64: EP4-14 ストームレインの攻防: 砲撃姫
わ、さすが対艦兵器だねぇ。
でも、さすがに重すぎるよね、機体が。
コロニー協定連合体 "CAU"
オペレーションストームライダー
7日目
西暦3020年3月29日[STC]
協定宇宙時15:57、火星新太平洋西時間06:57
火星地表、新太平洋西部、ESFストームレイン基地
彼女の前に、撃ち崩せぬモノなど、ない──
──Side: 3人称視点
「えーっと... ボンバー...4、及びボンバー6へ! グリッドT-W-056-628に一斉砲撃!」
ルプスレフィアにしては珍しく、コールサインでの指揮が飛ぶ
『ボンバー4-1了解! 全ユニット、一斉射!』
『ボンバー6-1了解、効力射を開始する。』
指揮下のスコルピオン部隊がその指揮通りに、ESF部隊に向け砲撃を加える
ここは目標デルタと指定された通信アレイの傍であり、彼女たちの任務はそこへの大規模な砲撃支援だった
目標アルファのアレイの周辺は大規模に要塞化されており、そのままでの正面突破は困難と判断され、この砲撃支援を武器にその他バトルワーカーが突撃していた
『エピター2-1よりパニッシャー、敵防衛陣地の守りが固すぎる。 砲撃支援を要請する!』
「...っあ私か。 了解エピター2-1。 ...あー、これは...」
ルプスレフィアが重装機である『エピアルテース』、エピター2-1から中継された映像を見て一瞬の思慮を行う
見るに、ESFのその防衛陣地はこのエリアでもトップクラスの要塞化が成されているようであり、その守り、そして熾烈な砲撃は凄まじいものであった
「エピター2-1、こちらパニッシャー。 これから砲撃を行う、衝撃、それと飛散物に注意して!」
それまで堂々と構えていたルプスレフィアの乗る機体─アルティア─が姿勢を落とし、砲撃態勢に入る
その背に背負うように装備された砲が前方へと向かって展開される
各部のパーツがスライドし、形成されたその砲身はよく見ると4本のレールで構成された非密閉型の砲身であり、それが意味するものは、この兵器がレールガンであるということだ
「弾種変更、125mmHEレールガン弾頭、装填開始...っと。」
アルティアの背部にある装填機構がレールガンの後部にある保弾チャンバーへと砲弾を送り込む
それと同時に、砲身のレールが僅かに青く輝く
「キャパシタ充電率100%、照準モードを起動、後はー...えっと...」
コックピットの中でルプスレフィアが天井付近に格納されていた小型のモニターを引き出す
顔の前までそれを持ってくると、それをのぞき込むように更に顔を近づける
その表示は正面にあるメインモニタの映像を更に拡大したもののようで、つまるところ、言うなれば拡大スコープのようなもののようだ
「...目標ロック、耐衝撃姿勢おっけー... 発射!」
ルプスレフィアが握った操縦桿のキーを押し込む
その瞬間、コックピットにも大きな衝撃が伝わる
外からその様子を見ていたのなら、迫力に圧倒されたことだろう
ルプスレフィアの操作に呼応し、アルティアはその全力を見せる
砲身に巡った過剰とも言える電力が見せた青い輝きが一際大きくなったかと思った瞬間、アルティアの機体が大きく後ずさる
発射の反動を全身で抑えた結果、機体が地面を滑ったのだ
目視できないほどの超高速で発射されたその砲弾は、ESF防衛陣地に設置されていた大きな壁に向かって一直線に向かっていき、衝突の瞬間、秘められていた火力を解き放つ
凄まじい爆発が起こったかと思うと、爆炎が晴れた時、陣地の壁は大きく崩れ落ちていた
当然、その場にあった防衛砲台も沈黙、あるいはそもそも消滅している
アルティアが発射した砲弾は、ルプスレフィアが言ったように『125mm機対艦レールガン』用に設計された『125mmHEレールガン弾頭』である
早い話がこれは、徹甲榴弾の一種だ
超高速で目標へと突き刺さり、一瞬遅れた後に内蔵された爆薬によって目標を内部から粉砕する、対艦用決戦兵器として開発された新型弾頭でもある
『エピター2-1よりパニッシャー、支援に感謝する! よし、総員突撃! 道を切り開くぞ!』
アルティアのコックピットモニタには崩れ落ちた壁から内部に向かって大盾を構えながら突撃するエピアルテースの姿が映る
それを見たルプスレフィアが満足そうに頷き、アルティアの姿勢を戻す
それからも、ルプスレフィアはその場から部隊の指揮を続けていた
地上において、自身の鈍重な機体が近接戦闘に向かないのをよく理解していたし、何より彼女は仲間たちを信じていたのだ
1時間も経たないうちに、目標アルファへと攻め入った部隊からアレイを制圧したとの報告が上がり始める
そして、それを維持するためにルプスレフィアは、アルティアは歩みを進める
守りに入ったアルティアは、それだけで運用コストに見合わない─たった1機で3機もの運用コストを誇るが、それ以上の、まるでいくつもの分隊がそこにいるかのような活躍を見せる
どういうわけか、ルプスレフィアの指揮下にある部隊は本来以上の実力を発揮すると有名だ
それを成せるのは、彼女の、意外なことにも高い人望が成せる技なのかもしれない
戦いは、まだ続いていた




