71: EP4.5-3 『Code:K』 グラウンドアサルト:Ⅲ
いやぁ、楽でいいね。
西暦3020年4月2日[STC]
協定宇宙時00:00、火星新太平洋西時間15:00
火星地表、メシヌ盆地西部
CAU正規軍第4バトルワーカー大隊、『ストライカー』分隊
戦闘終了の3時間後、歩兵部隊が簡易的に編成され、塹壕内の調査が行われた
しかし、そこは既に何も無く、周囲に広がる荒地には車のタイヤ痕だけが残されていた
そして予定通りならば都市部近くの基地に向かうはずだった
「ストライカー隊、伝達事項がある。」
スコルピオンから降り、小休憩中だったストライカー隊に声をかけたのは、この侵攻部隊を率いる正規軍、ハルバー大佐だった
非常に厳しい人物で、わざわざ会いたがる人間はまずいないだろう
「なんでしょうか、ハルバ―大佐。」
ジャクソンが隊を代表し応答する
ハルバ―が手にしたデータパッドを近くのテーブルに置きながら隊員に手招きする
設置されていた簡易的な3Dホログラムプロジェクターから周囲の地図が投影される
「簡潔に行くぞ、1時間前のことだ。 我々の進路上である森林地帯に対バトルワーカー用地雷が仕掛けられていることが偵察によりわかった。 これによりバトルワーカーは森林部を進めない。 森林までの平原地帯に展開してる敵防衛網を破壊した後、森に到達したら歩兵部隊のみで進む。」
「それなら俺たちだけに説明する必要ないでしょう。 もっと大きく、分隊長だけを集めたらいいはずです。」
ベイカーがそう言う
確かにここまでならただのブリーフィングだ。しかし、大佐の本題はここからのようだった
「その通りだ。 君達の活躍は前々から聞いている。 随分と機転が効くこともな。 だから君達には別の任務を与える。」
ハルバ―はジャックの頭脳に期待しているようだった
ジャックはCAUの中でも珍しく豊富な対人戦闘の経験がある
軍に入る前は、治安組織の一員として様々なコロニー内で蔓延る犯罪組織をいくつも片付けてきたのだ
ハルバ―がデータパッドを操作し、3Dホログラムの地図を更新する
森林地帯の南にある峡谷地帯のようだ
「君達は森林部まで到達したらそこ伝い南に向かい、カシオペア峡谷に降りるんだ。 最下層はそのまま西へ、例の基地の近くまで続いていることが艦隊からの偵察で判明している。」
「分かりました。」
ジャクソンが敬礼をした
すると大佐が首を横に振る
「いや...指揮は彼に執ってもらおう。」
そう言ってジャックを指さした
「俺ですか?」
「そうだ、君を軍曹に昇格させる。 部隊の指揮を執れ。」
「しかし...」
「適材適所だ。 君は対人戦闘におけるプロだ。 そうだろう?」
「...はい、分かりました大佐。」
「よろしい、作戦は明日の朝には開始する。 よく身体を休めておけ。」
そう言うと、ハルバ―は命令書や、ジャックの昇格を命令する文書データをストライカー隊に送り、去っていった
STC17:06/MNPWT08:06
『しかしまぁ、森に着いたらジャックが指揮官になるなんてなぁ。』
『上の指示だ、仕方ない。』
ジャックはため息をつく
他人にこうやって期待されるのは苦手だ
指揮はできないことはないが...
『私のことは気にするな、無駄な階級争いは死に直結する。 優秀な者が指揮を執る、それが一番だ。』
そう話をしていると上空を切り裂くような音で飛翔するモノがあった。
『ミサイルか!?』
『いや、戦闘機だろう。』
ジャクソンが全員のコックピットモニタのHUDに情報を表示させる
アダムが続けてそれを補足する
『コルセア、我々の航空機ですよ。 今はまだ開発中だそうですけど、武装はなんでも積めます。』
『お手並み拝見だな。』
作戦では近接航空支援を合図に敵を殲滅する作戦だ
そして、敵陣地で大爆発
まるで風圧がコックピット越しに伝わってくるようだった
『全員戦闘開始だ!!』
『射撃開始。』
スコルピオンの新装備の一つ、ロケットランチャーポットから大量のロケット弾が発射され、ESFのネアス・アドニスを焼き尽くす
『一気に押し込むぞ! 全員続け!』
スコルピオンのロケットポットは使用後パージされ、地面に落ちる
そして、脚部の接地部分にあたるローラーが高速で回転し、動き始めた
『右だ!』
防御性をコックピット部以外投げ捨てたことで、常識からは信じられないほど軽いスコルピオンは当然、常識外れな速度に達する
まともなパイロットなら捉えることすら出来ないだろう
そして、右側から射撃してくるバトルワーカーをジャックは主砲で吹き飛ばした
『クリア。』
味方のライラ・ジーナの隊列をすり抜けるように移動し、被弾することも恐れずストライカー隊は進む
先陣に立ち、敵を叩き伏せる、それがストライカー隊だった
それは例え地表であっても変わらない
命知らずだ、そうライラ・ジーナのパイロットの誰かがそうこぼした
速度が速く、威力に優れ、全高が低いとは言えども敵の攻撃の真っ只中をすり抜ける行為は普通の人間はできない
『次だ...!』
10mあるか無いかの距離でスコルピオンの主砲が発射され、ネアス・アドニスの上半身を粉々に吹き飛ばす
『エネミーダウン...!』
敵の最前線で敵を喰い散らかすサソリ達は止まることなく、次々と敵を破壊する
『そこのやつ! 後退しな!!』
ベイカーは戦闘中のライラ・ジーナが避けたのを確認すると、ハードポイントに追加装甲が施されたネアス・アドニスに向かって12.7mm機銃を掃射した
毎分1200発の発射速度を持つ機関銃が6秒以上発射され、敵の装甲を貫通する
『主砲使うまでもねぇな。』
ベイカーはそう吐き捨てるなり、次の目標を探すのだった
『しまった...!』
ジャックは気が付けば数機のネアス・アドニスに囲まれていた
回避行動までの余裕はない
『ジャック! 援護する!』
ジャクソンとアダムの放ったロケットポットが敵をかき乱し、混乱させた
『支援感謝する!』
ジャックは急激に機体出力を上げ、前方を塞ぐネアス・アドニスの直前で急速に旋回、ブレーキを踏んで機体を体当たりさせた
スコルピオンの全高は低く、バトルワーカーの脚部までくらいしかない
衝突したのは一番頑丈であるコックピット装甲、対してネアス・アドニスの衝突位置は比較的脆い脚部
ジャックはそのまま180度回転し、後退する
そして、脚部を破損したネアス・アドニスを主砲で破壊した
『クリア...』
ESFのバトルワーカー部隊が撤退を始める
恐らくは不利を悟っての撤退だろう
警戒を維持しながらも、CAUの作戦は第二段階へと移行する...




