表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP4.5 『Code:K』アナザーストーリー: グラウンドアサルト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/129

72: EP4.5-4 『Code:K』 グラウンドアサルト:Ⅳ

遠い時代、惑星の外は人の手の届かない領域だったそうだ。

...覚えている限り、私の時代でも全てが自由になる場所ではなかったはず、だ。


それを限定的にでも成し遂げていたのだから、彼女らは一体何だったんだろうね。

私と同種にしたって...いや、彼女がオリジナルだとしても...

西暦3020年4月2日[STC]

協定宇宙時(STC)19:12、火星新太平洋西時間(MNPWT)10:12

火星(マーズ)地表、メシヌ盆地西部、森林地帯

CAU正規軍第4バトルワーカー大隊、『ストライカー』分隊



森の直前で歩兵部隊が結集していた

各歩兵分隊はコルセアの爆撃と火力投射の後、地雷の解除を行い、バトルワーカー隊に合図をするというものだった

だが...


「歩兵戦闘なんて経験ないぞ?」

「この銃ってどうやって使うんだよ?」

「森の中での戦闘経験なんかあるわけがないだろ...」


殆どの者はコロニー内ですら戦闘したことのない、訓練も一応した、という程度の練度だった

対して相手は地球圏をはじめとした惑星を支配するベテラン揃い、士気は芳しくなかった

そしてそんな歩兵部隊を横目にストライカー分隊は歩いていく


「おい、あんたらどこ行くんだ?」

「大佐ご指名の特殊任務に。」


ジャックはそう言った

分隊の装備の中でもジャックの装備はより実戦的だ

動きやすいプレートキャリアに緊急用の発煙筒とサイリウムを数本、艦隊直結のGPS、火打ち石...

ベイカーがあまりの気の配りように遭難したことを前提にしたら縁起が悪いとからかう






「で、どうやって降りるんだ、分隊長殿?」

「からかうなよ、ベイカー。」


ジャックは少しむっとする


「ジップラインですよ、ベイカー。」


アダムが背負っていたのは携帯式のジップラインだった


「谷底まで届くんだろうな、アダム...」


ジャクソンは心配しているようだった


「500mまでなら。」

「そんなら大丈夫っしょ、軍曹、まさか怖いんですか?」

「相当深いと聞いた。 落ちたら即死なんだぞ。」


ジャクソンはベイカーを戒めるように言った


「まぁ、そりゃあ確かに...」

「着いたぞ。」


分隊を迎え入れたのは大きく口を開いた谷底だった


「ここに行くのか?」


ベイカーはジップラインを設置するアダムに聞いた


「大丈夫、このジップラインは800kgまで安全に輸送できます。 ここの地質も固定するには十分な強度を持っています。」

「なるほどな...」


ベイカーは深呼吸した



「最初に行こう。」


ジャクソンはハーネスから伸びる固定具をジップラインに取り付ける


「怖かったんじゃ?」

「この程度なら大したことはない、落ち着けベイカー。」


そう言い残して遥か谷底へとジャクソンは降っていく


「マジか...」

「お先です。」


アダムも手慣れた手つきで降りていく


「ベイカー、安心しろ、落ちたら拾ってやる。」


ジャックがそう言ってベイカーの金具を取り付ける


「待て待て待て。」

「時間ないからな、行ってこい。」


ジャックがベイカーを押して出発させる

ベイカーの悲鳴は徐々に遠くなっていった


「さて。」


そして最後にジャックが降りていく






「死ぬかと思ったぜ...」


谷底には柔らかい砂が堆積しており、着地の衝撃を和らげた

それでもベイカーは息絶え絶えだった


「進もう、時間を無駄にはしないほうがよさそうだ。」


ジャックが先導して歩き始める

谷底に光はほとんど届かない

だが、ライトを付けるほどでもない

谷底はかつての火星のように酸化鉄を含んだ土地であり、その赤い通路がずっと続いている


「敵がいる可能性は?」

「わかりません。 何も情報がありませんから。」


ジャクソンの問いにアダムは首を振った


「かつての火星はこんな場所が延々と続いてたらしいな。」


ベイカーが砂を拾い上げながらそう言った

手のひらからサラサラと流れ落ちる赤い砂はコロニー育ちの彼らにとっては新鮮な光景の一つだ


「そうですね、テラフォーミング前は大気も薄くて住むどころじゃ無かったらしいです。」

「物知りのアダムでもらしいって言葉を使うんだな。」

「テラフォーミング前って、数百年は前の太陽系大戦以前の話ですよ? 何も残ってませんよ。 当時から伝わってるのは伝承みたいな話ばかりで、テラフォーミング前の火星の姿なんてそうらしい、くらいしか。」


あの戦争でその時生きていた人々も情報もほとんどが失われた

話題にしているテラフォーミング技術もそうだが、今ある技術を持ってしてでも再現できないロストテクノロジーは未だ数多く存在する


「そうだな... でも住めなかったのは本当だ。 火星は生存可能圏(ハビタブルゾーン)外で寒かったから。」


ジャックは付け加えるようにそう説明した


「マジか、冬くらい?」

「-100℃。」

「あぁ...」


その途方もない温度にベイカーは言葉を失った


「よく知ってますね、ちなみに出身はどこでしたっけ?」

「あー..冥王星の...PPC(冥王星近傍コロニー)057、多分。」


ジャックはそう思い出すように答えた


「多分? なんだそりゃ?」

「よく覚えてなくて、医者には戦闘中に頭ぶつけたからじゃないかって言われてる。」

「大変ですね。」

「もっかい頭でもぶつけりゃ治るんじゃ...ん?」


ベイカーが立ち止まり、3人も立ち止まる


「どうした?」

「なんか足に当たったんだよ。」


ベイカーの足元には金属の板のようなものがあった

見た感じ地雷ではない


「地雷じゃねぇな? なんだこれ?」


持ってきていたスコップで少し掘り出すとカメラのような物が出てきた


「レンズ付きのカメラ? 下に続いています。」


どうやらそれは下にある本体から伸びているようだった

さらに四人は掘り下げる


「こいつは...」

「無人機みたいですね。 ...だいぶ無骨なデザインですが...」


そこにあったのは6輪のタイヤを持つ平べったく、上に伸びたカメラが付いた無人機らしき物だった


「...キュリオシティ。」


そう漏らしたのはジャックだった


「なんだそりゃ。」

「かつて、テラフォーミング以前に送り込まれた探査機だ。 マーズ・サイエンス・ラボラトリーという宇宙船に乗せられて火星を探査した...」

「へぇ、じゃあこいつは1000年前の代物ってわけか?」

「あぁ。 まさか現存していたなんて。」

「HQ、黄金時代以前の無人探査機を発見、タグをつけた。 回収を頼みたい。」


ジャクソンが通信を入れた


「なんて?」

「大至急向かうと。」

「こいつは本部に任せて先に進みましょう。」


ジャックは道をまた歩き始める


「いつまで続くんだ? あ、終わるまでは無しで。」


ベイカーはあらかじめ予防線を張った


「お前が黙れば終わるさ。」


ジャクソンは手法を変えた


「勘弁してくれよ...」

「あともう少しだ。」


ジャックはそう言ってベイカーの肩を叩いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ