魔力の核と弓
魔力の核は首のちょうどど真ん中にあるため、後ろから狙うというのは物理的に不可能でした。
そのため、狙うとしたら、正面からか横からかのどちらか2択になります。
正面からだと撃てる表面積は大きいものの、自分達が直接炎に当たる可能性が高まるので、エラは横から撃つことにしました。
「ヴィオル、魔力の核の真横から撃てるような位置に移動して」
「分かった」
ヴィオルはエラの指示通りにすぐさま後ろからドラゴンの横側へと移動します。
ドラゴンはまだこちらが近づいていることに気づいておりません。
エラは今がチャンスとすぐに弓を構えて、しっかりと標的に合わせていきます。
これで大丈夫だと確信して、 矢を放ちました。
しかし、弓を放った時には、ドラゴンはこちらが狙っているのに気づき、首を横に向けて炎を吹きました。
すると、矢は最後まで魔力の核には届かず、炎に飲み込まれていきます。
いつもならエラのところへと矢が戻ってくるのですが、今回初めて矢は返ってきませんでした。
「何で矢が届かないの?」
今まで矢が他に阻害されることがなかった分、エラは困惑してしまいます。
また、矢は前公爵夫人からいただいたものだったので、1つ無くなってしまい申し訳なくなりました。
「エラと魔力の核の魔力の源が同じだからだ」
ヴィオルは次のように説明しました。
魔力の源になるものが違うものであれば、それぞれの魔力が発揮され、介入することは出来ません。
しかし、同じ源であるとそもそも魔力が打ち消し合っていきます。
その結果、魔力が大きい方が残り、その残った分の魔力が発揮されるのです。
そのため、ヴィオルの防御の魔力の源である月の魔力は、火の魔力と相容れないため衝突はしませんが、エラの攻撃の魔力の源である火の魔力は、ドラゴンが持っている魔力の核の源である火の魔力と衝突してしまったというわけでした。
ヴィオルは正直魔力の核の量が多くあるのは分かっていましたが、エラの魔力で放った魔法の矢が一瞬にして負けてしまうのは予想外であり、これは魔力の核を破壊するのは、ハードルがやはり高いと実感してしまいます。
「ということは悠長に弓を構えてられないと言うことね」
エラは矢を無駄には出来ないと、絶対に次で魔力の核を撃ってみせると力が入りました。
一旦2人はドラゴンから離れて様子を見ます。
暫くするとドラゴンは元の姿勢に戻ったため、もう一度後ろから少しずつ近づき、エラ達はタイミングを図りました。
エラはすでに弓を構えて準備は万端。
これでいつでもその場で撃つことが出来ます。
そのため、更にドラゴンに近づき、真横に来た時に今度はすぐさま矢を放ちました。
すると、ドラゴンには気づかれず、弓は真っ直ぐに魔力の核へと的中しました。
「当たったわ。これで本当に終わりね」
エラはど真ん中に当たったことを喜び、思わず声を出して喜んでしまいました。
ヴィオルは声には出さなかったものの、無事に魔力の核を撃てたことに安心しました。
「ガオ…………ガオーーーー!」
しかし、2人の予想に反して、ドラゴンは大人しくなるどころか、寧ろ反対に最初の時よりも大きな声を出して大暴れをし始めました。
2人に向かって吹かれる炎は、先程よりも何倍も強くなったため、気が緩んでいたヴィオルは慌ててバリアを張って難を逃れたものの、ヴィオルの魔力は先程よりもかなり多く消耗されていきました。
「どうして当たったのに凶暴化しているわけ?」
エラには現在の状況が全く理解が出来ず、また魔力の核を破壊することができなかった怒りもあり、ついキレてしまいます。
そのため、体勢が崩れてしまい、箒から落ちそうになります。
ヴィオルは咄嗟に振り向いてエラの手を掴み、何とかエラを元の体勢に戻して、このことについての説明をし始めました。
「エラ、どうやら真正面から魔力の核のど真ん中を撃つしか方法はないみたいだ。横からだと本来の魔力の核から反れるらしい」
魔力の核は本当に小さいもの。
その大きさに全ての力が集まっているのです。
ただそこには光が発生するため、本来の魔力の核よりも大きく見えるのです。
つまり、エラが当てたものは、魔力の核ではなく、魔力の核から発している光を当てたため魔力の核は破壊されなかったのでした。
そして、下手に魔力の核から発する光に当てたため、魔力の核が強く反応し、よりドラゴンを凶暴化させたというのです。
ヴィオルは、魔力の核の正確な大きさは分からず、ここまで小さいものだったのは完全な誤算でした。
もし、ここまで小さいと知っていたら、何が何でも魔力の核を撃たせようとはしなかったでしょう。
今からでもドラゴンの命を狙うべきなのか、ヴィオルはこれからどうすれば良いのか分からなくなりました。
「ヴィオル、真正面から魔力の核を撃つわ。でも、タイミングは何回かしないと掴めない気がするの。だから矢が何本か燃やされると思うけど、後で前公爵夫人に一緒に謝ってくれない? こんな高価なものを大量に無くしてしまうのを1人で謝れる自信がないから」
エラはヴィオルに撃つという決意と前公爵夫人への謝罪の協力をを真剣に頼みました。
ヴィオルはまさかエラが、魔力の核のことではなく、矢と前公爵夫人のことを心配していることには驚きましたし、また思わず笑ってしまいました。
エラは何で笑うのよと頬を膨らませております。
エラには、魔力の核を撃つという選択肢しかないのだと分かり、ヴィオルは安心と心強さを感じました。
「じゃあ、もう真っ向勝負しかないな」
「うん」
2人は目を合わせていないものの、2人は意気投合して、魔力の核を撃ちに行くことを決めました。




