第九章「イヴ・オブ・バトル」#3
10月31日。その日、エルタニア全域は南極から流れ込んだ寒気により、大きく冷え込んだ。
買収した鉄道会社の貨物コンテナに乗り込む聖堂騎士団の面々も皆、正装であるスーツの上にPコートを着込む。
「シルバートから各騎士団長へ。目標は藤澤砂夜が在中していると思われる古城の占拠、制圧。及び科学プラントである第8セクトの完全破壊にある」
底冷えが酷いコンテナの中で、騎士団長間で作戦の最終確認が行われていた。
「まずは第三、第五騎士団が先行してエルタニア南西部より北上。中心街へ到着次第、ジャック騎士団長の結界術で覆う」
「向こうからは逃げられない。霊核を持った魔術師だけが出入りできる結界だ。死なない限りは術を発動し続ける」
「出来るなら藤澤砂夜の側にアンシェルもいてくれたら探す手間も省けるんだけど。好き放題していいのよね、今日は」
ジャックと比嘉辻銀音が第一陣として待機する。
「第七、第八騎士団は科学プラントの探索。エルタニア首都ハランには九つのプラントがあり、区切られたセクトをそれぞれ十眷王が担当し守護している。交戦に入る前に少しでも情報が欲しい」
「血が流れないに越したことはありません。持ち得る情報で争いを一つでも減らせるのならば、私も本望です」
「第8セクト以外の戦闘はこちらにも利がない。諜報部門の名折れにならないよう努めます」
ペリーナと日護リツカが偽血確保に臨む。
「先の二組に続き、第一、第二騎士団がそれぞれに合流。最後に第四騎士団が形勢を見て援護に回る」
「皆の矜持は買うぜ。ただ自衛のための魔術行使は当然として、まずは身の安全の確保を優先してくれ。危なくなったら結界の外に逃げても構わねぇ。誰にも文句は言わせねぇからよ」
「背ろから刺されることがないよう、追走する敵は私が一掃する。間隙を突かれるようなこともさせない。退路も確保しておく。全力で自分の仕事に集中してくれ」
市街地を出て三時間ほどが経過し、最初のポイントに到着した。
「あの子たちが楽に通れるよう、道を整備しておかないといけないからな」
このタイミングで門崎将子が聞こえるように独白した。
「まさか作戦を外部に漏らしたんじゃねぇだろうな!」
吸っていた煙草を捨てて、日護長寿郎が起立する。
「なに。どうせもう封殺鍵は術式を解析されて使えなくされてるんだ。なら、新しい切り札を用意しないとこっちに勝ち目はない。吉報が来るまで時間を稼ぐまで」




