魔獣狩り
「本日も快晴、絶好の狩り日和。」
青い空を見上げ水菜は言った。
「あら、リュックじゃなくなったんですの?」
「あれは小さい方に合わせて作ったから背負えないのよね。」
「でもこちらも可愛らしいですわね。」
そういう夏弥はバスケットを持っている。
「それは?」
「処置セットですわ。わたくしの力で治せないものは無いのですけど時間の掛かるような怪我は処置をして安全な場所でするんですの。」
「てことは順一の増幅の能力ならすぐとか?」
「命に関わる様なものでなければきっと。」
今六人は訓練所を過ぎた所を歩いている。
こちらには来たことが無いからだ。
「早速お出ましになったわよ。」
目の前に降りてきたのはあの鳥の魔獣。
「まぁ、あんなの初めて見ましたわ。」
「話しには聞いてたけど本当に大きいね。」
「んでもって結構速いのよね。」
とにかく全員武器を構える。
「制御ついてるから全力出さないといけねぇよな。」
「ま、コイツは初じゃないから楽かもね。」
と、魔獣が動き出す。
「まずは足止めが必要だよね。」
「だね。でも速いから困るね。」
順一の言葉に遼が返す。
「それなら大丈夫!」
と、秋が強く踏み込む。
そして一瞬で間合いを詰めるとハンマーで思いっきり嘴を殴り上げる。
衝撃でよろめく魔獣に両脇から浩輔と順一が翼を切り上げる。
勿論浩輔は風で飛んで。
「お前いつの間にそんな芸当出来るようになったんだよ!」
「ここにきて間もない頃にね!」
そんな芸当とは、足の裏から炎を噴射して飛ぶことだ。
元々それなりに頑張っていた順一は時津の授業を受け出来るようになっていた。
「じゃ、次は僕達だね。」
「ですわね。」
と、二人が放った矢が魔獣の足元に突き刺さる。
と、土と水が刺さった場所から魔獣を締め付ける様に立ち上る。
「能力はこういう使い方も出来ますのよ。」
そう言う夏弥の上空。
そこに水菜はいた。
その水菜の周りには小さな球体が浮いている。
水菜の手が魔獣に向かって降り下ろされる。
すると球体から真っ直ぐまるでビームの様に線を描き魔獣に突き刺さる。
「小さくても結構な威力だね。流石電磁砲。」
「ま、ね。小さいと使えないのが難点。」
「でも雷は使えるようになりましたのよね?」
「うん。磁場の安定がイマイチ上手くいかなくてね。」
ストンと地面に降り立つ水菜。
そしてゆっくり倒れる魔獣は既に事切れていた。
「水菜は武器を持ちませんの?」
「私に接近戦とか無意味じゃん。」
「そうだけど。」
「でもなんか持ったら?」
「皆お揃いって感じで良いのに…」
「あら、それは良いことですわね!水菜、今すぐお作りになってお揃いになりましょう!」
「あらら、夏弥さんのスイッチ入ったねぇ。」
期待に満ちた目を向ける夏弥に、せがまれる水菜。
「あぁなると夏弥さん止まんないから。」
「中々に押しが強いんだな。」
結局分かったと頷く水菜に全員が苦笑したのだった。
◇◇◇
「扇?」
「ま、能力発動のスイッチみたいにしようかなって。」
と、開いた鉄扇をパチンと閉じる水菜。
「もしかして考えてるってこれの事だったの?」
「うん。」
また開いた鉄扇に今度は淡いピンクの花弁と真っ白な雪が。
「良いじゃん。」
「水菜っ素敵ですわ!!」
「ぐふぅっ」
水菜に抱き着く夏弥に、いきなりでダメージを受ける水菜。
「なんか十二単とか似合いそう!」
「そうですわね!」
秋と夏弥はまた別の話題で盛り上がる。
と。
「やぁよ。あんな重くて動きづらいの…二度と着たくない。」
「「えー…」」
「考えたら水菜って結構軽装だよね。」
「ん?」
「普段からコートの下ワンピースだよね。」
「なんでお前そんな事知ってんだよ。」
順一の言葉に浩輔が突っ込んだ。
「結構暑いってコート脱いでたから。」
「んなもん見たことねぇけど。あの日は普通な服装だったじゃん。」
「獣に見せちゃいけないって言い聞かせたから。」
「うん、言われた。」
そう言う順一にコクンと頷く水菜。
今もコートは閉められている。
「水菜って変に素直だね。」
「可愛らしいじゃありませんか。」
「そうそう。それに今日のは絶対見せちゃ駄目だから。」
「そうそう。」
秋の言葉に順一が頷く。
「今日の?お前何着てんだよ?」
「キャミと短パン。」
「…良いじゃん。」
「「ほら目の色変わった。」」
「まぁ。でも水菜は露出が激しいですから。」
「そういわれてみれば水菜って夏は結構露出してるよね。」
「基本的にキャミと短パンだね。それかワンピ。てかコート暑いんだけど。」
「変に色っぽいからだめです。」
「そう?」
秋の言葉に水菜は眉を寄せる。
「試しにジッパー下ろしたら?」
「それを切に希望する。」
真面目に言う浩輔にビシッとチョップを入れる順一を他所に水菜はジッパーを下ろす。
下は本人が言う通りキャミソールと短パンだ。
大きく開いた胸元に透明な石のペンダントが光る。
「お前、ずっとそれでいろな。」
「「黙れ変態。」」
「…二人共息ピッタリだね…」
「水菜、ずっと気になっていましたけどそのペンダントはなんですの?」
「ん?水晶のペンダント?」
「六角柱って珍しい形だよね。」
それを聞いて水菜はペンダントを持ち上げる。
「…魔除け。」
「どうせなら変態避けにすれば良いよ。」
「順一、お前な…」
「魔除け、なんて迷信深いんですのね。」
「まぁ、これでダウジング出来るし。」
「「いつするんだよ。」」
「隠れた魔獣とか?」
と、そのペンダントが勝手に動く。
「「「「勝手に動いた!?」」」」
「あら。」
「一応これも私の能力なんですけど。あっちにいるねぇ。」
「能力?」
「そ、検索対象を魔獣に設定してこれに移すの。」
チェーンを外して手に持つ水菜。
それに秋が思い出す。
「それって皆出来るの?時津さんもしてるよね?」
「能力移乗?ある程度の強さなら出来る筈だよ。夏弥も出来るよね?」
「ええ。わたくしは水に癒しの能力移乗して薬の様にしていますわ。」
「へぇ。んじゃ風は?」
「扇風機みたいにするとか。」
「扇風機かよ。」
「絨毯で飛ぶことだって出来た筈。やったこと無いけど。」
「出来る能力と出来ない能力があるんだよ。秋さんの能力はどちらも出来ない能力だね。僕の土も出来ない能力だし。」
「そうなんだ。」
「他者に干渉しやすい能力は移し易いみたいだけどね。君達の消去と増幅は出来る能力だね。」
と、ペンダントがクルクル回り出す。
「来るよ!」
本日二戦目。
少しずつ慣れていく秋達でした。
◇◇◇
「ふっはー!」
「本当に好きだねコーヒー牛乳。」
「それにしても水菜は本当にスタイル良くて羨ましいですわ。」
「本当だよね。」
「あら、秋さんもですわよ?」
「あたし!?」
「身長高いですし…わたくしなんて他の方より小さくて…胸も小さいから昔から悩みの種なんですわ。」
「いや、胸はあたしも大きくないけど…」
「水菜は平均くらいです?」
「そうだね、身長はあたし達の間だし。…胸は一番なんだけど…」
「そうですわね…」
「ん?」
2本目を飲んでいた水菜には聞こえていなかったようだ。
「なんの話?」
「わたくしと秋さんだけの内緒事ですわ!」
「?」
「アハハ…」
こうして夜は更けていく。




