シンデレラと魔法使いと魔力の核
エラは魔法の弓を取り出し、ヴィオルは魔法の箒を取り出します。
お互い道具に不備がないかどうかしっかりと確認した後、ヴィオルは前公爵夫人に、魔力を通じて、2人で魔力の核を撃ってくるから、その間常に守備をして続けて欲しいと懇願しました。
前公爵夫人は守ることにはすぐに承諾しました。
しかし、前公爵夫人も先程のヴィオルが言った通り、魔力の核ではなく、ドラゴンの心臓を撃った方が良いと反論しました。
ヴィオルはその回答は予想していたので、すぐに説得をしに行きます。
「もし亡くなれば、重力によってドラゴンは倒れてしまう可能性がある。それがお母さんの方に倒れたら、お母さんは耐えることが出来る?」
前公爵夫人は、ヴィオルから思わぬ回答が返ってきて、ハッとします。
確かに立ったままそのまま亡くなる保障は全くありません。
寧ろ倒れて来る方が可能性としては高いぐらいでしょう。
それでもまだ自分と反対の方に倒れてくれたら、建物は崩壊するものの、それはその後で修復魔法で元に戻すことが出来るので、然程問題ではありません。
しかし、自分が守っているところに向かって倒れて来たら、話は別です。
今のところの攻撃は炎。
炎は殺傷性は大変強いですが、重さはほぼありません。
それに対して、ドラゴンは大きさや重さがとんでもなく大きいので、それを1人の魔女で耐えるのは、ほぼ無理でしょう。
というか、きっとヴィオルの2人かがりでも無理に違いありません。
もしそうなれば、耐えきれずにその場にいる全員が圧死することでしょう。
そのことを理解した前公爵夫人は、魔力の核を撃ちに行くことに反対することは出来なくなり、気をつけてと言葉を残して、2人に託すことにしました。
自分達の私情を挟んで言うだけでは、前公爵夫人は納得しないということはヴィオルには分かっていたので、エラと戦いに行くと決めた時に浮かんだ可能性を提示し、説得することが出来たことに安心しました。
ヴィオルは箒の他に、絨毯を取り出しました。
魔法陣みたいに薄っぺらいですが、形は魔法陣みたいな丸型ではなく、長方形型であり、また凝った模様はありません。
エラは見たこともないものを突如出され、戸惑ってしまいます。
「箒と絨毯どっちが良い? 箒ならスピードは出るけど、不安定だ。その反対に絨毯なら安定しているから撃ちやすい体勢で撃てるけど、スピードはそこまで出ない」
ヴィオルはエラにどちらが良いのか選択肢を与えました。
今回はエラにかかっているため、少しでもエラにとってやりやすい方でやらしてあげたかったのです。
確かにどちらもそれぞれメリットやデメリットがあるため、エラは少し悩んでしまいます。
しかし、エラは自信を持ってある方に決めました。
「箒で。確かに箒に乗りながらは、普通に立って撃つより難しいけれど、さっきまでは箒に乗って撃っていたから。ドラゴン相手だからどうなるかはあまり予想はつかないけど、魔法の弓だから外しても修正してくれるし、何よりヴィオルがいるから安心して撃てるわ。大丈夫よ」
絨毯も魅力を感じましたが、慣れているのもあって箒にしたいことをヴィオルに伝えました。
ヴィオルは分かったと頷き、絨毯をしまいました。
エラはその後に、絨毯の方が魔力の消費が激しそうだしねと付け加えました。
確かに、絨毯の方が面積が広く、魔力を分散させないといけないため、魔力がより多く食われるのは間違いありませんでした。
ヴィオルはそんな気遣いしなくても良いのにと思いながらも、エラらしいなと腑に落ちました。
ヴィオルはエラに、箒の後ろに乗るよう指示しました。
エラは大きな深呼吸をして息を整えてから、ゆっくりと箒に乗ります。
ヴィオルは行くよとエラに確認を取り、その確認にエラは大きく頷きました。
その様子を見て、ヴィオルは少しだけ箒を浮かせ、自分達の空間を大きなシャボン玉のように囲みながらガードして、そして空へと飛び立ちました。
その姿を見た前公爵夫人は、即座にガードをより強化して、2人の成功を祈りました。
地上から約200メートル離れたところにやって来た2人。
ヴィオルは高いなと不安な言葉をと少し漏らしましたが、その反対にエラは高さに関しては全く不安はありませんでした。
ヴィオルはせいぜい100メートルぐらいしか飛んだことしかないのに対して、エラは先ほどは1キロメートルほど飛んでいたので、その約5分の1の高さは、然程高いとは感じません。
高さに関しては正反対な印象を持った2人ですが、前にいるドラゴンには2人とも大きな恐怖を感じていました。
ドラゴンの目は怒りを露わにしており、また大きな口から炎を出して、今かと自分達を襲うのではないかと感じるのです。
エラはいつ、どの角度で、またどのタイミングで、魔力の核を撃てば良いのか、すぐには予測がつきませんでした。
これはヴィオルと最初から最後まで協力し合い、タイミングを合わせて狙うしかないと言うことをエラはその場にして理解をしたのでした。




