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白の女王  作者: 翠月三月
記憶の鼓動
16/17

模擬試験Ⅱ

会場の中は混乱状態だ。

一人、一人と怪我人が増えていく。

そんな中、例の能力者も見付からず水菜は心の中で舌打ちする。

その時。


「うわぁぁ!」

「はい、また一人っと。」


倒れた生徒を見つけ、追撃する魔獣に電撃を浴びせる。

そして倒れた生徒の側に降り立つ。


「(しっかしこれだけ検索しても引っ掛からないのはおかしいね。何か別の能力?)」


と、検索をしている為フードを取り容態を確認する。


『夏弥、一人送るよ。』

『はい、いつでもどうぞ。』


そしてふと視線を感じて顔を上げた。

それは先程のエリートコースの連中の視線では無かったから。


視界に入ったのは二人。


「(ったく、こんな中でポケッと突っ立ってたら危ないでしょうが。)」


よく見るため、顔を確認する。


それはあの日一瞬見掛けた女の子。

だが、それだけではなく。

水菜の脳裏にノイズの掛かった声と映像がフラッシュバックする。


「っ!?」


少女もまた驚いて目を見開いている。

鳶色の髪に、水菜とは正反対の蒼い瞳。


知っている。

自分はこの目の前の少女を知っている。

そして二人の脳裏に流れたのはあの曲と…


「お…ねぇ…ちゃん…?」

「も、も…か?」


幼い自分ともう一人、自分に花を渡す可愛らしい年下の女の子。


「うっ!?」

「っ!!!」


ズキンッと頭が痛くなり一瞬目を反らす。

その瞬間、自分も体験したあの現象が。


「ちっ!!」


痛む頭を押さえながら力を使おうと手を振る。

だがその手は少女と一緒にいた少年に阻まれる。


「おい、お前!アイツに何したんだよ!!」

「…離しなさい。」

「答えろよ!アイツにっ」


尚も続ける少年を力で捩じ伏せる。


「押し問答をしている場合では無いのよ。こーすけ!順くん!今すぐ来て!!…夏弥もちょっとこっちに来てもらうよ。」


上空で既にこっちに来ていた二人と夏弥を力で飛び寄せる。


「ミィ、これは…」

「こりゃ誰かさんを思い出すなぁ。」

「全部後よ!浩輔、全力で消去イレイザー掛けて。」

「りょーかい。」


水菜がしっかりと浩輔の名を発音した事もあり、顔を引き締める。


「終わったら、増幅ブースターしながらの癒し《ヒーリング》お願い。」

「分かった。」

「水菜は?」

「回り見てくる。今遼がこっちに来てるから大丈夫だと思うけど。…それからそこのバカはそのまま。後でその子と一緒にうちに連れてきて。」


水菜の言葉に頷く二人。


と、辺りは少女の力の奔流…暴走状態に騒然となる。

そんな中、雷が走る。


「ボサッとするんじゃない!まだ戦えるなら敵から目を離すな!!」


水菜の渇に動きを止めていた生徒達が魔獣と向き合う。


「ちょっとトッキーも探すわ。」

「ん。」


丁度力の奔流が消えるのを確認して。

水菜はフッと消えた。


◇◇◇


「トッキー。」

「あぁ、水菜さん。どうしました?」

「…記憶、戻るかも。」

「!?本当ですか!?」

「糸口見つけた。それと珍しい…珍獣もね。」

「珍獣、ですか?」


先程の少年を思い出し、そう言えば力を解いていないと思い至るが敢えてそのままにする水菜。


「ノイズの掛かった声と映像と曲がフラッシュバックした。さっき会った女の子…初めて会った筈なのに私あの子の名前と顔が浮かんだ。あの…空白の記憶の中に…」

「分かりました。その件は後にしましょう。」

「分かってる。あとあの子の検査…お願いね。」


水菜のその一言に時津は目を丸くしたあと、その目は険しくなる。


「…僕はあまり戻って欲しくは無いんですがね…」


その瞳とは裏腹に声はとても切ない。

だがそれもすぐに消える。

そして何かの気配。

それにさしたる驚きも見せないまま時津は眼鏡を上げた。


「…始まるな。」

「ええ。そっちは頼みましたよ。」

「…あぁ。」


フッと消える気配。

時津も、何も無かったかの様に歩き出した。


◇◇◇


「何とか収集付いてきたわね。」

「だな。」


粗方落ち着いてきた会場内に水菜と浩輔がため息を吐いた。

辺りを確認する水菜の背に、浩輔は少しだけ、胸の内に閉まっていた思いをぶつけてみる。


「…なぁ、ミィ?」

「何?」

「お前、何か隠してねぇか?」

「っ!?」


振り向かない水菜。

けれど浩輔にはその肩が小さく揺れるのを見逃さなかった。


「時々、お前が消えるんじゃないかって…そう思う。さっきの女の子を見てた時の表情とか、そういうの。」

「…」

「それは…オレ達に言えない事なのか?秋だって、順一だって気付いてる。」


ギュッと拳が握り締められる。

その時、漸く水菜が振り向いた。

その表情は無に近い。


「っ…」

「分かんない…」

「は?」

「分かんないのよ、私にだって…何が正しくて、何が違うのか…何が本当で何が嘘なのか…どれが本当の自分なのか…」

「ミィ…?」

「ねぇ…もし、さ。…超能力がまだなかった頃にさ…」


消え入りそうな声、泣きそうな顔。

その表情に浩輔はただ言葉を失う。


「…私が超能力使ってたって、言えば…どう思う?」

「なっ!?」


浩輔の返事も聞かないまま、水菜は消えた。


「…そんなの…クソッ!!どう思うとか…ねぇだろ…オレ達は、」


自分の手を見つめる浩輔。


「…仲間、だろ?」


どうしようもない感情に、浩輔はただ髪を掻き上げ握り締めた。


◇◇◇


試験も終わり、全員が自室へ戻される中、水菜達は第六研究棟の病室に来ていた。


『ねぇ、ミィと浩輔君何かあったのかな…』

『そうだね…』


壁に持たれて眉を寄せている浩輔と、少女を見つめて何か考え込む水菜。

浩輔はずっと水菜を見ているが、水菜は全く浩輔と目を合わそうとはしない。

と、水菜と同じ様に何の前触れも無く少女が目を覚ます。


「こ、こは…」

「第六研究棟の病室よ。」

「っ!!!」

「そんな驚かなくっても良いんじゃ無い?とって食いはしないんだし。」


ふう、と背もたれに凭れる水菜。

そして腕を組み、少女を見詰める。


「…桃華。」

「…っ!」


ビクッと体を震わせる少女。

他の皆は水菜が少女の名を知っている事に驚きを隠せない。


「ミィっなんで!」


と、秋が立ち上がろうとするのを浩輔が止めた。

それに水菜の背を見て大人しくなる秋。


「そう、如月きさらぎ桃華ももか。二月に産まれたから、桃の花に因んでつけられた…」

「…アクアマリン…」

「…?」

「3月の誕生石のアクアマリンの水と…菜の花が咲いてた…だから水菜…紫柳院水菜…」


二人のそのやり取りに困惑を隠せない。

それは勿論連れてこられた少年も同じで。


「…はぁ、全く…それだけね。」

「え?」

「私が思い出せたのは名前と顔、それから菜の花を持つ手だけよ。」

「…わたしは…いつも本読んでるお姉ちゃん、って呼んでた人の…その名前と顔だけ…」

「そうね。やっぱりそれは十歳前の事。」

「…」


水菜の言葉に全員が目を丸くし、少女…桃華はコクンと頷いた。


「…あともう一人…(本当はアイツにも聞きたいけど…)…心当たりが無いわけではない。でもその前に。」

「?」

「あんたとそこのバカ。今日から特別クラスだから。」

「「っ!?」」

「文句は決めたトッキーと総帥に言って。…桃華。」

「はっはい!」

「ゆっくり休みなさい。」


そう言って水菜は皆を通りすぎて病室を出ていく。


「…せめてこの子の拘束位解いてあげても良かったんじゃ…」


フガフガ言う少年とそう呟く秋。

それに浩輔以外の全員が頷いた。


と、浩輔が今まで水菜の座っていた椅子をクルリと回して座る。


「…」


そのついでにバシンと少年の頭を叩く。

すると少年の拘束は消え、ベシンと床に倒れ込んだ。


「いってー…」

「たっくん!」

「何なんだよ…あんな化けもっ!?」


少年が言おうとした言葉を、手で口を…と言うより顔を鷲掴みにして止める浩輔。


「それ以上言ったらお前もそこのベッドに寝かしてやるよ。」

「浩輔!!」


止めに入ろうとした順一を夏弥が制した。


「えーと…桃華ちゃんだっけ?」


浩輔の問いにビクビクしながら頷く桃華。

それには笑う浩輔。


「大丈夫、何にもしないよ。ただ少しだけ聞きたい事があるんだ。」


ポイっと少年を投げ捨て桃華を見る浩輔。


「君も、10年以上前から能力使えた?」


その言葉に全員が止まる。


「何言ってんだよ!んな事があるわけねぇだろ!そうだろ!?」

「…」

「その様子は使えてたんだ。そしてそれを隠して生きてきた?」


それにコクンと頷く桃華。


「やっぱりそうか。」

「浩輔、そろそろ僕達にも分かるように説明してほしいね。」


遼の言葉に浩輔はチラリと後ろを振り向く。


「さっきミィが言ったんだよ。もし10年以上前から能力使えたらどう思うってな。」

「っ!」

「それから、何が本当で何が嘘なのか…どれが本当の自分なのか分からないとまで言ったんだよ。その言葉、君には分かるか?」


もう一度桃華を見る。

桃華も辛そうな表情を見せた。


「…分からないんです。本当に…十歳前の事…思い出そうとすれば変にモヤがかかったみたいになったり…体験した事のない記憶が甦ったり…記憶があるのに、自分の記憶なのか分からない…本当に自分がずっとそこに居たのか…全然分からない…今の自分でさえ本当にずっと「わたし」という「自分」なのか…」


震えだした桃華をポンポンと撫でる。


「も一つ、良いかな?」


浩輔の言葉に今度は桃華が目を丸くした。


◇◇◇


「…お姉ちゃん、ねぇ。」


そう呼ばれたのは本当に久し振りだと、自室で月を見上げる水菜は自嘲気味に笑った。

その手には十代には相応しくない琥珀色の飲み物。

と、シュンと音がするも水菜は顔を向けない。


「何てもの飲んでんのよ。」

「…お茶。」

「違うでしょ。」


入って来たのは秋。

だがその手には何故かやっぱり十代には相応しくない一生瓶。


「そっちこそ何持ってんのよ。」

「水。」

「違うでしょ。」


そっくりそのままのセリフにお互いがフッと笑みを溢す。


「聞いたよ。」

「…そう。で、感想は?」

「…嫉妬した。」

「は?」


思ってもみない言葉に思わず秋を見る水菜。


「だって、この中で一番長く一緒にいたのによりによって浩輔君なんだもん。だから嫉妬。んで自棄水。」

「…だから水じゃないでしょ。」

「…昔の事はさて置き、あたしはどんなミィでもあたしが会って接してきたミィを信じる。」


その言葉に水菜は喉を詰まらせる。


「それは皆も一緒に、なんだよ。」


秋に促され入り口を見れば、月明かりに照らされてはみ出した服が浮かび上がっていた。


「ね?」

「…お節介共め…」


水菜の言葉にそれぞれがやはり手に十代には相応しくない飲み物を持っていた。


「浩輔は入らないわけ?」

「オレはいない。」

「あっそ。んじゃ…浩輔だけ仲間外れって事で。さあて久し振りに飲むかぁ。」

「…っ…………だぁぁ!仲間外れとかヤメロ!!」


と、ばっちり目が合う水菜と浩輔。


「…バーカ。」


ふっ、と笑って言った水菜にホッとする浩輔。


『…ありがと。』

『おぅ。』


それからはいつも通りに戻る。


「そう言えばあのクソ生意気なガキンチョ忘れてた。」

「そんなこったろーと思ったぜ。戻しておいてやったよ。」

「ん、ありがと。」

「その後で秋に黙らされてたけどね。」

「は?」

「だって…」

「今は桃華ちゃんの隣で夢の中だよ。」


その言葉に半眼になった水菜だった。























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