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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第八章

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第八章「マイ・ラストワーズ」#9

 何もない地平が広がるだけの大地に真中(まなか)は座り込んでいた。ここがどこなのかも分からない。最早、そんなことはどうでもいい。


 一撃。地面に敷かれた砂を殴りつけた。


「また……助けられた……」


 己の非力さ、無力さを嘆く暇などないと頭では思っていても、理性と衝動を今の真中は切り離すことが出来なかった。


 ルビアから借り受けた心臓の鼓動もなければ、隣を見ても誰もいない。


 やがて真中がその座標へと投げ捨てられるのを予期してかのように、一機のヘリが近づき、降下した。


「帰りは一人、ね。個人的なこと言わせてもらうと、あんたが無事に帰ってきてくれてホッとしてるのさ」


 鉛(なまり)のように重い頭を上げられないまま、母である将子(しょうこ)の言葉が耳をすり抜け、流れてくる煙草の煙を鼻で吸った。


「俺は……ルビアを犠牲にして助かったくそったれだ……」


 それはやけに苦々しく思えた。


ーー*ーー


 ローマはどしゃ降りだった。聖堂(せいどう)騎士団(きしだん)の全員が黒のスーツに黒のネクタイという異例な事態。それもそのはず。普段からして騎士団長の肩書きを有する魔術師が、任期中に死することなどまずないからだ。


 その日は遺体となって帰ってきた日護(ひご)歩弓(あゆみ)元第八騎士団長の葬儀が執り行われた。


 参列し、花をたむける真中のそばに蒼生(あおい)が駆け寄る。


「兄さん。こんな時になんですが、騎士団長が呼んでいます」


 リツカの前まで早歩き、覚悟を決めた眼差しで告げる。


「俺はルビアが死んだとは思ってません。どこかに飛ばされた時、心の声で呼びかけた! まだ精神世界で抵抗してるんだよ! あいつはまだ……」


「エルタニアに侵攻する日程が決まったの」


 飄々として常に余裕のあるリツカの顔が暗い。やはり母親の葬儀だからか、と納得しかける真中だったが。


「いつなんです? 出来れば早いほうが……」


「真中君は連れて行けない」


「えっ……」


 それは思ってもみなかった返答だった。


「今回のエルタニア侵攻作戦において、私たち聖堂騎士団は真中君を戦力外と判断した。だから作戦には連れて行けない。詳しい日程も教えられない」


「戦力外……それは、ルビアの心臓がもう俺の中にないからですか! 血術(けつじゅつ)が使えないからですか! 転化(てんか)能力だけでも十分戦えます!」


「その転化能力は血術と併用できてたから比嘉辻(ひがつじ)騎士団長とも渡り合うことが出来た。それに、十眷王《シュバリエカタストロフ》の能力に対しては、私たち騎士団長でも手こずると思う。余計に民間人を放り込むわけにはいかない」


「民間人って? 今更、民間人扱いですか! ここまで連れて来たのだって……」


「ルビアちゃん、でしょ? 彼女がいなかったら、君もここにはいない」


 その名前に反論する言葉を失う。


「本当ならルビアちゃんも巻き込みたくはなかった。魔術師でない無関係な犠牲をこれ以上出してはならない。これが会議で至った結論なの」


「それじゃもう、ルビアが死んだみたいな言い方じゃないっすか!!」


 霊園に木霊する真中の怒号にも、リツカは一切動じない。


「日本に帰る飛行機の手配は済ませてあるから。最後まで付き合えなくてごめん」


 最後の言葉を残して真中の元を去っていくリツカ。その傍ら、副団長である蒼生は心配そうな眼差しで一瞥(いちべつ)くれる。


 雨の寒さからなのか。慟哭(どうこく)の果てか。真中はたった一人、濡れながら身を震わせた。





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