運命の「客」
慎とは自宅の門戸を閉ざし、昼間に家人の出入りを禁止する刑罰だ。日の出ている間は家の者が外へ出かけることも帰ってくることもできない。ただし、客が来ることや帰ることは禁じられていない。
閉門は慎よりも重い刑罰で、文字通り門扉を鎖して窓を閉め、外部との接触を断つ。また昼夜ともに人の出入りが許されない。
叱は至極軽い制裁で、公的に叱責して罪をとがめるものだ。他人の前で失敗を責められることを恥と感じる人は多い。だからこれには羞恥刑の意味合いがある。
蟄居は閉門の上で自宅の一室に謹慎するものだ。自宅どころか部屋から出ることも許されない。
いずれにしろ、人の出入りが禁じられている間、主は仕事をできないわけであるから、追加刑罰として扶持の一部あるいは全部を取り上げられる可能性もある。
「なんであれ、わしや家の者はこの家の外には出られんし、外から人を呼ぶこともできんというわけじゃな」
この辺りの知識は、とうぜんながら清次郎にもある。
「はい」
「じゃがな清よ、お前は赤松家の人間ではない」
「義父上はおれを倅とはお認め下さいませぬか?」
清次郎は汁椀を持ち上げたまま、不満げに問い返した。
「まだ上に養子の届けを出しておらぬからな」
弘は沢庵を一切れ口に放り込んだ。コリコリと良い音がする。
「まあ聞け、清次郎。
もしわしの罰が慎くらいで済めば、昼間でも『客』の出入りはお目こぼしにされる」
「あ!」
清次郎は半ば空になった汁椀を膳に置いた。
不満が一気に解消され、脳の中の靄が晴れた。
「うむ。わしが慎を言い渡されたとしたなら、わしや女房殿や、それから権と直と、つまり身内の者は外出ができなくなる。
じゃがお主は違う。なにしろ、今の所お主はわしの身内ではない。
芦田清次郎は我が赤松家の『客』じゃから……」
「だから、昼夜問わず自由にこの家へ出入りすることが許される」
清次郎が膝を打った。
「そういうことじゃ」
弘はうなずいて、味噌汁の残りを飯椀の中に流し入れた。
「後は、へぇ、閉門だの蟄居だのにならないことを願うばかりよ」
苦笑いして、弘は汁かけ飯を啜り込んだ。




