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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP4.5 『Code:K』アナザーストーリー: グラウンドアサルト

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69/129

69: EP4.5-1 『Code:K』 グラウンドアサルト:Ⅰ

ようこそ...Code:K。

歓迎するよ。

西暦3020年3月31日[STC]

協定宇宙時(STC)20:00、火星新太平洋西時間(MNPWT)11:00

火星(マーズ)地表、軌道エレベータブラボー西部、森林地帯

CAU正規軍第4バトルワーカー大隊、『ストライカー』分隊



『しかしまぁ...暑いとこだなぁ。』

『コックピットはクーラーが効いてるはずだが。』


森の中を進む大きな物体、長い砲身を背負うように搭載し、6足の足でゆっくりと進むバトルワーカー、スコルピオン

いや、バトルワーカーという表現は相応しくないだろう

人型機能を削除され、地上での戦闘に最適化されたこの機体は自走砲とでも言うべきカテゴリーに本来属するのかもしれない


『気分だよ、気分。外気温は32度にもなるらしい。』


スコルピオンで構成されるストライカー分隊のパイロットの1人、ベイカーは外気温数値を見ながら隣の機体のパイロットに話しかけていた


『レーダーに異常が起きるかもな、ジャック。』


話しかけられていたのは珍しい銀髪の青年だった。


『お喋りはやめにしろ、こんな森の中じゃどこに敵が潜んでてもおかしくない。』

『了解、ジャクソン軍曹殿。』


ベイカーはうんざりしたような口調でそう言った


『しかしよ、なんで俺らが斥候なんかやらされんだ...』

『大佐の説明を聞いていなかったか? スコルピオンは他のバトルワーカーと違い全長が低い、だから敵も早く見つけられる。』

『だったら歩いた方が見つかりにくいはずだぜ軍曹?』

『文句ばかり言うな、それともお前が1人で歩くか?』

『勘弁してくれよ、こんなとこ歩いてられるか。』


真面目な話をすれば地上で歩兵による偵察方法なんて物は彼らには知識としてすら入っていなかった

理由は簡単だ、CAU軍は宇宙空間での戦闘が基本だ

木星衛星に不時着した時の待機方法などは教え込まれるが大気が存在し、重力がある星での戦闘行動など想定もされていなかったのである

コロニー内での治安維持などは話が別だが、それは彼らの役目ではないだろう


『なぁ、スコルピオン以外にもあったんじゃないのか? 奴らの持ってる...ほら、センシャ? ってやつとかよ。』

『そんなものあると思うか? まぁ、俺も同感だけど。』


ジャックもため息をついていた

不慣れなジャングルの中を常に警戒しながら進む...コロニー育ちの彼らにとってはこの上なく困難な任務であった


『しかし、いろんな動植物がいるもんだ。』


ベイカーがそう言うもので、ジャックも照準器を拡大して木の根元や草木のそばにいる動物を観察する


『?』


ふとジャックが木陰で草を食べるウサギを見ていた時だった

一瞬だが、モニタの中央にある照準用のレティクルがぐにゃりと歪んだのだ

まるで景色が変形したかのように....


『なんだ今の。』

『どうした?』

『レティクルが一瞬歪んだ。』

『恐らく熱の影響だろう、後でエンジニア達に伝えておくといい。』

『分かりました。』


早めに敵の部隊を見つけて任務を終わらせたい...ジャックはその一心でバトルワーカーの機影を探した

バトルワーカーはその性質上、森から上半身を出すことになる

スコルピオンは特殊な構造もあって、森の中に身を隠せるが、ESFのネアス・アドニスはそうもいかない



『見ろよあのデケェ湖、後で泳ぎてぇな、ジェーン?』


ベイカーがストライカー4に通信を入れるが、応答がない


『おい無視か?』


少し奇妙に思い、ジャックが分隊機をチェックするメニューを出す


『止まってる。』


『ストライカー4?応答を。』


ジャクソンが呼び掛けても応答しないのをみて、ジャックが四番機に接近し、様子を見る


『1? ストライカー4は戦闘不能! パイロットは死亡!』


驚くべきことだった

コックピット装甲は貫かれていた

音もなく接近され、やられたのだ


『全員警戒態勢!』


『クソ! どこにいやがる!?』

『警戒を怠るな...』


全員がモニターの中のレティクルと睨み合う

異変がないか、全神経を研ぎ澄ませる


『全体を砲撃しようぜ、このままだと死ぬ!』


『いや...迂闊に攻撃するな、ここにいる奴らだけでなく遠くの敵にも知られる可能性がある』

『ちくしょう!』


また沈黙が続いた

何事もなかったかのように空間は静まり返った


『また景色が...?』


またしてもジャックの、目前にあるモニターに映る景色が少しばかり歪んだ。


『まさか...』


ジャックはモニターから消えた歪みを必死で探す

そして、その予感は的中した


『機体のバランスが!』


右翼に展開していたストライカー5のスコルピオンの脚部が突然崩壊し、胴体部が地面に落ちる


『こちらストライカー5! 機体が突然!』


それが最後だった


『やつはステルスだ!』


ジャックはそう叫んでストライカー5に向かって機体備え付けの7.62mmの機銃を掃射した

左右に一つずつ取り付けられたその機関銃は毎分1200発の猛烈な発射レートを誇る

ほぼ繋がった射撃音が響き、ストライカー5の機体は穴だらけになった


『逃げたぞ、ジャック!』

『あいつらは透明だ! 景色が歪んだら撃て!』


ジャックはそう言うと、また索敵を再開する


『見えたぞ!死にやがれクソが!』


ベイカーは一瞬だけ見えた歪みに対して制圧射撃をした

側から見ればそれは全く無意味な無駄撃ちに見えることだろう

しかし、『当たり』はあった

それは深緑に塗装された丸っこくて小さいバトルワーカーだった

軽量化されていて装甲強度はさほどでもないのか、7.62mm弾の過剰な射撃により、穴だらけになった後だった


『ざまぁねぇぜ...はは...』


ベイカーは深いため息をついて安堵した


『まだ油断はするな、一機だけとは限らん。』

『上に通信を入れて一帯をすべて攻撃し、一時退却しましょう。』



ジャックはそうジャクソンに提案した。


『それがいいだろうな。』


残った三機の180mmが次々と発射され、森を焼き尽くす。装填...発射、装填...発射

30回ほど繰り返して、全機が残弾数が20発になってようやく、森は静けさを取り戻した

そこはもはや森とは呼べず、朽ちた木がなぎ倒されているだけの荒地だった


『一時退却するぞ。』


ジャクソンの号令と共に、ストライカーは後退した

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