シンデレラは魔法のコントロールを訓練する
まず根本的な問題点として、膨大な魔力があるにも関わらず、その魔力の量をコントロール出来ていないことでした。
これは、どんな魔法を使う時でも大切なことであり、魔力が少な過ぎると魔法自体が使えず、多過ぎると魔力が暴走して、魔力保持者だけでなく、その周りの人達を危険にさらす可能性が高まります。
実際エラは、コントロールが出来ていないことにより、落下しそうになっていました。
このままで落下死するのは時間の問題です。
そのため、前公爵夫人は最初に魔力をコントロールの仕方を教えることにしました。
「まずは一旦深呼吸でもして、心を落ち着かせましょうか」
エラは前公爵夫人の指示に従い、ゆっくりと時間をかけて大きな深呼吸をしました。
前公爵夫人の言う通り、エラの心は少し落ち着きます。
リラックスしているエラの姿を見て、前公爵夫人は続きの説明をしました。
「落ち着いたら箒を持ってみて。持つ時は力を入れすぎずに普通に持ってね」
エラは箒を持ってみたものの、どのぐらい力を抜いたら良いのか分からず、軽く握ると箒の重さで箒が地面へ落ちてしまいました。
「さっきよりも少し力を加えて」
エラは落とした箒を今度は先ほどよりも力を入れて持ち上げると、今度は箒が暴走し、前の時と同様にブンブンと振り回されます。
前公爵夫人は慌てて杖を振り、箒の暴走を止めて、エラを地面にゆっくりと下ろしました。
エラは前の時よりも回転したせいで、目が更にグルグルと回り、視界が歪んで見えたのでした。
また、同時に三半規管もやられたため、平衡感覚が崩れ、少しの間立ち上がることが出来ませんでした。
その様子を見た前公爵夫人はどのようにアドバイスをしたら良いのか悩んでしまいました。
どうやら普通に教えるだけでは、分かってもらうこと無理そうです。
的当てのように浮遊魔法もコントロール出来たら良いのにと思った時、これはイケるかもと言い方を少し変えて次のようにアドバイスをしてみました。
「弓を手に取って持つ時と同じような感覚で箒を持ってみて」
そもそもエラは的当てではきちんと魔力をコントロールすることが出来ていました。
エラは魔力のコントロール自体が出来ないのではなく、ただ単に浮遊魔法でのコントロールが出来ないだけなのです。
つまり、その的当ての時のコントロールの仕方を、浮遊魔法でのコントロールの仕方に応用さえ出来れば、簡単に出来るようになるだろうと考えました。
エラは、前公爵夫人のアドバイス通り弓を持つ時と同じような感覚で箒を持ってみると、落ちることも暴走することもなく自然に箒を持つことが出来ました。
前公爵夫人も何事も問題がないことが分かり安心します。
どうやら的当てに置き換えさせれば上手くいくのだろうと思い、前公爵夫人は続いてこのようなアドバイスをしました。
「次は弓を構える時のように少しずつ力を加えていって。弓を引いても良い頃合いだなと思った時と同様に、飛んでも良い頃合いだなと思った時に飛ぶのよ」
こちらも同じように、エラは弓を構える時のように力を加え、引く時と同じタイミングでビビデバビデブーと唱えました。
すると、真っ直ぐ上に向かって浮遊していきます。
ただし、その速さは尋常ではなく、1番最初に飛んだ時よりも高く浮遊していきます。
エラはどのように降下させれば良いのか分からず困惑してしまいました。
前公爵夫人は慌てて箒に乗り、エラの飛んだところまで急いで追いかけます。
30秒ほど時間をかけてようやくエラが浮遊した高さまで追いつきました。
少し体力が削がれながらも、杖を振り、魔法を止めてゆっくりと下降させたのでした。
エラは先ほどのように平衡感覚がおかしくなっていると言うわけではありませんが、失敗が続き精神的にも肉体的にも少し疲れが出てきました。
そのことを察した前公爵夫人は「お茶にしましょう」と魔法でお洒落な丸いテーブル1つと上品な椅子を2つを用意し、エラに座るよう促しました。
エラは見慣れない物で少し緊張してしまい、浅く椅子に座ってしまいます。
その様子を見た前公爵夫人はエラが座っている椅子を前に寄せて、しっかりと座らせました。
そして、魔法で保温されていたポットとティーカップを魔法で取り出します。
前公爵夫人は右手で取ってを握り、左手で蓋を抑えながら、高い位置で優雅にお茶をティーカップに注ぎました。
とても芳しい紅茶の香りが漂い、少し離れていてもダージリンの香りだと分かりました。
エラはとても高い紅茶なのだろうと分かりつつも、美味しい蜜に惹きつけられた蝶のようにその紅茶の香りには抗えず、前公爵夫人のどうぞと言う合図と共にカップに口を付けました。
たまに飲んでいる義姉が入れた紅茶も十分美味しいのですが、基本はハーブティーと、ダージリンのように高級なものを最後に飲んだのは父子爵が亡くなる前のことなので、普段では味わえない大変美味しい味がしたのでした。
また、前公爵夫人はあるお菓子を取り出しました。
「マカロニ………じゃなくてマカロンだ!」
そこに用意されたマカロンは、ピンク・緑・紫・黄色・水色ととても鮮やかで、また1つが直径5センチほどとかなり大きなものでした。
ヴィオルとマカロニとマカロンの言い合いをした記憶が鮮明に思い出され、思わず笑ってしまいます。
前公爵夫人は、エラの笑いを見て、マカロンが好きなのかなと思い、全て食べて良いわよと微笑みました。
流石に全ては申し訳ないからと3枚マカロンをもらい食べることにしました。
とても久しぶりに食べたマカロンは、サクサクとしており、またほんのり甘く、紅茶との相性はバッチリでした。
紅茶を飲み終わり、マカロンを食べ終えた2人は訓練を再開することにしました。
「ずっと思っていたのだけど、どうしてエラちゃんは飛ぶときにはいつもビビデバビデブーと言うのかしら?」
前公爵夫人は最初から気になっていたものの、なかなか聞き出すタイミングがなくてうずうずしていたのでした。
「絵本とかでよく魔女ってビビデバビデブーと言って魔法を使っているじゃないですか。だから言った方が良いのかなと思って。それにいかにも魔法を使いますって感じでカッコよくないですか?」
前公爵夫人は何か特別な理由があるのかと思って少し期待きて聞いていたので、エラが大した意味もなく言っているだけだと知ると少しガッカリしました。
「エラちゃん、別に言う必要はないわ。普通そんなこと言わないし、寧ろそれで力が入ってしまうなら言うのは止めた方が良いわよ」
「え、え、え? えーーー?」
まさか言った方が良いと思って言っていた言葉が、寧ろ言わない方が良いと知りエラは大変驚いてしまいます。
また、お気に入りのカッコいい呪文が言えないことにガッカリしました。
「エラちゃんは良い線は行っているから、あと感覚を掴むだけよ」
前公爵夫人はガッカリしているエラに優しく声をかけて、箒に乗るよう指示しました。
エラは慌てて箒に乗り、しっかりと箒を握ります。
「そんなに手を握らないの。私が流している魔力と同じぐらいの魔力を流せる力で握ってごらんなさい」
前公爵夫人はエラが乗っている箒に右手を当てて魔力を流しました。
すると、流れてきた魔力の大きさを比較して、エラは弓を引くよりも少し弱めの力で良いのだと理解することが出来ました。
前公爵夫人はエラの理解している顔を見て安心し、エラにそのまま飛ぶよう指示しました。
エラは自信を持って浮遊をします。
すると、今までのように暴走することはなく、安定して浮遊することが出来たのでした。
あっと言う間に魔法のコントロール力を身に着けたエラ。
前公爵夫人はもう少し時間がかかると思っていましたので、これは期待出来そうだなと思いました。
少し早いですがきりが良いので、前公爵夫人はそれぞれのベッドを用意してそれぞれ眠ることにしました。




