久しぶりの日常
次の日の朝、エラは目を覚まして階段を下りるとまだ誰も起きていないため、そっと足音と扉の音を出来るだけたてないようにそっと外を出て馬小屋に向かいました。
「ポム、ただいま。お久しぶりね」
ポムをギュと抱きしめると、ポムは元気良く声を上げました。
エラはポムが元気な姿を見て安心し、嬉しくなります。
そんな喜びをエラが噛み締めていると、ポムがやけに尻尾を振っていました。
その様子に気付いたエラは、失礼するわねと一言挟んでからポムの背中に乗ります。
エラが乗ると、ポムは新たに声を上げて一気に走り始めました。
行く場所は勿論いつものあの森。
しかし、今日はいつもと違って弓を持ってきておらず練習することが出来ません。
そのため、少しもの寂しくなってしまいます。
そんな中、エラは魔法の弓の存在を思い出し、魔法の弓を取り出して弓を放とうと考えましたが、これは前公爵夫人に貸してもらったものであることを思い出し、つい手が止まってしまいます。
また高価なものであるため、こんな私利私欲なために使って良いのかという疑問も抱きます。
しかし、矢を放ちたいという誘惑に勝てず、いつも以上に楽しんで弓を放って楽しんでしまいました。
いつもなら木に配慮して必ず布を巻くのですが、そのことをすっかり忘れてしまい、エラは慌てて木の状態を確認しにいきます。
どのぐらい傷つけてしまったのだろうと不安に思ったものの、観察するとどの木にも全く傷がありません。
戦闘中ではあんなに鋭く射ていたので、その事実に驚きが隠せませんでしたが、この魔法の弓は撃つ者の意志で動きも変えられることを思い出し、威力も手加減出来るのだと気づきました。
確かにそう考えると、敵を多少の怪我をさせて戦闘を不能にさせてはいましたが、自分が相手したところでは致命傷となった人がいなかったのも納得でした。
エラはいつも使っている弓も良いけど、この弓も良いなと認識し、これを前公爵夫人に返さなければならないのかと思うと少し寂しくなります。
どうせ返さなければならないならもう少しだけ使おうと、目一杯楽しんで、家に戻ったのでした。
「ありがとう。楽しかったわ」
エラはポムにまたねと告げてそっと家に入りましたが、まだ誰も起きていないようで少し安心しました。
エラはそのままキッチンに向かい、朝食の準備をします。
冷蔵庫を確認すると、しっかりと食材は備蓄されているようで、これなら何の問題なく作ることが出来ると安心しました。
本来ならそのまま朝食を作るのですが、時間がまだあることも含めて、まずは1つの卵だけ割って炒めて、そしてコップを取り牛乳を入れて朝ご飯を作りました。
普通の食事に比べると少ないですが、それでも全くお腹が空いていないエラにとってはかなりの量です。
どのぐらい食べられるか分からないので少しずつ食べていきますが、今回は何と全て完食することが出来ました。
最近意識して取るようにはしているものの、毎回最後には何らかしら残してしまうので、そのことに対しては少し食材や用意してくれた人に申し訳なく思っておりました。
そのため、今回はそんな罪悪感なく食べ終えるとが出来て心の底から喜びを感じました。
時計を見るとかなり時間が経っているようで、普段作る時間よりも5分も遅れています。
そのことに気づき、エラは急いで卵を3つ割ってスクランブルエッグにし、1斤の食パンを3枚に切ってトーストで焼きます。
エラはまだ3人が起きていない間に朝食を準備するのは久しぶりでワクワクしました。
炒め終わったスクランブルエッグを焼いた食パンの上にのせて完成です。
また、サラダを皿に取り分けて用意し、牛乳も3つのグラスを用意して3人の朝食を作り終えることが出来ました。
朝食をダイニングルームへ持っていき準備は完了。
そろそろ3人も起きてくるだろうとホールに移動しようとすると、3人がちょうどダイニングルームに入ってきました。
「おはよう」
「おはよう、エラ」
「「おはよう、エラちゃん」」
3人はよく眠れたようでとても元気な声で挨拶をしてくれました。
3人がエラにありがとうという同時に、アナスタシアが質問をしてきます。
「エラちゃんは一緒に食べないの?」
「はい、お腹空いていたのでもう食べちゃて」
「あら今日ぐらい一緒に食べたかったのに」
「ごめんなさい」
「別に気にしないで」
いつもはエラが先に食べていることになっているので、聞かれることはないのですが、今回はその質問に肝が冷えました。
これ以上追求されることはなくエラは安堵します。
そのまま3人は朝食に手を付けますが、エラは一緒に食べなくてもお話することは出来るので、会話に混じって4人は今日見た夢などで盛り上がっておりました。
そんな中、継母がこんなことをエラに告げたのです。
「エラ、今日は一緒に公爵家に行くわよ」
「え? 何で? もしかしてまだ退職していない扱いなの?」
「いいえ。驚きながらも受け取ってはくれたわよ。でも、前にエラが帰ってきたら次来る時に連れてきてと言われたの」
エラが驚くのも当然でした。
なんせ、戦地に行く前に残した手紙に退職願を渡すように継母に頼んでいたからです。
いつ終わるか分からない中で、雇った形を取ってもらうのは公爵家にも継母にも悪いと思い取った行動でした。
しかし、退職願も受理されているにも関わらず、わざわざ自分を呼ぶ理由が全く分かりません。
継母に尋ねても分からないという返答が返ってきただけで、一体理由は何なんだろうと不思議でたまりません。
公爵家の命令なら背くことも出来ませんし、エラは腹をくくって継母と共に公爵家に向かったのでした。




