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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP4.5 『Code:K』アナザーストーリー: グラウンドアサルト

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70/129

70: EP4.5-2 『Code:K』 グラウンドアサルト:Ⅱ

うんうん、たまにはこういうのもいいね。

西暦3020年4月1日[STC]

協定宇宙時(STC)18:00、火星新太平洋西時間(MNPWT)09:00

火星(マーズ)地表、軌道エレベータブラボー、基部基地

CAU正規軍第4バトルワーカー大隊、『ストライカー』分隊



基地に戻った翌日、ストライカーの隊員達はジャクソンの報告を待っていた


「ジャクソン軍曹、どうでした?」


ジャックは資料を持ってやってきた軍曹に聞く


「追加装備と増員が許可された、一人だがな。」


ジャクソンの横には眼鏡を掛けた若いパイロットが立っていた


「アダムです、専門は情報解析と整備です。」

「アダムも加わったことだ、改めて我々がすべきことを確認するぞ。」


ジャクソンはホワイトボードに地図を貼り付ける

火星の地図だ


「我々はこの後、西への進撃へと参加する。」

「西だって?都市しかないぜ。」


ベイカーが地図の上、西の大都市を指さした

人口も規模もあるが、位置からしてそこまで戦略的な利益はないだろう


「火星降下後、軌道上に展開してる艦隊がこんなものを見つけた。」


ジャクソンは地図の上から写真を貼り付ける。


「デカいな...」


都市部のすぐ近くの荒れ果てた地に佇む巨大な建物、恐らくは基地だろう

軌道上からの写真だが、その規模はここ、軌道エレベータ基部の基地の倍はあるだろうことが読み取れた


「滑走路も格納庫もないですから陸軍基地ですかね? でも奇妙ですよ、西に撤退したESFはそこまでの数ではなかったはずです。」


アダムは不思議そうな顔をして写真と地図を何度も見る。


「そりゃ、遠いからだろ。」


ベイカーは付け加えて、西に向かった奴は地図を読むのが下手だったんだろ、と言った


「いや...」


ジャックは立ち上がり、都市部を指さす


「こちらの交戦規定では事情がない限り都市部の攻撃は禁止されている。 もちろんESFもそれを知っているはずだ、戦前からよく知られていたことだしな。 確かに遠回りだけど逃げるならこっちの方が安全だ。 都市部で補給をして、民間機で西の軌道エレベータチャーリーに向かえば、こちらは追撃が困難になる。」

「確かにな...」

「ともかく、我々の作戦は陽動だ。 都市部に近づいてくる敵を見過ごすほど愚かじゃないだろう。」

「貧乏くじかよ、最高だな。」


ベイカーは呆れてソファーに座った


「そう言うな、重要な役割だ。」

「軍曹、作戦はいつに?」

「2時間後だ、準備を整えておけ。」






「アダム、詳しいんだろ? 説明してくれよ新装備ってやつを。」


格納庫で各々がコックピットで武装チェックをしている中、ベイカーは通信で聞いた


「12.7mm機関銃が2つずつになりました。 それからロケットランチャーポッド。 それに脚部はもっと頑丈になって30mの高さから落下しても衝撃を吸収しますよ。」

「そいつはすげぇや。」


ジャックはその通信を横目に武装システムのチェックを黙々と行う


「準備が整い次第、行くぞ。」


彼らの任務はシンプルだった

火星の大都市に向け侵攻する

そうすればESFは西方面に戦力を割かねばならないようになる

そうして東に対しての増援の余裕を削ぐのだ

だがこれは簡単な囮役ではない

火星の地形は彼らにとって未経験の戦場であり、過酷だ

そして、そこは火星の中でもテラフォーミング前の荒々しい地形が残されている






STC20:52/MNPWT11:52

火星(マーズ)地表、メシヌ盆地



火星のメシヌ盆地はヘラス盆地の次に巨大なクレーターであると共に、黄金時代初期に行われたテラフォーミングの代表的な失敗例だとされている

当初は湖を作成する予定だったが、失敗が重なり、修繕にとてつもない期間のかかるような超巨大な沼地を完成させてしまったそうだ

建築物と相性は絶望的であり、地理的にも価値がないこの場所は放棄され、それ以来、現代に至るまでこの状態だ

普通ならこんな沼地を防衛する必要はない

しかし、この盆地を越えれば大都市が存在する

軍とは文民を守るためにあるのだ

例え戦略的に不利だったとしても、戦わねばならない

ESF軍は都市部に接近するCAU軍を察知すると、撤退せずにすぐに防衛体制を構築した

有り合わせの要塞を築き上げ、周囲の部隊を可能な限り集結させていた



『こちらベックスタロン、アルテミス3-4、攻撃可能範囲に入り次第、攻撃を開始せよ。』


作戦司令部から指示が入り、まず初めに応援に駆け付けた航空機─アルテミスのコルセア─による攻撃が行われた


『ストライカー隊、いけ!』


ストライカーが司令部の指示のもと、行動を開始する


『こちらストライカー2、射撃開始。」


ストライカー隊の2番機はジャックの機体であった

目標をESFの戦車に合わせ、砲撃

すると着弾した弾は遥か上に飛んで行った


『跳弾か。』

『なんだ!? あいつら全然弾が入らねぇ!』


ベイカーが180mm砲を3発同じ場所に撃ちこんだにも関わらず、ESFの戦車は何事もなかったかのように動き、攻撃をしてくる

ESFは地上車両にも重装甲での設計思想があり、防御力が高い重戦車を配備していた

実質破壊できるとすれば、230mmの徹甲弾くらいだろう


『このままじゃ死ぬぞ!』


右に展開していたバトルワーカーが一撃で行動不能となった

下手な二足歩行兵器よりも、履帯でしっかりと地面に足をつけている兵器のほうが強力な砲を積んでいるのはおかしなことではない


『ダメだ! 安全な場所に移動するぞ!』


ストライカー隊はより後方の大きな岩へと下がる


『何とかしないと俺たち全滅だぜ。』


ベイカーがペリスコープで敵の戦車を見る


『曲射しましょう。』

『どういう意味だ?』


ジャックの発言に全員が首を傾げた


『上空に撃ち上げて、上部装甲を攻撃します。 確か、前に聞いた話が正しいなら、ESFの地上車両は上面装甲が薄いはず。』

『名案ですね。』


アダムはすぐに同意し、スコルピオンを地面に固定させる


『やるしかねぇか。』


ベイカーとジャクソンも続く


『方位231、80度。』


スコルピオンの砲身がほぼ垂直に向き、停止する


『撃て!』


四回砲撃が続いた

そして、2秒ほど経った後、着弾と爆発が同時に起こった


『やったぞ!』


ベイカーが吹き飛んだ砲塔を見てそう言った


『引き続き射撃を行うぞ! アダム、続けて観測して座標を示してくれ。』

『はい軍曹!』


アダムはスコープのレティクルを戦車に合わせ、表示される座標を見る


『237、60度!』

『射撃。』


ジャックは素早く機体の姿勢を変え、射撃した


『命中!』

『次、265、78度。』

『了解。』


砲撃が行われ、次弾が装填される


『最後、326、64度。』

『射撃。』

『オールクリア! 敵戦車部隊を壊滅!』


戦車部隊がいなくなり、援護を行なっていたバトルワーカー隊が動き始める


『こちらハンター6! ストライカー隊! グリッド127に支援を要請する!』

『了解。』


ジャックが応答し、位置を合わせる


『砲撃開始。』


トリガーを引き、砲弾を発射する

ジャックは立て続けに5発撃ち、成果の確認をする


『助かった、ストライカー。 支援に感謝する。』


拠点防衛用の最低限のバトルワーカーしか準備していなかったESFは前進するCAUバトルワーカー隊の前になす術もなく撃破されていった

そしてバトルワーカーが壊滅すると、残った歩兵部隊も散り散りになって塹壕に逃げていった


『おい、どうすんだよ軍曹。』

『上の指示を待つ、今回はジャック、お前の戦果だな。』

『いえ、俺は別に...』


はっきり言ってあの状況で明確な戦術を提示して実行に移せるジャックがいなければ全滅だった

それは紛れもない事実だった


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