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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第九章

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第九章「イヴ・オブ・バトル」#2

「委細の情報は君頼りだ。真中(まなか)の件は僕に任せてくれればいい。また連絡する」


 シャウカステン。レントゲン写真へ光を当てる、観察台の薄明かりにぼうっと照らされる梗吾(きょうご)の輪郭。


 電話を切ると、グラスに残った赤ワインを飲み干し、2階にあるセラーからボトルを取りに向かう。


「っ!?」


 突如、暗闇から飛んできた右拳に思い切り頬を殴りつけられた。


 倒れる梗吾を見下ろすように姿を見せる実の息子、真中。それに続くアル。


「ようやく僕に追いついたようだね」


 口元から血を流しながら梗吾が顔を上げた。


「今ので映研の仲間を危険に晒したこと、俺に隠し事をしてたことはチャラにしてやる」


「なるほど。それで、君は?」


「リズのことを考えれば殺してやりたいくらいだが、今の天動真中の拳が代弁であり全てだ」


「なるほど。しかしヒントも無しによくここが分かったね」


 崩壊した鳳凰島へのアクセスは絶たれており、聖堂(せいどう)騎士団(きしだん)の管轄になって以降は無人島として放置されていた。


「極端に痕跡を残すことを嫌う親父なら、最初から痕跡を消す必要のないここにいるはずだって、アルが言い当てた」


「僕に何か訊きたいことがあるのだろう? 互いに聖堂騎士団からは見限られた身。今の僕に秘密はない」


「ルビアを助ける。それには二人で敵地に乗り込むのは無理がある。だからせめて聖堂騎士団の動きに合わせて行動したい。作戦実行の日程。当日の動き。エルタニアまでの行き方。お袋から情報は共有されてるはずだ」


「確かに。僕ならばその全てを知っている。ちょうど今し方、将子(しょうこ)から聞かされたものだ。ついて来い」


 案内されたのは真っ暗な手術室だった。


「あの一件以来、電気が来てなくてね。魔鉱石(まこうせき)を触媒に僕の魔力を流してその代わりにしているんだ。無制限というわけではないから最小限の明かりで我慢してくれ」


 無影灯(むえいとう)に手をかけて降ろし、手術台に得たばかりのエルタニア郊外の地図と衛生写真を広げる。


「以前の作戦では術式の併用で奇襲を仕掛けたが、同じ手は二度も通用しない。今回の作戦はこうだ。隣接する国境。ここに貨物用の列車が運行している。その貨物車両に乗り込み四班に分かれて下車。峠を越え、首都ハランまで徒歩で侵攻する」


 ここで衛生写真に映る白壁の街を二人に見せた。


「エルタニアは紛争地帯にあったと聞いているが。まるで嘘のようだな」


「これ電線だろ? 電気も普通に通ってる」


 舗装された道に真っ白い壁の家々が連なり、浄水場や下水処理場まで確認できる。その街並みは、まるで戦争とは無縁と思わせるほどに整備が行き届いた好環境にあった。


「この大きな宮殿はなんだ? ここに砂夜(さや)がいるのか?」


「藤澤(ふじさわ)砂夜の拠点は中心部の古城だ。この宮殿はセクトと呼ばれ、第一セクトから第十セクトまであり、それらの破壊も作戦目標の一つになっている」


「どういうことだ」


「真中も見たはずだ。藤澤砂夜は武器商人、エリシアの脳にあった情報を読み取った。彼らが欲しかったのは僕の生み出したヒトを吸血体に強制変異させる偽血(ぎけつ)を作り出す方法。このセクトの内のどれかが科学プラントになっている」


「そんなものが世界中で散布されれば、遠からず人間は吸血体に淘汰されるだろうな」


「アル君の言う通り。人類史存続のためには藤澤砂夜の封殺と、科学プラント有する第八セクトを破壊しなければならない」


「作戦は分かった。肝心なことをまだ聞いてない。聖堂騎士団の決行日はいつなんだ?」


「10月31日。ハロウィンの真っ只中、僕らは本物の吸血鬼狩りというわけだ」


「二週間も先なのか……」


 不安げな真中の表情を梗吾が汲み取る。


「ルビア君の生存率は単純に推し量れるものではない。今は彼女の抵抗に賭けよう」


「それで、俺たちはそれまで何をすればいい?」


「真中は転化能力の拡充を。そしてアル君には僕が直接指導をする」


「なにをさせるつもりだ」


 懐疑的な目を向けるアルに柔和な表情を浮かべて梗吾は言った。


「君にはまず、僕らと同じ魔術を会得してもらう。付け焼き刃だが無いよりマシだ。魔術への冒涜だと罵られようとも、目的のためなら泥を被るくらいなんてことはない。さぁ、始めようか」




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