65: EP4-15 ストームレインの攻防: 信じるということ
え、何これ。
...今度は唐揚げ...?
待ってくれリーフ、どういう流行りの移ろい方なんだい...?
...あ、でもおいしいな...
コロニー協定連合体 "CAU"
オペレーションストームライダー
7日目
西暦3020年3月29日[STC]
協定宇宙時16:02、火星新太平洋西時間07:02
火星地表、新太平洋西部、ESFストームレイン基地
──戦え、己の信じる正義のために
──Side: 3人称視点
彼の脳裏を、ふとあの日のことがよぎる
──...閣下、もしこれを聞いているのなら... どうかお応えください。 我々は...貴女に忠義を尽くす。 私怨に囚われた者への忠義など、存在しない。
『大隊長? マルコシアス大隊長?』
『ん...あ、あぁ。 どうした、ネイヴィ...あぁいや...副長?』
ネイヴィガー1─マルコシアスが副長であるクランツの呼びかけに答える
『いや...動きが緩慢だったから何かあったのかと、な。』
『あぁ...少し考え事をな。 もう大丈夫だ、心配させたな、副長。』
そう言いながらもマルコシアスの顔は晴れない
──そうか。 やはりそうだったか。 ルミエールは...
──はい。 奴は...貴女への復讐を。
──エミーリエを。
マルコシアスは愛機を、カンペアドールを駆り目標へと、通信アレイガンマへと押し進む
特殊なリニア型スラスターの出力に任せ、ほんの一瞬、機体は宙を駆ける
その勢いのまま、敵機を切り裂く
惑星の、火星の重力には勝てずとも、その半ば飛行とも言える跳躍を武器に彼は戦っていた
──お前は...
──マルコシアス、お前にだけいい顔をさせるわけにはいかないからな。 俺達も、お前に着いていく。
──アガレス...ウァラク...
よく鍛え上げられ、磨かれ、そして勢いの乗ったカイパタイト合金製のその刃は、ESFバトルワーカーの主要装甲材である強化鋼を易々と切り裂いている
距離が空けば、咄嗟に左手に持った35mm口径のライフルから弾丸の雨を敵機に叩き込む
3人の大隊長の中で最も実直で、最も基本的な動作をしていた
──アガレス!
──へへ...慣れねぇことはするもんじゃあねえなぁ...マルコシアス?
──喋るな! すぐに助けが...
──いいんだ、マルコシアス。 ...お前は、上手くやれよ...
マルコシアスは誰よりも実直に努力を重ねてきた
その真相は分からずとも、トラベラーとして異常な能力を行使するシオンハートはともかく、彼とは別種の苦境を乗り越え、努力を重ねてきたであろうルプスレフィアよりも、だ
少なくとも、彼はそう信じている
『ネイヴィガー5よりネイヴィガー1、2時方向、複数の敵機が接近してるぜ。』
『了解ネイヴィガー5、ネイヴィガー各員、2時方向の敵集団を突破しアレイへ向かう!』
──ウァラク...?
──...ダメだ、もう息がない。 ...クソッ...
──...エンジェル1-1よりHQ、対象を...発見...持って帰る...
俺は、信じるもののために何もかもを犠牲にしてきた。
ルミエールは、愛する者のために全てを捨てた。
アガレス、ウァラク。
彼らは良き友人だった。
だが、今でも思わずにいられない。
2人が死んだのは、俺のせいだ、と。
『ネイヴィガー1よりガートル、支援が欲しい。 こちらはガンマのアレイ周辺で足止めされている。』
ネイヴィガーを中心としたCAU部隊は目標ガンマのすぐ近くまで接近するも、ESFの激しい抵抗にあっていた
ESFは次第に防衛するアレイの数を絞っているのか、数が増えつつあった
『了解だ、ネイヴィガー1。 ...そちらの座標を送れ。』
『今送った。』
『よし、ガートルよりアルテミス1-1へ。1-4から1-6へこれから送る座標を送信しろ。 その後、周辺の敵部隊に対し、近接航空支援を実施しろ。』
『アルテミス1-1了解。 すぐに転送する。』
──これは...アイツの分だ、バエル。
──...疑って悪かったよ、マルコシアス。
──閣下...
──悪いね、こういう性分なんだ。 まぁ...なんだ、身内以外は基本信用しないようにしてるんだ。
『今だ! 突撃するぞ!』
『一番槍はアタシが貰う!』
『全機、ネイヴィガー4に続け!』
『今が使い時ですね! トラックバインドアンカーを射出します!』
──アガレス...いいや、アントン...お前の敵は討ったぞ。
──お前が...マルコシアスか?
──...貴女は...
航空支援の元、CAU部隊はアレイへと最後の急襲を仕掛ける
その最中、ネイヴィガー6、ロビン・グッドフェロウが急に明後日の方向に、正確には敵部隊の後方の地面に向かって手にした40mmロングライフルを数発撃ちこむ
直後、カンペアドールのすぐ左後ろにいたはずの彼の機体の姿は敵部隊の後方へと、より正確に言えば、銃弾を撃ち込んだ場所へと移動していた
それに全く気付いていない敵機に対し、背後から手にしていたままのライフルを押し付け、何発も連射する
当然、至近距離からの射撃にすぐに機体は穴だらけとなり、停止する
その直後、また彼の機体はネイヴィガー1の背後...元の位置へと移動していた
『ヒュゥ、やるねぇロビン?』
『あまりそう何度も使える手段でもありませんけどね、そのうち警戒されてしまいますし?』
『だとしてもよ。 なぁロビン、ほんといつになったらその手品は教えてくれるんだよ?』
『気が向けば、です。』
ジャレットとロビンが軽口を投げかけあう
どんな手品かは確かに不明だが、常に位置を変え続けるスナイパーたるジャレットからすれば羨ましいのだろう
──あぁ、リグ・マルコシアス。 君の処遇が決まったよ。 ...残念だが、ここに置いておくことはできない。 私は君を信じてみることにしたけれども、良くは思わない者だっているだろう。 あぁ、安心してくれ。 ちゃんと君が不自由しないだけの生活をするための世界も、地位も用意した。 別に君のために用意した世界というわけではないから気に入るかは未知数だけど...多分大丈夫さ。 そこのところは安心して向かってほしい。 向こうの代表かい? ええと...サイラス・セイバー、だね。 書記官は...ミッチェルだ。
『ヒッ...ヒィッ...! 助け──』
『ネイヴィガー1より各員。 今ので敵は最後か?』
『こちらネイヴィガー2、どうやらそのようだな。』
『ネイヴィガー6より、各員へ。 アレイ施設内には生体反応がまだ残っているみたいです。 ここからはクロースコンバットですよ。』
『だろうな。 ネイヴィガー各員、武装を用意しろ。 ネイヴィガー6、手筈通りと行こう。』
──あぁ、ミッチェルから聞いている。 君が...マルコシアスか。
──これから世話になる。 よろしく頼む、サイラス。
『ネイヴィガー1よりガートル、ガンマのメインコントロールルームを制圧した。 これからアレイの通信制御を乗っ取る。』
『了解だ、ネイヴィガー1、それが終わったらガンマの維持は正規軍に任せ、目標アルファに向かってくれ。 敵が部隊を集中させている。 どうやら、連中はあそこだけを守り通すと決めたようだ。』
『了解だ。 ネイヴィガー1、通信終了。』




