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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP5『艦隊冷戦期』

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80/127

80: EP5-3 『Code:R』 寒空に香る硝煙:Ⅱ

もぐもぐ...

うん? 私に届け物だって? なになになんだって...?


.....L、なんでこんなものを...

私にMSCのクーポンなんて送ってどうしろって...?


...何考えてるんだろうね、アイツって...

コロニー協定連合体 "CAU"

西暦3020年5月18日[STC]

協定宇宙時(STC)23:16

木星(ジュピター)近傍宙域、惑星間航路073



『副長、こっちの増援は3機! 同じような型落ち野郎だ!』

『了解だ、セルジオ。 こちらの増援が片付き次第、サポートに移る。 ジャレッド、ディスラプターの出力はどうなっている?』

『変わり無し! 増援含め、引っ掛かった間抜けはまず逃げらりゃあせんさ。 間抜けが飛んで来た方向からしても例の廃棄コロニーからと見て間違いなしだ!』


第3艦隊所属、ネイヴィガー隊に課された任務は廃棄コロニーに潜んでいると思われる賊の『調査』だ

調査とは即ち目的の解明と再発防止であり、再発防止において最上の方法とは、原因を一掃してしまう事に他ならない


賊の使用する航路に最近実戦投入されたワープディスラプターを配置し、輸送艦を妨害、異常を察知し駆け付けた増援ともども逃がさず潰し、廃棄コロニーに存在する戦力を予め削りパニックに陥らせる――それがこの作戦のここまでの手筈だ

いくら彼らが手練とは言えど、対多数戦なら可能な限り少ない相手の方がいいのは当然の事なのだから


『ロビンは合図まで左の奴を引き付けてくれ。 俺は右と中央を片付ける。』

『了解しました。』


指示を受け取ったロビンの機体が視界から消えるのを確認すると、自分が、あるいは自分を標的とする相手を見据え、即座に後退を開始した


『さぁ、どちらが先か...』


当然、彼はこの状況で逃走を選ぶような人間ではない

二機左右の敵が明確に自分を追跡し始めたのを確認すると、40mmロングライフルを構え、そのまま後退を継続し...


『...右!』


右の機体が片割れを追い抜いた瞬間、即座にスラスタの出力を右側に集中させ、40mmロングライフルのマズルから火を迸らせた

先頭を飛んでいたネアス・アドニスの肩部装甲が砕け、バランスを失った機体は後続の機体と衝突した


『ロビン、今――』


彼が言い終えぬ内に、重なった二機のネアス・アドニスを一本の杭のようなものが貫いていた


『ダブル! 串一本の上がりだ。』

『他人に合図した瞬間に横取りするやつがあるか!』


ジャレッドに仕事を奪われた形となったロビンだが、大方予想はついていたようで


『まぁ、どうせそんなところだろうとは思ってましたよ。』


ため息と共に、引き付けていた敵機の白刃を体当たりで反らし、そのまま零距離となった胴体装甲に豌部ショットガンを叩き込んだ

目の前で敵機の装甲が砕かれ、この宙空でさえも轟音が響くように感じられる破砕の衝撃を無視し、射撃の反動で後退した豌部に握られた高周波ナイフを構え――


『は...ッ!』


露となっていた機関部に突き立てられ、敵機は気絶したかのように静かに機能停止した


『見事なワンツーパンチだ。まぁ右腕だけだったが... 肩のトルク出力を上げろってのはこういう事だったか。』

『そんなところですよ。 出来るだけバラさずに仕留めるのがお望みだったようですからね。』


ロビンは淡々と、だが同時に少しばかり誇るようだったが、すぐに任務へと向き直った


『それで、副長。そちらの状況は?』

『こちらも片付いた。 ...とは言っても、俺は殆ど何もしていない。 ジーナとジャレッドが好き放題に暴れまわったからな。 ジャレッドは人の皿にまで手を出すほどだ。』

『残り物を美味しく頂いただけですよ、副長。 綺麗になっただろ?』

『残してねぇ!』

『こっちもまだまだ暴れ足りてないけどな。 何せこれからが本番なんだろう、副長?』

『その通りだ。 でなければわざわざカンペアドールを後方待機などさせんさ。』


クランツがややわざとらしく通信画面のリグを見たが、それに対してリグは軽く笑いを返した


『お預けだったのは不服だが、これから存分に楽しませてもらうさ。』


そう、ネイヴィガー隊長のリグ・マルコシアス及びその機体、カンペアドールという最高戦力はこの戦闘においてまだ温存されていた

それは即ち、この戦闘が余興であり、最高潮が待ち構えているという事に他ならない


そしてそれが始まろうとしている


この作戦の統括者である第3艦隊艦長、エンスウェンからの連絡が入る


『各機、機体の状況をチェックしろ。 特にジーナ、弾薬は残っているか?』

『殆ど剣で片付けたんだ、まだ8割は残ってる。 それに、破壊活動には弾薬と爆薬が不可欠だからな。』


作戦前の怠惰極まりない態度はどこへやら、これから始まる戦闘への期待を隠そうともしていない

ジーナに続き、各機のコンディションに問題が無い事を確認し、エンスウェンが声を張り、号令をあげた


『全員、機体をドロップシップに搭乗させろ。 例の廃棄コロニーに突っ込むぞ!』






「何度やってもダメだ! 救助隊含めて出てった奴らの通信は完全に途絶してる!」

「ついに嗅ぎ付けられたか... 第一、CAUの領域内で堂々とゴミ漁りしろなんて――――」


廃棄コロニーに巣食っていた者たちの会話は、破壊と爆炎の轟音によって容易く中断された






STC00:03

木星(ジュピター)近傍宙域、木星圏廃棄コロニー群(JWC)057

コロニー内部、廃市街区画付近


『オルグ、JWC057に突入した! 掃討を開始する。』

『了解だ。 外部スキャンによれば、どういうわけかコロニーの電力、それとダメージコントロールはまだ生きている。 外壁に大穴を開けたとはいえ、内部は低重力環境が保たれると予想される。 噴かし過ぎるなよ。』

『電力もダメコンも生きている? このコロニーは廃棄されてしばらく経つだろう。 いくらなんでもエネルギープラント...EWEのエジタイトは切れているはずだ。』

『そのはずなんだがな。 ここにいる連中がエジタイトを供給し勝手に再起動しているんだろう。』


コロニー内部に先陣を切って突入したリグとそのカンペアドールは、賊が拠点としていると思われる旧市街エリアを捉えると、重力上における地に脚を付け、カンペアドールの暴力的なスラスターを噴かし、左豌部の武装を軽く持ち上げた

カンペアドールの豌部には試作装備として、単発式プロジェクタイルランチャーが搭載されているが、これにリピーター内包の追加機部、炸薬弾用の大型マガジン、ロングバレル、そして前面シールドを装備することで、機関砲として運用可能になっている

破壊活動にうってつけの追加武装というわけだ


そしてこれが、重力下において振るわれようとしている

賊にとっては最後の悪夢の始まりであった

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