初めての強敵と謎の能力
「出来ましたよー!!」
あれから一週間。
研究室に籠っていた時津が漸く出てきた。
「おお、トッキー久し振り。」
「生きてたか。良かった良かった。」
「「ミィ…」」
「笑い事じゃないんだよ。」
「研究のし過ぎで一度倒れられてますから。」
「「…」」
目の下に隈を作っている時津に秋と順一はかなり心配したとか。
「これが最新の通信装置ですね。」
出されたのはピアスと腕輪。
「ピアスって…」
「あぁ、これは水菜さん用の物です。」
「ピアス穴空いてんの?」
「空いてる。」
ほら、と髪を掻き上げるとそこには…
「3つも空けてるの!?」
「んにゃ、2つ。一番上のはカフスだよ。」
「イケイケだな。」
「表現古いわ。」
「まぁとにかく付けてみてください。」
言われて付ける水菜。
「(ピアス付けるだけでなんでそんなに色っぽいかな…)」
そう思った秋。
それは秋だけではなく皆が思った事だが。
「ん。」
「では、手を横にスライドしてください。」
「こう?」
スッと動かすと水菜の前にふっと画面が浮かんだ。
「「「「「おぉ!!」」」」」
「凄いですわ!」
「右端のそのボタンを押してみてください。」
「これね。」
水菜の指先が右端の丸いボタンに触れる。
すると画面が変わり何やら文字が浮かぶ。
「…トッキー?」
「はい。それからそれを押すと。」
言われた通りに押すと時津からピピピという電子音が。
それを聞き、時津は自らの左耳に触れ部屋を出る。
『どうですか?』
「!めっちゃ聞こえる!」
「そうなの?」
「俺達には聞こえてないけど?」
と、時津が戻ってくる。
「当日はかなりの混雑も予想されます。なのでとても聞き取り易くしました。ちなみにこれは念話の力を移して色々したわけですので、別に喋らなくても対話が出来ます。」
「へぇ、念話もいるんだ。」
「ええ。私が。」
その言葉に全員が時津を見る。
「おや?言ってませんでしたか?」
「いや聞いてない。」
「というか僕も知らなかったですけど。」
「君達の第七は主に被験者が対象ですからね。とは言ってもいきなり念話で話すわけにもいきませんしね。」
「確かにそうだけど。」
こほんと時津は咳払いをする。
「基本的にはさっきの操作で繋がる様になっています。また、最初の画面に一斉送受信のボタンがありますのでそれを押せば全員と同時に話せます。」
「おー!」
「それから、これから先皆さんには外に出て魔獣研究に行くことが多くなります。なのでマップも付けてみました。以前の携帯の様にネットにも繋がりますし、任意で思い思いのアプリも作れるようにしています。まぁその時は開発班に顔を出して貰えば皆がレクチャーしてくれますよ。」
「そういえば忘れてたけど一応ここ開発班付きのクラスだったね。」
「はい。それから自分で決めた動作でコールを掛けれる様にしていますので、一々画面操作しなくとも良いようにしています。」
そうして他の研究員がそれぞれに通信機を渡していく。
「色は私個人の皆さんに対する印象に基づいたものなので気に入らなければ言ってくださいね。」
「あたしはオレンジ?」
「秋さんのお名前ですね。」
「わたくしはパステルカラーのグリーンですのね。」
「緑は癒しの象徴ですからね。ちなみに第六研究員及び回復班はみな差はあれど緑です。分かりやすいでしょう?」
その言葉に笑って頷く夏弥。
「僕は青ですね。」
「青は知的なイメージが強かったものですから。」
「という事は僕の班も…」
「はい、皆さん青です。」
まぁ妥当かな、と遼は笑う。
「俺黄色?」
「まぁ能力は火なので赤に、と思ったんですけど浩輔君に赤を当てちゃいましたし。」
「まぁ黄色好きだから良いけどね。」
さして気にしていない風の順一。
それに浩輔は時津に問う。
「んでなんでまたオレ赤なわけ?」
「何となくです。」
「あ、そう…」
さらっと答えた時津に半眼になる浩輔。
だが嫌いでは無いらしくそのまま装着する。
「私は?なんで透明な訳?」
唯一不満そうなのは水菜だ。
それに時津は笑って答えた。
「いやぁ、女王の名にふさわしい物をと思ったらダイヤくらいしか思い浮かばなかったものですから。」
「あ、そう…てかそんな理由か。」
だが外そうとはしないので案外気に入っているようだ。
「私の念話は距離制限がありませんので大抵は繋がる筈です。」
「そうなんだ。」
「ええ。それと予備的な…と言うより第六研究員向けに作った機能もあります。マップを開いて下さい。」
全員がマップを開く。
と、画面にそれぞれの名前と何やら色の付いたマークが。
「これは?」
「昔で言うところのGPS機能ですね。どこに誰が居るか。勿論オフにも出来ます。これを入れるのはまぁ外に出ている時位ですね。色はその人の状態です。皆さん今は何も無いのでグリーンですね。これが軽度から動きが制限される程の怪我などはイエロー、動けない状態になるとレッドになります。」
「まさに回復班向けですわね。」
「はい。遠くになればなる程瞬間移動者が必要になります。その時は水菜さんの出番ですね。」
「そーだね。」
「とりあえず主要な機能はこれくらいですね。後は各々カスタマイズしてください。」
と、大きな欠伸を溢す時津。
「今日はもう寝たら?」
「いえ、まだまだ調節したいものもあらますから。皆さんは外に出るんですか?」
「そうだね。この辺りのは慣れてきてるからもう少し足を伸ばそうかと思ってる。」
「では気を付けて下さいね。あ、ちなみに倒した魔獣のデータが通信機に取り込まれますのでどんどん倒して下さい。貯まったデータは開発班に送られてデータ整理して閲覧出来るようにしますので。」
見ればモンスターデータと書かれたアイコンがある。
試しに押せば。
「なになに?クラップス?」
「これ、川辺でよく見掛けるやつじゃん。」
「魔獣データだけは全研究施設共通ですが、これで見れるのは皆さんが自分で倒した魔獣だけです。分布も同じく。」
「ふうん。なんかゲームっぽくて面白いじゃん。な?」
浩輔の言葉に全員が頷く。
「へぇ、あの鳥コンドラって言うの。」
「あ、これいつも倒す植物の魔獣だ。」
「ヘラクサ?名前見たままだね?」
「あのタヌキモドキまんまタヌキモドキってなってる。」
「本当ですわね。」
とりあえず楽しげではあるので、それに嬉しそうに頷いて時津は部屋を出る。
「いやぁ、やはり楽しめる授業は良いですねぇ。この調子で数学も出てくれたらなお良いんですが。」
相変わらず数学の授業だけはクラスルームに木枯らしが吹いている。
「どうしたら数学を学んでくれますかねぇ。」
色々終わらした時津の頭の中は、再びこの問題に戻るのだった。
◇◇◇
「どう、聞こえる?」
『うん。大丈夫!』
『でも念話に慣れるまでは喋らないと話せないね。』
『だな。でもそれって一人言言いまくってる悲しいやつだよな。』
浩輔の言葉に全員が笑う。
「ま、それも練習あるのみってね。」
『ですわね。マップの方も問題ありませんし。』
「よし、んじゃ今日は一人でノルマ10匹だね。」
『皆あまり無理しないでね。ここらは多分僕達が初めてだから。』
遼の言葉に全員が頷く。
「それじゃ行きますか!」
水菜の掛け声の後、全員が各々マップを見ながら動き始める。
『こっちは崖だな。』
『俺滝見つけた。』
『あたし洞窟!』
「洞窟とはなかなか良いねぇ。」
『わたくしは広い湖を見つけましたわ。』
『…僕はキノコの群生地見つけた。』
『『キノコって!!』』
『ミィはー?』
「…大海原?」
秋の問いに水菜は首を傾げながら言った。
『『『は?』』』
『あら?マップにはまだ陸地が続いてますわよ?』
「いや、うん。それは私も確認した。けど目の前にあるのどう見ても海なんだよね。」
と、マップがグイーッといきなり動く。
『水菜、もしかして瞬間移動したかい?』
「ん?うん。したよ。短く。」
『多分それでじゃない?普段小さい方の感覚だろ?』
「…あ。」
遼の指摘にそうだと気づいた水菜。
どうやら大きくなった水菜の移動速度にマップが付いてこれていなかったようだ。
『んじゃとりあえずそこで合流しね?』
「そだね。」
『久し振りに近くで海見たいしね。』
と、いうわけで皆が来る間暇な水菜。
乗っていた木の枝から飛び、そのまま海の上で空中散歩と決め込んだ。
「…ん?」
不意に海の中に何かを見たような気がして海面に近づき覗き込む。
するとぱっくりと口を開けた巨大な魚が水菜を飲み込もうと海中から飛び出してきた。
「んなっ!?」
流石に驚く水菜。
だが、空中の離れた場所に瞬間移動し、大事には至らない。
「あっぶな!」
だが魚も諦めてはいない。
また助走を付け更に高い所まで飛んでくる。
「いやいやいや、頑張りすぎでしょ魚さん…」
更に高い位置に移動し、突っ込む水菜。
「…えー、今のはなんですか。」
「こーすけ。早かったね。」
「障害物が無かったからな。んで、なんなのあれ。」
「デカイ魚。」
「んなもん見たら分かる。」
「あと肉食系。」
「…とりあえず皆に連絡?」
「そだね。それからあれは冷凍してトッキーにプレゼントだね。」
「また泣いて喜ぶなトッキーのやつ。」
そして数十分後、全員が到着するまでに完璧な魚の冷凍保存が出来ていた。
◇◇◇
「なんなんですかこれはー!!?」
「海でこの私を喰おうとした不届きな魚。」
「の、氷付け。」
「しっかし大きいねー」
「魔獣、なんか巨大化してってない?」
「そうだね。そのうち竜とか生まれなきゃ良いけど。」
「ありがとうございます水菜さーん!!」
「また泣いてるよ…」
と、何気なく上を見上げた遼は魚の目がギョロっと動くのを見た。
「!?時津さん離れて!!」
「はい?」
遼が言うのと、氷が割れるのがほぼ同時だった。
「ちっ!」
水菜が舌打ちし、手を横に振る。
次の瞬間、時津は施設内に、そして水菜を含めた全員が空中にいた。
今は水菜の念力で浮いている。
『皆さん!大丈夫ですか!?』
「ま、とりあえずはね。トッキーは?」
『私も無事です。それより気を付けて下さい。どうやらその魚は同じ系統の能力の効きにくい魔獣の様です!』
「同じ系統の能力?」
「多分水と氷の事だね。ここらのは同じ系統の能力でも倒せるけど。」
「今まで凍ってたのは止まればエサが集まるから、とか言うなよ?」
「その可能性は大いにあるね。魚だって馬鹿じゃない。」
遼の言葉に浩輔は半眼になる。
「どんな力かは僕が解析をします。水菜、離れた場所に降ろしてなるべく時間を稼いでください。魔獣相手は時間が掛かるんです。」
「分かった。夏弥も一緒で良いわよね。」
「ええ。わたくしはなるべく無傷の方が回復も早いですし。」
「んじゃ行くわよ!」
ふっと遼と夏弥が消える。
そして下に降りた秋が斧を振り降ろす。
「なっ!?」
「秋!!」
斧は皮膚を傷付ける事なく皮の上を滑る。
更にその場所の鱗が秋へ目掛け飛んでくる。
丁度近くにいた浩輔が秋の腕を掴み空中へ逃げる。
「だったらこれはどうだ!!」
今度は順一が炎を噴射する。
すると魚は地面の上だというのにヒレを使い体の向きを変えると、順一の放った炎に向かって水を放った。
「うげ…」
『まぁ普通に火じゃ相性悪いよな。』
「そうだよね。」
『でもどうするの?』
『とりあえず順くんそこ退いて。』
「ん?」
水菜の言葉に上を見上げれば、物凄い電流を迸らせる水菜が。
「うわっちょっと待って!!」
急いでそこから離れる順一。
順一が離れたの確認して水菜が叫ぶ。
「水なら電気には弱いでしょ!!」
バッと扇を開き魚に向かって扇ぐ。
風の気流も操作しているようで強い風も吹き荒れる。
そして魚へ一直線に電流が流れる。
だが、電流は魚の皮の上を伝い地面へ流れていく。
「『『『はぁ!?』』』」
勿論見ていた全員が声を上げる。
「ちょ、魚のクセに電流効かないって何!?」
『てか皮の上を撫でただけみたいな。』
「うわ、あいつのあの余裕顔ムカツク!」
『魚に余裕顔とかあんのかよ。』
『てかさ、あたしの武器も似たような感じだったし…刃のところなんか油みたいなのついてるよ?』
と、そこに漸く遼からの通信が入る。
『…その油みたいなのが攻撃を受け流しているみたいだよ。』
『マジで?』
『うん…』
「遼、あんた大丈夫?」
『まぁ、少しふらつくだけだから。とにかくそいつを完全にノックアウトしたければ表面は駄目だ。中じゃないと…』
その言葉に上空で集まった水菜達は悩む。
そこに今度は夏弥から通信が。
『水菜、思ったのですけどエネルギー源を移動させる事は出来ませんの?』
「エネルギー源?」
「っていうと?」
『例えば順一さんの炎なり、そういった自然エネルギーですわ。』
「やったこと無いから分からないけど…やってみようか?」
『出来るのでしたら…』
夏弥の言葉に全員は頷きあう。
そして試しに小さなつむじ風を浩輔が作る。
そして水菜も力を使う。
だが。
「行った!」
「けどやっぱり物じゃないから難しいな…」
そう、つむじ風は魚の近くの地面を抉っただけだ。
出来るだけの数のつむじ風を作る浩輔。
順一も火の玉を作る。
そうして水菜が飛ばす。
秋は勿論、離れた場所から遼も土を使い魚の注意を引いている。
◇◇◇
あれから数十分。
未だ成功を見ない。
「お願い…何とか成功して…」
両手を握る夏弥の見るマップには秋の名前の横のマークが既にイエローに変わっている。
それもゆっくりだが確実に赤へ変色している。
勿論能力を使い限界に近い他の四人も攻撃をかわせずにダメージを負いイエローに変わっている。
と、一番能力の使用が激しい水菜の体が傾く。
「ミィ!」
「っ…まだ、大丈夫…」
浩輔が支えるも浩輔や順一以上に能力を使っている水菜の呼吸はかなり早い。
また、ずっと動きっぱなしの秋も徐々に動きが鈍くなる。
「っ…しまっ!?」
「秋!!」
間一髪、順一が秋を拾い上げる。
「はぁっはぁっ…」
「秋、大丈夫かい?」
「な、んとか。順一君は?」
「俺も何とか…」
遼もまた、ガクッと膝をつく。
「遼!!」
「くっ…」
「こんな時…わたくしにももっと力があればっ」
「そんな事無いよ。君が治してくれるから皆ちょっと無茶出来るんだから。」
「でもわたくしは怪我を治すだけ…体力を戻すことは…今の皆さんに必要なのは体力なのに…」
誰もが悔しさとやるせなさに唇を噛んだ。
◇◇◇
時を遡ること数十分前。
突然の地響きと轟音に全クラスがざわめく。
そして誰が言ったか徐々に窓の外を見る被験者達。
そこにはとてつもない大きな魚と宙に浮かぶ六人の男女。
「あれが魔獣…?」
初めて見る、つい先程伝えられた魔獣の存在。
そして。
「あれが特別クラスの子達ー?」
誰かがそう呟く。
だが、攻撃も虚しく効いていない様子。
「…あっ!」
何かが攻撃を仕掛けた女の子に飛んでいく。
誰もが目を瞑る。
「…」
たった一人。
目を見開き、見つめる。
先程の女の子が男の子に助けられ宙に逃げる様子を見てため息を溢す。
次いで別の男の子は炎を噴射するも魔獣の水で相殺される。
「っ…!」
そうして、一際物凄い電流を迸らせる女の子。
誰かが呟いた。
「まさかあれが女王?」
確かにあれ程の威力は見たことがない。
そして女の子が何かを振り降ろすのが見える。
その瞬間、物凄い電流と強風が辺りに散らばる。
普段はビクともしない窓が音を立てて揺れている。
それくらい強い力だったが魔獣に効いている様子はない。
空中で固まった後、また散らばる。
それも今度は戦法を変えたのか、何かを試そうとしているようだった。
「ダメっ…!」
何かに目を背け走り出す。
誰もが窓の外を見ていて、一人抜けた事に気付かない。
ずっと走り続ける。
だが聞こえる音は途切れない。
疲れて足を止めた時に気付く。
音がしないことに。
「まさか…」
一抹の不安が過り近くの窓を開ける。
そこは先程よりも彼等に近い所。
と、一番強い力を放っていた女の子が力なく落ちる。
それを支える男の子。
別の子達も殆ど体力が無いのは見ていて明らかだった。
「…誰もいない…?」
キョロキョロと周りを見回すも廊下には誰もいない。
今の時間は皆クラスルームにいるからだ。
もう一度空を見る。
目につくのは一番消耗が激しい女の子。
緋い瞳が頭に焼き付く。
「(なん、なんとかしなきゃ…)」
そう思った「彼女」はその瞳を閉じた。
一歩下がり、そして息を大きく吸い込む。
「…、〜」
こうしなければならない、そんな気がした。
「彼女」はただ、危険な状況にいる女の子達を助けようとは思ってはいない。
何かをしなければ。
ただ、それだけだった。
◇◇◇
「くっ…あと少しなのに…」
「ミィ…」
もう体力の限界に近い水菜。
殆ど最後の、と言って良い力は秋と順一を夏弥の所まで飛ばすのに使って余力は無い。
浩輔も水菜を抱えたまま飛ぶのに精一杯だ。
「ごめんね。」
「は?何が。」
「一人なら逃げれたのに。」
「バカ言うな。オレはそこまで軽薄じゃねぇよ。」
「…ふふっ、ありがと…」
笑う水菜。
だが、疲れきっているせいか全く表情が笑えていない。
「…?」
一瞬、建物から覗く誰かと目が合った気がした。
疑問にする前に何かが聞こえ始める。
「なん、だ?」
「…歌?」
それは隠れて治癒を掛ける夏弥と傷口が塞がるのを今かと待つ秋達の耳にも届いた。
それは勿論時津にも。
「…歌?…………皆さん、この歌声の解析を!」
「はい!」
歌声に聞き入っていた秋達も異変に気付く。
「あ、れ?」
「秋?」
「疲れ、取れてる?」
「え?」
と、秋と順一の傷口が一気に塞がる。
「え?」
それは水菜達も同じで。
「……ねぇ、スピード上げた?」
「…いや、全力…?……ミィ、お前息…」
「そう言えば苦しくない…」
浩輔から離れる水菜に疲労の色は見えなかった。
秋達を見ると、それは皆同じ様で。
「どういう事?」
『分からないけど、この歌が疲労を取ってくれたみたいだよ。』
「何だか分かんないけど……さぁ続きと行くわよ!」
「おう!」
歌が続く間、水菜達は絶好調と言うものだった。
数分間、漸く感覚を掴んだ水菜。
「よし!夏弥!」
『はい!』
夏弥が数個の水玉を出す。
そして水菜も雷の玉を。
それが消える。
「……よし!順くん!」
「ほい来た!」
最後に順一の火の玉も消え。
数秒後、派手な爆発音が魚の内部から聞こえる
『簡単な理科の実験、覚えておいて良かったですわね。』
「そうね!」
「それじゃ最後はあたしだね!」
内部から爆発した魚の皮の至るところに裂目が見える。
その裂け目を狙い。
「せぇーの!!」
勢いよく斧を振り降ろす。
今度は簡単に身が裂け……
ドゴン
「……」
「……」
『あ、アハハー…』
「建物まで切ってどうする!!」
『いや、あんな衝撃波出るとか思わなかったし…』
魚の次いでその向こうに見えていた第一研究棟に大きな亀裂が生じた。
それを見ていた時津は。
「…秋さんも制御の出力を上げなくてはいけませんね…」
と、呟いた。
あの歌声はいつの間にか聞こえなくなっていた。
◇◇◇
「疲れたー…」
「本当に疲れましたわね…」
「でもあの歌声はなんだったんだろな?」
「さあ?被験者らしいけど…今全力で解析班が分析してるよ。」
だが水菜は何かを考えたままだ。
「ミィ?」
「あの歌、どっかで聞いた気がする…」
「マジで!?」
「でもどこでいつ聞いたのか思い出せない…」
思い出せない事に少し苛立っている様だ。
「ま、その内思い出すんじゃね?」
「それもそうね。」
浩輔の言葉に水菜は飲み掛けのコーヒー牛乳を一気に飲み干した。




