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白の女王  作者: 翠月三月
始まりは
11/17

浩輔の成長

「ねぇ、こーすけはなんで飛ばないの?」

「へ?」


朝食の最中、水菜はふと疑問を浩輔にぶつけてみた。

思ってもみない言葉に浩輔は思考停止する。


「オレ、飛べるの?」

「風の能力者なんでしょ?」

「飛べるの?」

「いや、俺達に聞かれても。」

「飛べるの?」

「私飛べるけど?」


浩輔の言葉に順一と秋は苦笑、水菜に至っては逆に首を傾げている。


「マジで!?」

「ミィは飛べるんだ?」

「うん。」

「どうやんの!?」

「どうって…気流操作すれば簡単じゃない?」


水菜の言葉にテンションの上がっていた浩輔はピタと止まる。


「気流操作?」

「うん。」


モグモグと朝食を食べ続ける水菜はコクンと頷く。


「…そんなの出来んの…?」


まだ、そこまでのレベルに達していないのであろう。

浩輔は自分の手のひらを見つめた。


「ご飯終わったら練習してみれば?」

「おう!」


水菜の言葉にご飯を掻き込む浩輔だった。


◇◇◇


朝食後、四人は外に出ていた。

場所は河原の側の原っぱ。

そこならば魔獣も少なく、出てきたとしても秋と順一だけで事足りるという水菜の考えだ。


「まずは…今何が出来るの?」

「なにって…カマイタチ?」

「それだけ?」

「うん。」


水菜と向かい合って座る浩輔を見て順一は思う。


「あの二人、似てるなぁって思うんだよね。」

「ミィと浩輔君?」

「うん。変に素直な所とか。」

「そう言われてみれば…似てるね。」


等と言われてるとも知らず、二人は能力の事について話している。


「なんて言うのかな、気流を感じるっていうのかな?そんな感じ?」

「曖昧だな…」

「仕方ないじゃん、感じたままに使って出来たんだから。」

「感じたまま…ねぇ。」


とりあえずは目を閉じてみる浩輔。



…だが。


「ダメだ、分からねぇ。」

「早いね。」

「大体、ミィはオレ達の前で飛んだことねぇだろ。」

「飛ぶ必要無かったし。」

「見本くらい見せてくれても良いんじゃねぇ?」


浩輔の言葉に目をパチパチさせる水菜。

最近はフードを被っていないのでよく見える。


「見本?」

「見本。」

「気流を操るの?」

「んにゃ、飛ぶ方。」


浩輔の言葉に水菜はチラリと空を見上げる。

不意に起こる風。

そして。

浩輔の目の前にいた水菜はフワフワと浮いていた。


「おおお!」

「ま、こんなもんかな。」


そしてストッとまた地面に降りる。

浩輔は水菜の視線を受けもう一度目を閉じた。


◇◇◇


あれから既に一時間近く。

なんの進歩も進展もなく、少々浩輔は苛立っていた。


「(なんでなんにも分からねぇんだ?)」


一人考え込む浩輔の後ろ姿を見て水菜も何かを考えていた。

そしてニヤリと笑う。


「…なに、考えてるの?」


水菜の表情に少し嫌な予感がした秋。


「いや、たまには思いっきり力を使わないとねって思っただけ。」


その言葉に秋はいつぞやを思い出して冷や汗をかく。


「まさか…」


この後起こりうるであろうあれこれを想像する秋。

水菜はニヤリと笑ったままで浩輔に近づいていった。


「どうしたの?」

「…うん、ちょっと…」


何も知らない浩輔と順一。

水菜が近付いているのに気付かない浩輔。

順一は二人のやり取りを見ているが何も分からない訳で。


「こーすけ。」

「ん?」


水菜はニヤリと笑ったまま、浩輔を呼んだ。


「たまには全力で力を使ってみよー」

「は?」


本当にいつぞやを思い出す秋。

この後の浩輔に起こる悲劇(?)を考えて一言。


「頑張ってね。」

「「は?」」


見事に浩輔と順一の声が重なる。

そして次の瞬間には水菜と浩輔の姿はそこにはなかった。


「えっと…なに?」

「水菜お得意の荒療治、ってとこかな。」


乾いた笑いを溢す秋に浩輔の身を案じた順一でした。


◇◇◇


さて、消えた二人はと言うと。


「は…はぁぁぁ!?」

「さて、頑張んないと地面とチューだよー」

「地面とチュー所の話じゃねぇだろ!?死ぬだろ!!」

「それは頑張らなかった結果だねぇ。」


水菜の瞬間移動テレポートによってだいぶと高い空から落ちている。


「ちょ、マジでヤバイだろ!!」


ただ慌てるだけの浩輔に水菜は言った。


「なんでそんなに慌てる必要があるの?」

「なっ…人を落としておいてっ」


しっかり浩輔を見据え水菜は言い放つ。


「自分の力をちゃんと認めていない…飛べないって思い込んでるあんたに、力は働いてくれないよ。」

「っ!」

「なんで、自分の可能性を否定するの。あんたは風使い、飛べないなんてないはずだけど。」


そう言うと水菜は消えた。

いや、風を使い浮いたのだ。

その間にも浩輔は落ちていく。


とにかくかなりの高度だったのだろう。

あれだけ水菜が話している間も落ちていたのに、まだ施設は小さく見える。


『なんで、自分の可能性を否定するの。』


つい今しがた聞いた水菜の言葉が頭を過る。


「別に否定的な訳じゃないっつの…」


その身に風を感じながら、浩輔はゆっくりと目を閉じた。


◇◇◇


「やっぱり…」


二人が消えて数分。

落ちてくる浩輔を視界に捉え秋は半眼になった。


「あの、落ちてくるんですけど。」

「大丈夫…だと思うけど…」

「…本当に?」

「…多分。」


近くに水菜がいないのでなんとも言えない秋。

とりあえず二人は浩輔が落ちるであろう場所まで走る。

と、いきなり風が強くなる。


「わっ!?」

「きゃっ!」


あまりの強さに二人は足を止めざるを得なかった。

そんな二人の上空に浩輔が。


「おっ…ととっ…これ、かなり難しいじゃんか…」

「浩輔!」

「おー、順一。」

「飛べたんだね!」

「おうよ!」


漸く気流を操れた浩輔に二人は駆け寄る。


「所でミィは?」


水菜の姿がないので首を傾げる二人。

そんな浩輔も首を傾げる。


「途中でいなくなったけど…」


と、いきなり落ちてくる何か。


「「なに!?」」

「なんだ!?」


と、よく見ればそれはこの前も見た大きな鳥の魔獣。

それが氷付けにされている。


「あー、もう…びっくりした。」

「ミィ!」


氷付けの魔獣に降り立ったのは水菜。


「びっくりした。じゃねぇよ!なんなんだよこれ!?」

「いや、浮いた後襲われて。」

「「襲われて!?」」

「で、勢い余って冷凍してしまったのよね。ま、トッキーへのプレゼントにしよう。」


念力を使い氷付けの魔獣ごと浮く水菜。


「やっぱこっちのが楽だねぇ。」


フヨフヨ浮く水菜に言葉を無くした三人だったとか。


◇◇◇


夜、いつもの如く浴場の休憩室にて。


「ふっはー!!」

「時津さん、泣いてたね。」

「泣いて喜ぶ人初めて見たよ。」

「てかミィ氷も持ってんのかよ。」

「うん。この前の暴走からこの姿でも使えるのが多くなったからね。」


今日も見事な弧を描き、ビンはゴミ箱へ入る。


「お見事。」

「フフン。」


順一の称賛に腰に手を当てて胸を張る水菜。


「でもミィって凄いよね。色んな能力があってさ。」

「そうだよね。」

「そうでもないよ。」


順一と秋が二人で笑いあう。

そんな水菜は小さく呟く。


「…あったって強くなきゃ意味無い…」


談笑する二人には聞こえてなかったのだろう。

変わらず談笑していた。

ただ一人浩輔だけがその呟きを拾っていた。

もう一度、よく見てみるも水菜の様子は普段と変わらないものであった。



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