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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第八章

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第八章「チェイス・ジェイル・ボックス」#4

 倉庫内は塵一つなく、無骨な鉄棚が均等に並び延々と続いている、何とも無機質で遠近感が狂いそうな空間だった。


「インディージョーンズならここに本物の聖櫃が置いてあるんすけど。なんかイメージと違ってただの綺麗な倉庫なんすね」


 一様に収納された同じ形、同じ色の木箱。その全てはラベリングされており、保管日時等が記載されていた。


「心臓だけならこんな大掛かりな計画は見合ってない気がして。他に理由があるなら今のうち教えて欲しいんすけど」


 シルバートが目視での捜索を続けつつ返答に及ぶ。


「ハルモニアシィアが台頭するより以前。藤澤(ふじさわ)砂夜(さや)には腹心の部下が二人いた。白雪(しらゆき)伽耶乃(かやの)が左腕ならばその男は右腕。そもそも黄金櫃(アーク)は貴様の母親、門崎(とざき)将子(しょうこ)がその男、アンシェルを封殺するためだけに作り出したものだ」


「お袋が?」


「逢ったことはないのだろう。だからこそ先に言っておく。黄金櫃(アーク)の中には藤澤砂夜の心臓と、それを宿したアンシェル。内側から封殺するしかなかった門崎将子の二人が混在している」


 目的の木箱を見つけたシルバートは聖剣とは異なる先の光刃を、何もない空間から撃ち放った。


「元来、魔術の範疇を超えた奇跡の産物、説明のつかない術を総じて魔法と呼称している。黄金櫃の中では時間の概念こそ無いものの、無限なる空間で門崎将子とアンシェルはこの10年間、同居し続けている」


「待てよ! じゃあお袋はとっくの昔に、そのアンシェルって奴に……」


「いや、どうやらそうでもないらしい」


 含みのある物言いをするシルバートの視線を辿ると、木っ端微塵に破壊された木箱の中には何も入っていなかった。


「どうなって……」


「いい顔つきになったよ、真中(まなか)。目元なんかは私似かな」


 真中の背後に立ち、その女は優しく囁いた。


 はっと振り向き、構えるもそこに居たのは部屋の写真立てに写る彼女でそのものであり。


「お腹痛めて産んだ息子だってのに、逢えてなかったから悲願だったのさ。目の前でちゃんと名乗り出るのが」


 間違えるわけがなかった。初めて聴くにも関わらず、安心感を抱く包み込む様な穏やかな声にどこか覚えがある。


「私が将子。事実婚だから姓は門崎のままになるかな」


「お袋……?」


 警戒心を解きつつ歩み寄ろうとした直後。真中の頬をすり抜けていった光弾が彼女の頭蓋を撃ち抜いた。


「…………?」


 呆然と返り血を浴びる真中の前に脳漿(のうしょう)をぶち撒け、潰れたトマトの如く顔面のみ吹き飛んだ死体が一つ出来上がった。


「自分で自分を傷めつけるのは見てて良いもんじゃないね」


 シルバートの越えて煙草を吹かす女性が一人。そうぼやいた。


「お袋? じゃあこいつは?」


 彼女もまた母親である将子と全く同じ容姿、服装という佇まい。真中の思考は混乱を極めた。


「これもアンシェルの能力の一つならば簡単な話だ。(かなどめ)が第八騎士団副団長に異動になった」


 この状況下において、真中にはシルバートの科白の意味は分かっても、意図が読めなかった。


蒼生(あおい)も出世したか。あまりこの仕事には就かせたくなかったが」


 瞬間、普段激昂することなどついぞなかったシルバートが、真中に向かって叫んだ。


「そいつから離れろ! そいつがアンシェルだ!」


「っ!?」


 先の死体に視線を戻すも、様子に変わりない。


「事実婚は親権を母親である門崎将子が持つ! 名家の門崎の姓を捨て、京という名字をわざわざ副団長が名乗っているのは、アンシェルが本名、(かなどめ)燿平(ようへい)という男と結婚している事実を知らないからだ!」


「蒼生という名の長女が存在していることは認知していた。が、てっきり門崎蒼生を名乗っているものだと思っていたよ。してやられたな」


 振り向こうとした真中を貫く右腕。握る掌中には拍動するルビアの心臓があった。


「アンシェル・リガルドハイヴクラウンだ。よろしく少年」




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