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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
2/17

女王の日課

水菜の日課。

それは施設内の散策だ。

勿論能力の練習も兼ねている。


「よし、今日は第三研究棟の探索をしよう。」

「その前に数学の勉強ですよ。」

「…」


意気込む水菜に声を掛けたのは彼女を「研究」する研究者、時津ときつかける

にっこりと笑う彼は研究者達からは人格者などと誉れているが…


「その手に持っているのはなんですか。」

「水菜さんの為に改良に改良を重ねた最新版の制御装置です。」

「へぇー。で、なんで手錠の形なんでしょう。」

「勿論、お勉強していただく為に。」


無言の睨み合い。

だが。


「捕まってやるかぁ!」

「あっ!!」


時津の弱点は運動が出来ない事。

即座に瞬間移動テレポート出来る水菜に軍配は上がる。


「くっ次こそは!」

「班長、遊んでないで仕事してください。」


一方、無事に逃げ切った水菜。


「ふぅ、トッキーめ…あんな物を作るとは…っていうか手錠ってどうかと思うけど。」


目的通りに第三研究棟の廊下を歩いている。


「ふむふむ、ここはどっちかっていうとのんびり空気ですな。」


などと独自の解釈で感想を呟いている。

そんな独特な独り言の世界を打ち破る大きなため息。

辺りを見回すも誰もいない。

するとまたため息。

ふと見上げた窓が開いている。

その窓に(小さいから)飛んで窓枠にしがみつき外を見れば、そこに三角座りで俯く人を見つけた。


「はぁ…」

「どしたの?」

「もうすぐ能力のテストだから…ん?」

「ん?」


声を掛けられた事に首を傾げた誰かが振り返る。

それは見覚えのある顔だった。


「あなた、この前の…」

「あの時のお姉さん。」


そう、それは水菜の噂をしていた二人の内の一人だった。


「テスト嫌なの?」

「…というかあたしの能力が嫌い…」

「どうして?」

「テストの度に嘲笑されればね…」

「なんで?」

「あたしの能力は身体能力を上げるだけだから…」

「そう?それは凄い事じゃないの?」

「…普通ならそうなんだろうけど…」

「私は身体能力向上の能力はないから羨ましいと思うけど?」

「あたしは君が羨ましいよ。瞬間移動テレポートなら…」

「ん、んー…それはただ単に隣の芝生が青く見えるからじゃないの?」


水菜の言葉に少女は水菜を見た。


「どういう…」

「私は身体能力向上系の能力はないから早く走れたり出来ないから羨ましいな、ってとこ。私は操作系の能力者だからね。」

「操作、系?」


少女は初めて聞くような表情を見せた。

水菜は窓を乗り越え(足が付かなかった為着地は少女が抱き下ろしたが。)少女の隣に座る。


「能力は単純に大まかに二つに分類されるのよ。一つ、操作系。一つ、向上系。まぁ、うちの担当曰くはもう一つあるらしいけど。」

「へぇ。」

「操作系の能力者は動かしたり文字通り操る。でも身体向上系の能力者は少ないんだって。だから操作系の能力より解明が遅いのだってこの前聞いたよ。」

「そ、そうなの?」

「うん。そっちのが実は貴重なんだからお姉さんは胸を張ればいい。それに他人を嘲笑う者は…」

「え?」

「ううん、なんでもないよ。」


何かを企んだ様に水菜はニヤリと笑う。

そして言う。


「私、お姉さんのクラス見てみたいな。」


その言葉に驚く少女。


「でも、急にとか…テストだし…」

「だいじょーぶだいじょーぶ。さ、行ってみよー。」


強行する水菜に何も言えない少女は、それでも少し笑った。


「ぐぬ、あ、上がれないっ」

「(瞬間移動テレポートすれば良いのに…)」


結局は少女に抱えられて廊下に戻る水菜だった。



◇◇◇


「ここなら多分見つからないから、隠れててね。」

「あいあい。」


少女のクラスへ連れて来られた(むしろ強引に付いてきた)水菜。

広い部屋に積み上げられた大きなブロックの後ろに隠れる。


そうして始まった能力テスト。

どうやらこのクラスは全員が集まって担当がテストを見るようだ。


「(なんてアナログな。)」


などと水菜が思っているとあの少女が。

どうやら少女の能力は筋力の強化というもののようだ。

だが、水菜は少し驚いた表情を見せる。


「(あれは…)」


と、周囲から漏れる小さな笑い声。

それから担当の嘲る笑い声。

それに俯く少女。

それに目を鋭くさせるのは勿論水菜。


「さてと、行動開始ですか。」


そう言うなり水菜は積み上げられたブロックの上に瞬間移動テレポートする。


「全く君は進歩が無いねぇ。」

「っ…」

「ただ、跳べるだのなんだのはやはりこの程度ですかね。」


強く拳を作る少女。

その時だ。


「その程度しか分からないヘボ研究者にごちゃごちゃ言う権利は無いと思いますけどねぇ。」

「え!?」

「ん?なんだね君は!」

「ヘボ研究者に名乗る必要は無いと思いますけどねぇ。」


はっきり見える水菜の口元は笑っているが、フードに隠れた目元は全く笑ってなどいなかった。


「分かっていない、だと?失礼にも程が…」

「失礼にも程があるのはどっちだか。自分の担当の能力の把握すら出来ていないあんたに礼も何も無いね。」

「なん、だと!?」


どうやら気が短いようだ。

だが水菜はそれを無視して少女に話し掛けた。


「ねぇ、お姉さん。確かにお姉さんは身体能力向上系の能力者だけどさ。」

「え?」

「もう一つ、能力があるの気付いてない?」

「あたしに、別の…?」

「ふん、何を戯けたことを…」

「んじゃとりあえずやってみよー。」


と、いきなりブロックの幾つかが消えた。

と、思えば空中にまた現れる。


「凄い…」

「たまにはさ、思いっきり何かを殴ってみよー。」

「えぇっ?」

「ゴー!」

「えぇぇ!?」


水菜の合図に合わせてブロックが少女に目掛けて飛んでいく。


「ちょっだめー!!」


少女は無意識に拳を前に突き出した。

いわゆるパンチだ。

その瞬間、ゴッ!という音と遅れてドゴッ!という音が聞こえた。

静まり返る部屋の中。

恐る恐る目を開いたら少女が見たのは穴の空いたブロックだった。


「え…え?」


訳の分からない少女にパチパチと音が降ってきた。


「え?」

「おめでとー。お姉さんはもう一つの能力を見つけたねぇ。」

「な、に?」


まだ状況が飲み込めない少女に、水菜は穴の空いたブロックに現れる。

そしてペシペシと穴を叩く。


「これ、お姉さんがしたんだよー。」

「あ、あたしが?」

「そ。ついでに言えばあれもそう。」


と、ブロックごとふよふよと空中を移動し少女の視界に穴の空いた壁が入る。


「穴の空いた理由はこれだねぇ。」


水菜が手をタクトの様に振る。

と、穴から出てきたのは手のひらに乗るほどの小さな塊。


「これ、は…」

「んー。金属。」

「金属?」

「おや、珍しい能力者が居ましたね。」

「?」


と、いきなり割って入った声に全員がそちらを見る。


「トッキー遅い。」

「と、時津…?」

「水菜さん、ここから第一研究棟までどれ位あると思ってるんですか。」

「一瞬。」

「それはあなたみたいな瞬間移動者テレポーターだけです。」

「め、珍しい能力者…だと?」


少女の担当が声を震わせながら時津に問う。

時津は眼鏡を押し上げ言った。


「えぇ。操作系の能力者でもなく、向上系の能力者でもない。殆ど確認されなかった生産系能力者。それもあなたは金属、と言うより鉱物を生み出せる様ですね。」

「生産系…?」

「はい。主に体内でその物質を生成し体外へ放出する。この度の事はあなたの身体能力向上により弾丸の様に飛んだのでしょう。いやぁ、いい人を見つけましたね、水菜さん!」


眼鏡の光る時津に水菜は少し引いたとか。


「あ、今回の事は総帥もご覧になってましたのでなにかしらの沙汰があるでしょうね。さて、私も帰りましょうか。」


言いたいことを言って戻っていく時津。


「…鉱物、持ってった…」

「抜け目ねぇなぁ。」

「本当にあたしが?」

「他に誰もいなかったけど?」

「あた、しの…能力…」


少女の様子に水菜も微笑む。



彼女らの後ろには呆けた他の能力者と魂の抜けた担当研究者がいるだけだった。




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