68: EP4-18 新太平洋の戦い
報告了解、引き続き警戒を続けてくれ。
いいか、何者であっても絶対に通すな。
...あぁ、そうか、思えばこれでEP4も終わりだね。
ようこそ、この後もゆっくりと楽しんでいってくれれば嬉しいよ、読者様。
コロニー協定連合体 "CAU"
オペレーションストームライダー
9日目
西暦3020年3月31日[STC]
協定宇宙時23:00、火星新太平洋西時間14:00
火星地表、新太平洋西部、ESFストームレイン基地(CAU制御下)
数々の犠牲と献身の上に、今がある
──Side: 3人称視点
ストームレイン基地では未だ慌ただしい動きが続いていた
ESFの残党狩りは続いているし、今後の部隊運用をどうするかの協議など、やるべきことが終わらないのだ
そんな中、シオンハートは一人、海岸沿いへと来ていた
「...ベルーガ、いるか?」
誰にも見えないような岩場の陰まで来て、シオンハートはそう呟く
すると、海のほうからゆっくりと、どこからともなく人影が現れる
服と言えるかどうかも怪しい、深海を身に纏ったその人影、そう、リオ・ベルーガ・アビサルウィーブだ
「あれ、ロアー...じゃないか、どうしたの、オルカ?」
「いや、ちょっと雑談でも、と思ってな。」
そう返すシオンハートの表情はどこか晴れない
「あー、その表情、なんかやらかした?」
「分かるか?」
「まぁね、もう長い付き合いだし?」
アビサルウィーブの言う長い付き合いとは一体どれほどの時間を指すのだろうか?
「そうか... いや、な。 やはり私は業からは逃れられないんだな、とな。」
「...ま、それはそうだよ。 私もオルカも、結局は深海のモノなんだからさ、気にしてもどうしようもないよ。」
半ば投げやりで、それでいて慰めるような口調でアビサルウィーブは言う
「どうしようもない...か。 なぁ、ベルーガ。」
「なぁに?」
「こんな話を知ってるか? かつて、私以外にも深海に生まれながら、深海を離れたモノがいるらしい。 ソイツは、陸で生涯の眷属を見つけたらしい。」
「あー...聞いたことあるかも? でもそれ、結局御伽噺の類だよね?」
「さぁな。」
そこでふと、シオンハートが沖を見る
釣られて、アビサルウィーブもそちらを振り向く
2人の視線の先には、海から顔を出す真っ黒いナニかが映っていた
「...ねぇ、オルカ。」
「なんだ?」
「やっぱり君は、アビサルハートだよ。」
そう言って、アビサルウィーブは微笑んだ
所変わって、ストームレインの一角、仮設されたバトルワーカーハンガーにはローランドとライブラの姿があった
「...ディケ、無理なのは分かってる、だが、正直に話してほしい。」
ローランドがライブラのコックピットに滑り込み、シートにゆっくりと座るなり、そう言う
ホログラムのディケが現れ、口を開く
『何を...ですか?』
「...なんて言えばいいんだろうな...」
そこで一度ローランドが押し黙る
『...ふむ...まぁ、言いたいことは何となく分かりましたよ。 私と、グローリア...副局長、ですね。』
副局長、聞きなれない称号がディケの口から出る
「...まぁ、そうだな。 結局、誰なんだ、ディケと...グローリアは。」
『...私も素直に言えていれば苦労はしていないのですがね。 エリソン、あなたが言うように、無理なものは無理なのです。』
「そういうと思ってたよ、別にいいさ。」
投げやりにローランドが言う
『...時が来れば、全て話します。 今は私を信じてください。』
「...ま、そうするしかないしな。 いいさ、付き合ってやるよ、最後まで。」
そう言って、ローランドはまたコックピットを抜け、歩いていった
そして...
「よく集まってくれた。 今回の話はシンプルだ。 西に向かった正規軍から連絡があった。」
ストームレインの施設の一角、今は会議室替わりとなってるその部屋にシオンハート、ルプスレフィア、マルコシアス、そして、通信越しにウィルクス、エンスウェンが集まっていた
シオンハートが場を仕切る
「当初の計画から外れ、一部の正規軍部隊がこちらに同行してもらったのは知っての通りだが、それでも大半の部隊は西に向かっていた。 それで...ようやく動くそうだ。 思ったよりも進撃に手間取っていたのと、軌道エレベータ基部の整備にも時間がかかったそうでな。」
「ふむ、まぁ基地の整備は時間がかかるものだな。」
マルコシアスがそう返す
『西か。 ESFの言うところの、軌道エレベータチャーリー方面だな。』
『規模としては一番小さいが、あのあたりは少し北に上がれば大穀倉地帯だ。 ESFの食糧事情を支えるまさしく大黒柱と言っていいだろう。』
ウィルクスが軌道エレベータをまさしく『柱』と称しそう言う
「予定ではチャーリーまで進撃するか、あるいはその前のESF基地を狙うそうだ。 まぁ、可能な限りESFに打撃を加える作戦、というのが適切だろうな。」
「シオンハート、私たちは?」
「我々は...そうだな、正直なところ、ここに留まる理由もない。 スプリングストームも去ったことだからな... ある程度の部隊と直上の艦隊を残し、主力は軌道エレベータまで後退し、問題がなければ艦隊へ帰投する。 必要があれば西に向かうのもアリかもしれないな。」
「そっか、了解。」
思えばライトニングストライク作戦の開始から見て既に2週間だ
戦争としては短期的な戦いだが、両軍共に色々な物を失ってきた
「我々の目的は全面戦争ではない。 可能であれば、私個人としては講和の道も見ていきたいが... こればかりは協定標準省、それに正規軍総司令部やサイラスの意志によるものだからな。」
『それはそうだ。 我々も所詮一兵士にすぎない。』
『上申してみる意味はあるかもしれないぞ、エンスウェン?』
『それもそうだ。』
会議というほどの重要度でもないこの会合はそのまま自然と解散の運びになった
それから数日して、セイバー連隊の主力部隊は西へと、来た道を戻り始める
旅のついでに、捕虜にしたESF兵も引き連れていく必要はあったが、それはさしたる苦労ではないだろう、恐らくは
──そして、物語の舞台は西へと移る──




