プロローグ
西暦20XX年。
突如として地球上の生命の常識が変わる。
太陽から大量の放射線が降り注ぎ、地球の生命体…特に人間への影響が大きかった。
まず、一番大きな特徴は人間の全てが「若返った」のだ。
これにより、「老人」等という括りは無いに等しいものとなる。
そして、もう一つの大きな特徴。
それは全ての生命体が何らかの力を発現する事。
いわゆる超能力というものの存在が当たり前となった。
さて、困ったのは各国の国を治める立場の人間達。
思うように民衆の混乱の制圧が叶わず、その隙を付くように現れた能力者の保護と育成を謳う幾つもの団体。
放射線の及ぼす被害を提示し続けた各国の研究機関が、全国の外見年齢十代の人々を次々に取り争った。
国家は次第に力を無くし、国という括りは残ったものの国家は形だけとなり、実質の権力はそれぞれの研究機関が持つようになった。
それはどの国でも同じで、我々が住むこの日本も例外ではなかった。
ただ、他の国では大小様々な機関があるのに対し、日本はきっかり4つに別れた。
北海道を拠点とする「黒」、本島の「白」、四国地方の「黄」、そして九州と沖縄諸島の「赤」だ。
本島の真ん中辺りに建てられた県を四つほど覆う程の巨大な建造物は白の研究機関。
その中に何千万という人間が暮らしている。
その半数以上が十代へと若返った人達だ。
そして日夜自らの能力向上に励んでいる。
しかし、いつの頃からかある噂が流れ出す。
各機関のトップとも言える能力者の存在だ。
黒の帝王
黄の伯爵
赤の騎士
そして白の女王
だが何故噂なのか。
それはまだ誰もその姿を見た者がいないからだ。
そんな噂が流れる白の機関。
その白の女王こそこの物語の主人公だ。
「ねぇ聞いた?あの噂。」
「なに?」
「ほら女王の。」
「あぁ。でも見た人いないんでしょ?」
「そうそう!どんな人何だろうね?」
「さぁ?」
「じゃあお姉さんはどんな人だと思う?」
「え?」
雑談を交わす二人の少女に割って入る一人の子供。
白い制服が支給されるここでは個々の差はあれど殆どが同じデザイン。
しかし割って入った子供は他にはないフードがついていて、それを目深に被っている。
長い髪が唯一その子供が女の子だと知らせていた。
「お姉さんはどんな人だと思う?」
また同じ質問。
それに二人は顔を見合わせる。
「どんなって言われても…ねぇ?」
「特徴が噂になってる訳じゃないし…」
「ふうん。」
「ていうか…あなた…」
少女達が女の子に再び顔を向けるが既にそこには誰もいない。
「いない?」
「瞬間移動者だったのかな?それにしても変な子だったね?」
「…そう、だね。」
そうして二人はまた雑談を始める。
そこから離れた屋外。
緑がたくさん残された林に先程の子供が姿を現す。
「ふうん。存在だけ、ねぇ。」
林の中を歩きながら微かに見える口元が弧を描く。
「ま、誰も気が付かないだろうねぇ。女王がこんな…」
風が吹く。
その時にフードが煽られ落ちる。
露になったその目は緋い瞳。
笑みをこぼしたまま女の子は続けた。
「こんな子供の姿だって。…普段は、だけど。」
そう呟いてまた女の子は消えた。
この少女こそ白の女王、紫柳院水菜。
この物語の主人公である。




