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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
12/17

新たな仲間と

「さて、今日は浩輔君と順一の力の具合を見てみましょう。」


訓練所に集まった四人に時津はそう言った。

その言葉にどういう事かと時津を見る。


「秋さんと順一君、水菜さんと浩輔君とでペアを組んで下さい。」


言われてお互いの顔を見る。


「まずは順一君の力を見ましょう。順一君、秋さんに触れてください。」

「…え、…」


時津の言葉に順一は秋を見て固まる。

それに秋と水菜は首を傾げる。


「…えと、その…」

「お前、相変わらずだな。簡単にポンで良いじゃん。」

「う、うるさいね…君と一緒にしないでくれるかな…」

「「?」」


目が泳ぐ順一に呆れ顔の浩輔。


「こいつ、昔っから女の子に触れないの。恥ずかしすぎて。」

「お、男がむやみやたらに触って良いと思わないだけだ!」

「要するに純情ボーイな訳よ。」

「今は授業だから気にする事は無いと思うけど?」


そう言い手を差し出す秋にその手を見詰める順一。


「いや、そうなんだけど…でも…」

「普通に手を繋げば良いじゃん。」

「ダメダメ、彼女の手すら握れないんだから。」

「こーすけとは大違いだね。」

「お黙り。」


なんとか手を繋ぐに至るまで数十分掛かった。


「では秋さん。その状態で全力で鉱石…そうですね、鋼や鉄以外を出してみましょう。」

「鋼や鉄はダメなんですか?」

「通常で良く作るものより作ったことの無いものが計測しやすいのですよ。」

「分かりました。」


と、目を閉じて思い浮かべるのは水菜が貸したアクアマリンの指環。

自室に戻った時はずっと見て触っているため良く思い出せる。

その様子を見ていた水菜と浩輔。

ふと頭上が翳り、なんとなしに上を見る。


「「んな!!!?」」


そしてそのまま秋達から離れる様に走る。

秋は気付いていないが、順一は見ていた訳で。


「あ、秋っ秋!!」

「ん?」

「う…上、上!!」

「上?」


順一に促され見上げれば。

頭上に大きな水色の塊と銀に輝く塊が落ちてくる所で。


「何これ!?」

「ちょ、早く走ろ!!」


と、その瞬間二人の見ていた景色が一変する。


「「あ、れ?」」


と、響く轟音。


「間一髪。」


二人の後ろに水菜が立つ。

水菜を見上げる二人。


「「へ?」」

瞬間移動テレポート。私達も走ったけど大きすぎたから。」

「すっげーデカかったなー。」

「成る程成る程。ある程度力が大きくなると体外生成出来る訳ですか。」


と、口々に感想を述べている。

良く見ればそこは訓練所の裏手。


「「…」」

「つかさ、流石にもう繋いでる必要ねぇだろ?」


浩輔の言葉に我に返った二人は急いで手を離した。

その顔はお互い真っ赤だった。


「お前ら小学生か。」

「「!!!」」


この後、浩輔は二人の攻撃を受ける羽目になった。


◇◇◇


「えー、では訓練所の片付けが終わるまで暫くは外ですねー」

「ご、ごめんなさい…」

「いえいえ、とても良いデータですから!見たところアクアマリンと銀の様でしたが…いつ実物を?」

「あ、それはミィが。」

「水菜さんが?」

「指環を貸してくれたんです。それで。」

「…あの指環を?」


その水菜はヤル気満々で準備運動中だ。

その様子に冷や汗を流す浩輔。


「あれを貸したのですか。」

「なにかあるんですか?」

「あれは水菜さんのお母様の形見ですからね。」

「え…?」

「少しは閉じた心が開いたのですかね。」


ふふっと笑って時津は逃げそうな浩輔とヤル気満々の水菜の元へ。


「形見って…」


ポケットから指環を取り出して見つめる。


「秋?」

「…形見って事は前の持ち主は亡くなってるってことだよね…」

「え、あぁ…そうだね。」


時津の言葉に秋は出会ってからの水菜を思い出す。

だがどれも楽しげである様に思える。


「…友達っていっても知らない事だらけだなぁ…」

「それは皆そうじゃない?」

「え?」

「俺だって幼馴染みだけど浩輔の事知らない事が多いし。でもそれって普通だろ。」

「そう…かもしれないけど…」

「だったらさ、これから知っていけば良いんだよ。なんせ皆若返って成長しないから時間はたっぷりあるんだし。」

「ふふっそうだね。」


秋は漸く笑う。

それに頷いて順一は秋を促す。


「ほら、行こう。良い感じに浩輔押されてるし。」


見れば小さい姿の全力で力を放つ水菜と、力を消しきれなくて徐々に消耗する浩輔。


「ミィって本当に凄いよね。」

「ね。…そのままボロボロになってしまえ。」

「アハハっ浩輔君可哀想だよ?」

「良いんだよあんなヤツ。」


どうやら先程の事を根に持っているようだ。



◇◇◇


「ミィ…お前…手加減くらいしろよ…」

「元に戻らなかったのが最大の手加減なんだけど。」

「………」

「いやー見事な負けっぷりだったねー」

「順一、テメー…」

「人をからかった天罰なんじゃない?」


リビングルームで休憩中の四人。

そこに時津が入ってくる。


「えー、お知らせします…」

「「「「?」」」」


なんだか元気の無い時津に首を傾げる水菜達。


「来月に、クラス対抗の模擬試験をするそうです…」

「「「は?」」」

「なるほど、だから落ち込んでんだ。気にする事無いのに。」

「何の事?」

「私はっ皆さんを見世物にしたくは無いんですよ…」


そう言った時津を心配げに見る。


「たまに、被験者募集の模擬試験をするんだよ。全国ネットで流れるんだ。」

「あ、オレ一回見た。」

「そう言えば俺も。」

「へぇー。そんなのあるんだ?」

「ま、ここに来る人は大概スカウトで来るからね。」


いまだに普通の生活を続ける人間社会。

各研究施設は被験者の確保にも力を注いでいる。


「でも今まではうちじゃなかったじゃん。」

「…他のクラスのレベルが均一に上がってきているから、だそうですよ…」

「てかさ、それ私達のコースはしないって事だったじゃん。本当ならエリートコースの方なんでしょ?」


初めて聞く言葉に三人は首を傾げる。


「ここ、引っ括めてノーマルコース。エリートコースは能力が強いとかそんなの集めてるもう一つの研究施設。」

「はい。あちらには皆さんと同じ様な特殊能力の方もいらっしゃいます。このクラスはそもそもはノーマルコースより見つけた特殊能力者を集めてるクラスです。まぁ、今のところ皆さんしかいませんけど。」

「あ、だから珍獣?」

「そ。エリートコースはどっちかって言うと動物園じゃない?化け物じみたヤツいっぱいいるし。」


水菜の言葉に秋はふと何かが引っ掛かった。


「ミィ、もしかしてそのエリートコース嫌いなの?」

「やり方がね。あっちゃんの前の担当、アイツも元はエリートコースの担当だったらしいし…私人を見下すの大っ嫌いなのよね。そういうの見たらこう…潰したくなる。」

「「なんて事言ってんのこの子は…」」

「あぁ…なるほど、だからあんな事を…」


あの時の水菜の話し方や態度を思い出して秋は頷いていた。


「他のクラスはそーでも無いんだよね。お菓子くれるし。」

「(お菓子って…)」

「そう言えば散歩の時は子供になりきるよね。意外と知り合い多くてびっくりしたよ。特に第六研究棟と第七研究棟の子達。ミィが女王だってのも知ってたし。」

「「そうなの?」」

「第六と第七は回復や能力解析の能力を持った子が多いですからね。ちなみにこのクラスはそれ以外の特殊能力者を集めています。他のクラスには殆どそういう情報は回りませんから知らない子や担当は多いですよ。」

「皆も狩りに行くようになったら第六にはお世話になるよ。」

「狩りではなく魔獣研究です。」

「狩りじゃん。」

「そっか、俺達魔獣の事すら知らされて無かったから行く事も聞く必要も無かったんだ。」

「はい。他のクラスには魔獣と渡り合える様な能力者はまだ確認されていませんが…」


そこで溜め息を吐く時津。


「ここ数年、一般人にも魔獣の被害が出始めているんです。今までは少くて規制が掛かっていたんですが解除される事になりまして。」

「うん、知らなかったもんな。」

「「うん。」」

「上としては黒や赤に遅れを取るわけにはいかないようです。」

「あ、それは知ってる。確か黒は北海道、赤は九州地方にある施設だよね?」

「はい。あそこは本島に比べて自然が多いですからね、規制が意味無い程です。で、どちらも公開公募に踏み切ったわけで。」


やれやれと時津は首を振った。


「で、遅れちゃならんとウチも公募?」

「そういう声が多すぎたそうですよ。特にエリートコースの方々ですが。」

「めんどくせぇ連中だな。」

「全くです。このノーマルの中で魔獣に立ち向かえるのはこのクラスだけですのに。」

「さらっと自慢したね。」

「したな。」


だが言われて悪い気はしない四人だった。


「話を戻しましょうか。来月のクラス対抗の模擬試験ですが、殆どのクラスは魔獣と初めて会う子ばかりです。皆さんは救助チームということで。」

「助けた子達は第六研究棟の子に渡せば良いんでしょ?」

「はい。そこまで強い魔獣を使わないとは思いますが…なにしろ今回の企画案はあのエリートコースが出していますからね。何をするやら。」


盛大な溜め息を溢す時津に先を思いやる四人だった。


「さしあたっては明日から、この辺りの魔獣で、皆さん…特に浩輔君と順一君には魔獣に少しでも慣れてもらう為に暫くは戦って下さい。」


時津の言葉に頷く四人。


「トッキーは?」

「私は暫く研究します。皆さんの為の通信機やら制御装置やらを作りたいので。」

「また制御装置ー?」

「暫く着けてなかったのに…」

「あのエリートコースの方々に皆さんのデータを盗ませる訳にはいきませんからね!ちなみに明日から全クラスで制御装置は付けます。同じ白でも敵対しているのは面倒ですがね。」


時津の言葉に全くだと四人は思ったのだった。


◇◇◇


「さて、と。なら本格的に武器製造といこうかね。」


あの後、展望室に移動した四人。

広げたピクニックシートの上で水菜がそう言った。


「んじゃ僕達にも良いものくれませんか?」

「「「ん?」」」


突然聞こえた声に三人は振り返る。

そこに居たのは眼鏡を描けた男の子と、優しげに微笑む女の子。


「「…誰?」」

「あ、遼君に夏弥ちゃん。」

「さっきの話しに出た第六と第七の子。」

「第七研究棟能力解析班の三嶋みしまりょうです。」

「第六研究棟回復班の添島そえじま夏弥かやですわ。」


お互い挨拶を交わして。


「んで?なんであんた達の武器まで作んなきゃならないわけ?」

「これから僕ら君達と一緒に行動するから、だよ。」

「はぁ?」

「今度の模擬試験で密な連携を取れるようにと総帥が。」

「へぇー、総帥がねぇ。」

「まだ会ったこと無いけど…どんな人なのかな?」

「お優しい方ですよ。」

「ちょっとした悪戯も好きだよね。」

「へぇ、ミィみたい。」

「うるさいわ。でも良いわけ?あんた達一応班のリーダーじゃない。」

「だからこそ、だよ。それに、もう一つの力も伸ばしたいし。」

「二人の能力?」

「はい。」


そう言って二人が手のひらを翳す。

と、夏弥の手からは水が。

遼の手からは土がそれぞれ落ちてくる。


「僕は土の生産操作もあるんだ。」

「わたくしは水の生産操作ですわ。」

「わー、良いなぁ。」

「そっか秋は操作出来ないんだっけ。」

「うん、出すだけ。」

「それだけでも十分死にかける位だったけどな…」


朝を思い出して浩輔は呟いた。


「ん、まぁ作るには問題ないけどさ。戦えるの?」

「問題なく。僕達は元々弓の経験者なんだ。」

「なので弓を作って頂ければ。」

「オッケ。で、そっちのお二人は何にするか決めたの?」

「「やっぱ剣かなぁと。」」

「剣にも種類ってもんがあるんですけど。」


とりあえずの感で決めた二人は水菜の突っ込みに頭を掻いた。


「んじゃあオレ刀。」

「じゃ、俺は両刃。」

「なんで?」

「コイツより強そうだから。」

「オイ。」

「ま、とりあえずは決定だね。じゃ、あっちゃん…順くんと宜しく。」

「「また!?」」

「当たり前。時間掛けて誰がするか。」


水菜の言葉にまたもや赤くなりながら二人は手を繋ぐ。


「だから小学生か。」

「秋、落として良いと思うよ。」

「…うん。」


口は災いの元、と水菜は浩輔に向かって飛んでいく幾つもの鋼を見ながらそう思った。


「楽しそうだね。」

「そーね。」

「水菜も、ですわよ。」

「は…」

「最近は良く笑っていますわ。」

「そ、そう?」

「ええ。」

「悲しい事は消えない。けどそれ以上に楽しい事もあるよ。」

「…そうね。そうかもね。」


そう言った水菜の表情は少し切なげでもあった。


◇◇◇


「では明日から外に行くのですわね?」

「うん。あー、私も暫くはこの姿ともおさらばねー。」

「そう言えば最近マフラーしてないね。」

「あったかくなってきたからね。」

「マフラーしてたんだ。」

「少し前までしてたよね。二人と会う少し前から外してたんだっけ。」


秋や夏弥の言葉に水菜は頷く。


「そろそろ夏用のコート新調しなきゃ。」

「夏用のマフラーも、ですわね。」

「そういやなんで他のクラスは制服変えさせてくれねぇんだろうな?」

「それはトッキーは緩いから。」

「僕はこれが解析班の制服だし。」

「わたくしもこれが回復班の女子の制服ですわ。わたくし達は以外とこれが気に入ってますので変えようとは思いませんけど。」

「能力開発はパッとしないもんなー。」


出来た武器をそれぞれ手に持ち、いつの間にかそんな話をしていた。


「よっ」

「ほっ」

「結構重いな。」

「うん。」

「ねぇ、ミィ。」

「何?」

「もう少し重くならないかな?」

「「………」」

「明日から制御装置付くんだからそれで良いじゃん。」


秋の言葉に黙り込む二人でした。


「秋さんは筋骨増幅の能力ですものね。」

「うん。この前ここの五階位まで跳べたんだー」

「まぁ。着地は気を付けて下さいね。」

「うん。」


和やかではあるが何か恐ろしいものを感じた浩輔だったとか。


「着地と言えば…浩輔の空を飛ぶのってどう?」

「まだ難しいぜ。気流を掴むまでに時間がな…」

「それを考えるとやっぱりミィって凄いよね。」

「ん?私?」

「うん。結構簡単にやってたから。」

「慣れたからかな?初めは苦戦したよ。」


当時を思い出して頷く水菜。


「それに何かを念力で動かす方が楽だし。」

「それこの前も言ってたね。」

「うん。結構風を体に受けるからだと思うよ。大きくなれば風で飛んでもさして疲れないし。」

「小さいと何かと不便なんだ。」

「そ。それに元々体を小さくするような能力じゃなかったんだけどね。」


それに秋達はピタリと止まる。

遼と夏弥は笑っているが。


「どういうこと?」

「元々は髪の毛だとか爪とか。そういう「部分的」な所の伸縮能力だったんだよね。」

「一度能力が止まらなくなって髪の毛が伸びっぱなしになりましたのよね。」

「そうそう。で、トッキーが慌てて私に力を使ったら…」

「体が縮んだんだ。」

「「へぇー。」」

「…トッキーの能力?」


そこで疑問に思った浩輔が声を上げた。


「あれ、聞いてないかい?時津さんは能力制御の能力を持ってるんだよ。」

「ちなみに制御装置って言ってもトッキーの能力を物体に移すだけの物だよ。まぁ出力とか色んな管理はパソコンでやってるみたいだけど。」


その言葉に三人の脳裏には眼鏡の光る時津が浮かんだ。


「ただの変人科学者じゃ無かったんだな。」

「あれでも一応うちらの担当だからね。それに元は教師ですっごい教え子想いだからね。」


昼間の様子にそれは納得する三人だった。


◇◇◇


武器の扱いに慣れて来た頃、外はもう日が暮れようとしていた。


「綺麗だねぇ。」

「でもこの能力を目覚めさせたり魔獣を生んだのはあの太陽なんだよね。」


落ちる夕陽を見ながら秋の言葉に皆は頷いた。


「でも、この力がわたくし達を引き合わせてくれたのですから。」

「憎めないよね。」


そうして辺りは夜の帳が降りる。


「そう言えば明後日の夜中に流星群が見られるらしいよ?」

「送電が止まる時間ですわよ。」

「私の瞬間移動テレポートなら問題ない。」

「飛距離伸びたんだ。」

「まぁねー」


とりあえず夕飯の為に戻る六人でした。


「美味しい!」

「やっぱマジーのご飯は最高だね!」

「「…」」

「二人ともどうかした?」

「僕達…」

「ずっとこの班に居たいですわ!」

「そう言えばどこのクラスも専属シェフがいるんだよね?」

「考えてみればマジーの料理はメチャうまだよな。」

「マジー元は五ツ星レストランのオーナーシェフだもん。」

「「五ツ星!?」」

「そう。しかも和食、中華、イタリアン、フレンチにインドやその他諸々の諸国の現地で修行してたんだって。殆どの国の料理作れるよ?」


そしてそれを聞いた秋が。


「その眞島さんを唸らせるミィも凄いよね。」

「お菓子作りは趣味だよー。」


マジー曰く「趣味でパティシエコンクール入賞する人はまずいませんが。」との事。

興味のある事には全力で打ち込む水菜だった。








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