ではない。

水菜から槍を受け取った秋は魔獣を、水菜は二人を見る。


「よし。まずはあの二人、だね!」

「あの二人退けたら直ぐ行く。」

「ん!」


水菜は消え、秋も魔獣へありったけの力で走り込む。

が。


「いっ!?」


忘れていた。

そう、自分が制御を外していたことを。

見事な頭突きは魔獣の注意を自分に向ける事には成功したが、初めての魔獣にやはり恐怖はあるわけで。


「うっ…」

「グギャアァア!」

「ひあぁぁぁ!!」


物凄い速さで迫る嘴をなんとか避ける。

今の秋にはそれが精一杯だった。


「ミ、ミィー!早くー!」


◇◇◇


秋が見事な頭突きを喰らわせた時、水菜はへたり込んだ二人の後ろに現れる。

視線はずっと魔獣に向いている。

と、秋がつつかれ始める。

その様子を見て。


「逃げてどうする…」


と、突っ込みを悠長に入れていた。

その突っ込みを聞いた二人が座ったまま、水菜を見上げた。


「ったく…余計な仕事を…」


溜め息を吐き、一人の肩に触れる。


「!?」


だが瞬間移動テレポートが出来ず手を引く。

疑問に思うも、とりあえずもう一人の肩に触れ瞬間移動テレポートを使う。


「っ!?」


その瞬間、触れていないもう一人まで消える。


「何なのあの二人…」


予想した場所に二人がいることを確認する。

不思議な現象に眉を寄せるが…


「ミ、ミィー!早くー!」

「はいはい。」


秋の切実な叫びに再び魔獣を見る。


「いま…っ!!」


力を使おうとしたその時だ。

水菜に異変が訪れる。


「ぅ…あっ」


ドクンと鼓動が跳ねた。

その瞬間、凄まじい力が水菜から迸る。


「ミィ!?」


異変に気付いた秋は水菜の元へ駆け寄るが力の奔流に遮られ近寄れない。

魔獣も何かを感じたのか動かない。

その時、水菜の力の奔流が一気に強まる。

バチンという音と共に水菜のフードが弾かれ水菜の顔が露になる。

その表情は苦痛を物語っている。


「ミィーー!!!」


秋の叫び。

そしてその瞬間風に煽られ舞う水菜の長い髪が見て分かるほど急速に伸びていく。


「な、にが…」


秋が呟く。

と、水菜は頭を抱える。


「い…いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


衝撃が走る。

その衝撃に目を瞑り、開けた時にはあの魔獣にぽっかりと穴が空いていた。

そして水菜は…


「ミィ!!」


力の奔流が止まり、そのまま地面に倒れた。

急いで抱き起こす秋は目を見開く。


「水菜さん!秋さん!」


駆け寄る時津に秋が叫んだ。


「い、き…ミィが息してない!!」

「なんですってっ!?」


時津が急ぎ医療班へ連絡を取り、慌ただしくなる。

騒動の原因であるあの二人は展開に付いていけず、未だ恐怖もありへたり込んだまま。


水菜は息をしないまま、第六研究棟へと運ばれた。






寒さが戻り、春だというのに木枯らしが吹く…そんな日の午後の事だった。













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