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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
3/17

改めてよろしく

「よし、今日は第三研究棟の続き!!」

「その前に大事なお知らせがあるのでまだ消えないで下さいね。」


先日ちょっとした騒動により頓挫した散歩に意気込む水菜だったが、いつもとは違う待ったが掛けられた。


「お知らせ?」

「はい。本日より水菜さんと一緒に学ばれる…」


時津の後ろから見覚えのある人物が。


香能かのうあきさんです。」

「ほっ!!」

「よ、よろしく…」


変な驚きの声を上げる水菜に少女・秋はやや緊張の面持ちだ。


「と言うわけで本日朝の数学は取り止め、先に能力の授業から始めますね。良いですか、水菜さん。」

「数学じゃないなら良し。」


と、準備の為時津が別の部屋へ。


「えと、改めてよろしく…その…」

「水菜でいーよ。」

「あたしも秋で良いよ。その…実際は同い年位だって聞いたし。」

「なんだ聞いたのかー。」

「身体能力系も持ってるんだ?」

「伸び縮みするだけだけどねー。」

「そうなんだ。」

「ま、お互い珍獣同士仲良くしよう!!」

「ち、珍獣!?」

「あれ、そこは聞いてない?」


首を傾げた秋に水菜も首を傾げた。


「このクラス、滅多に見ない能力者を集めるらしいよ。だから私今まで一人だったもん。」

「そう…一人?」

「そ、一人。全世界で片手で数えられる位に少い三個以上の能力持ちだから。」

「三個以上のって…」

「昨日見せた念動力テレキネシス、瞬間移動…っていうか私のは空間移動だけど。それから身体伸縮とその他。」

「その他って…」

「それはその内分かるよ。だって今日から一緒に居るんだし。」

「そうだね。」


そうしている内に時津が戻ってきた。

とてとてと時津の元へ行く水菜の後ろ姿に秋はある会話を思い出す。


『じゃあお姉さんはどんな人だと思う?』

「まさか…」

「あっちゃーん?」

「あ、うん。今行く!っていうかあっちゃん?」

「アダ名。…イヤだった?」

「ううん!大丈夫!」


秋は気付いた。

水菜が女王だということに。

だが今はただ、仲良くなろうとそう思っていた。


◇◇◇


さて、お昼過ぎ。

二人はお弁当を持って外を歩いていた。


「風が気持ちいいね。」

「うん。天気もいい感じに晴れてるし、この下で食べる中華まんはまた格別なのだよ!」

「お弁当が中華まん…」


そう、秋が持つバスケットの中には水菜達専属(らしい)シェフが作った特製の中華まんが。


「中華好きなの?」

「美味しいのはなんでも好き!」

「つまりは好き嫌いが無いんだ。」

「いや、嫌いなものはあるけど…美味しく食べれるなら大丈夫。」

「それはそれで凄い事じゃ…」


そうして二人は川縁の土手に腰を下ろす。


「こんな場所があったなんて。」

「春はここが一番!夏はね湖があるからそこなのよ。」

「へぇ。外に出ちゃダメって言われてたから…」

「魔獣が良く来るからねー。」

「魔獣?」


魔獣とは、人以外の力を持った動物の事だ。


「あたし…外の事知らない…」

「うん、外の事は教えないもんね。」

「でも水菜は知ってるんでしょ?」


中華まんにかぶりつきながらコクンと頷く。


「私、たまーに退治しに行くから。」

「え!?」

「主に生産系能力の研究で、なんだけどね。この辺りの魔獣は水と植物の生産操作するんだよ。」

「へぇ。」

「鉱物の能力は見たこと無いなぁ。」

「水菜はどうして分かったの?」

「ん?私、鉱物操作持ってるから。」

「本当に色んな能力があるんだね。」

「うん。自然の力が多いね。でも生産系じゃないから困るんだけど。」


その言葉に秋は首を傾げた。


「だって植物なら種とか持ち歩かなきゃならないし。」

「そうなんだ。それでそのウサギリュック?」

「うん。」


それはいつも水菜が背負うウサギの形のリュックだ。

後ろから見ればリュックに水菜が隠れてしまう程の大きさだ。

何も知らない人から見ればぬいぐるみが動いているようだ。


「はい、お茶。」

「はりはほー」


まだまだ聞きたい事がたくさんあるという秋の様子。

だがそれは水菜からは触れないし、言わない。


「ん?」

「ねぇ、どうしていつもフード被ってるの?」

「…力の発言で見た目変わったから。」

「見えるの?」

「見えるの。透視…というか目を瞑ってても辺りの様子って目を開けてる時と同じ様に見えるから。」

「透視とは違うの?」

「違うみたい。えっとなんだっけ名前…」

「覚えてないの?」

「ありすぎて覚えるの面倒臭い。」

「なるほど…」


こうしてのんびり過ごす。

そういう時間がここに来てからは無かったと秋は思い返していた。


◇◇◇


「水菜さんの能力、ですか?」

「はい。操作系の能力者って言ってますけど…透視っぽいのって明らかに操作系の能力じゃないですよね?」


午後。

身体検査の為、水菜とは別行動の秋は時津に自分の疑問をぶつけてみた。


「それは…私達にも分かりません。強いて言うならば、水菜さんの無限大な可能性ですか。」

「へ?」

「あなたにも言えますがね、誰しも同じ系統の能力を持つとは考えておりません。その証拠に秋さんの能力は筋骨増強と鉱物生産です。全く違うでしょう?」


言われて何となくだが納得する秋。


「そう言ってしまえば、人間の可能性というのは無限に広がる。どうして水菜さんがあれほどの能力の数があるのか、興味は尽きませんが。彼女自身にも気付いていない能力があるかもしれません。」

「あれ以上…」

「ですが、それはあなたにも言えますよ。あなたにもまだまだ隠れた能力がまだあるかもしれませんよ?」

「まさか。」

「いえ、冗談ではありませんよ?ここに来た頃の水菜さんはたった一つの能力でしたから。」


その言葉に驚く秋。


「最近は確認されてませんがね。最初の頃は日が経つ毎に増える能力に驚く毎日でしたよ。まぁ、楽しんでたのは私だけですがねぇ。」


当時の事を思い出し笑う時津。

それに秋は水菜の言葉を思い出しす。


『珍獣同士仲良くしよう!!』

「(時津さんはともかく他の研究者はそう見るのかな?)あ、だから女王なのか。」


それはきっと畏怖の念でも敬意の表でもなく。


「(侮蔑、だったら…悲しいな…)」


自分では耐えられないような事も水菜は受けていたのかもしれない。

そう思って秋は眉を寄せたまま目を閉じた。




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