50: EP4-1 『新太平洋の戦い』イントロダクション
海か... もう何年も行ってないな...
...今度皆を誘って... リーフならいいところ持ってるかな。
いや、私でもいいか。
それともチェリー?
....さすがにメープルはなぁ...
...おや、もうここも50話だったね。
ようこそ、これからもゆっくりしていくといいよ。
コロニー協定連合体 "CAU"
作戦ステータス: 状況調整中
ライトニングストライク作戦の3日後
西暦3020年3月22日[STC]
協定宇宙時18:00、火星新太平洋西時間09:00
火星地表、旧ESF軌道エレベータ基地ブラボー、CAU前線基地アルファ
戦いの舞台はついに火星は灼熱の陽光降り注ぐ熱帯、新太平洋西部へと移る
新たな出会い、新たな敵
彼らの前に待っている全ては、未だ未知数であった
──Side: セイバー(三人称視点)
「正規軍、セイバー、それにエルフィンストーン・アライアンスを始めとした民間有志企業による輸送は順調だ。 既に需要の90%を満たしている。 今日中には全ての補給が完了するだろう。」
「了解だ、ウィルクス。 エンスウェン、今考えてはいるんだが... そっちなら部隊はどう割り振る?」
「そうだな... 敵部隊は知っての通り東と西に撤退した。 東に撤退した部隊のほうが数は多いようだがな。 偵察によると、西に向かった敵部隊はいくつかの臨時の野営地を設営しながら撤退しているようだ。 対する東...新太平洋方向だが、敵の撤退目標が大まかに判明した。」
「撤退目標?」
「あぁ。 軌道上からの偵察画像もある。 今映そう。」
シオンハート、ウィルクス、エンスウェンの3人は今後の詳しい方針を議論するために、制圧した軌道エレベータ基地ブラボー、現在のCAU前線基地アルファの一角で話し合っていた
エンスウェンが手元の端末を操作し、3人が着くテーブルの中央にホログラム画像を投影する
映っているのは周りを海に囲まれた何らかの基地らしきもの
見たところ背の低い建造物に加え、いくつかの大きな滑走路が見て取れる
「...ふむ? 航空基地、か?」
「そのようだ。 もう1つある、見てくれ。」
「...これは... 大きいな、レーダーサイトか?」
エンスウェンが切り替えた画像に映っているのは、全部で5つある大きなパラボラアンテナのようなものが着いた建造物だ
「詳しい目的ははっきりしないが、恐らくそうだろう。 レーダーサイトだとすれば水平線規模どころか超水平線レーダーシステムにも転用できるかもしれんな。 あるいは通信設備の可能性もあるが、その場合は軌道通信規格には当然対応しているだろう。 これほどの施設なら例え春の嵐のような酷い嵐の中でもどちらの機能だとしても正常に動作すると見て間違いない。 軌道通信で衛星を経由すれば新太平洋の東部とも連絡できるはずだ。 何より、航空基地だ。 ESFはこの基地から新太平洋を渡るつもりだろうな。」
「なるほどな。 ウィルクスはどう思う?」
シオンハートの振りにウィルクスが口を開く
「...まぁ、そうだろうな。 他にこれほどの規模の施設は?」
「偵察の限りでは発見されていない。 これ以上のものを隠すのは地下でもなければ無理だが、その場合は現地で見つけるしかない。」
「了解した。 ...そうだな、私としては、西は正規軍に任せ、我々セイバーは新太平洋に向かうことを提案したい。」
「理由は?」
「簡単な話だ。 正規軍程度のパイロット達に新太平洋の島嶼部などという、変わった環境を踏ませても役に立たないだろう、とな。」
「...まぁ、セイバーもそう変わるわけではないんだが... 同意はしておこう。 エンスウェン?」
「同じくだ。 無用な犠牲は必要ない。」
自然と3人の意見が一致する
この話し合いを持って、セイバー連隊の方針は新太平洋方向へと部隊を差し向けることと決まった
──Side: ローランド(三人称視点)
「...誰だ?」
「アイリス・シェルヴィ。 上の指示で君の連絡役として派遣されてきたんだ。 よろしくね。」
ローランドは前線基地アルファに設営された簡易的な宿舎で奇妙な侵入者と対峙していた
目立つブロンドのセミロングの髪に、身体のラインが浮き出て見えるほどのぴったりと張り付いたデザインの、まるで全身タイツのような服を着た女性
それがこのアイリス・シェルヴィと名乗る奇妙な侵入者だった
名乗り、連絡役と自己紹介したシェルヴィの髪と同じような色の瞳がローランドを見据える
「連絡役? 上の? ...セイバーじゃないのか?」
「そう。 ...いや、まぁ、セイバー、セイバー...か。 大体合ってる...いやどうだろうかな...」
シェルヴィが顎に手を当てながら思慮するようなそぶりを見せる
若干気の逸れたその様子を見て、ローランドはそっと背中にしまってあるハンドガンに手を伸ばす
彼の身体は相変わらずそこらじゅうにスペースの余裕があり、そこに様々な物をしまっていた
シェルヴィがうんうんと唸りながら背を向けた一瞬の隙にローランドは腰かけていたベッドから立ち上がり、瞬時に抜き取っていたハンドガンをシェルヴィの後頭部に押しつける
「ぴっ!?」
「さすがに怪しすぎる、正体はなんだ?」
「え、いや、怪しい者じゃないから、まず、それ降ろして...」
「質問に答えろ。 お前は誰だ? ESFでもないだろう?」
奇妙な声を上げ両手を挙げたシェルヴィにローランドが冷たく問いかける
「そこまでだ、エリソン。 シェルヴィもだ。」
「!?」
ローランドは一瞬たりとも気を抜いてはいなかった
だと言うのに、彼の右側に唐突に人影が現れ、ハンドガンを押し下げてきた
「...グローリア?」
「うちの者が失礼した、エリソン。 彼女は...シェルヴィは優秀なのだがな、どうにもこう、いたずら好き、とでも言えばいいのだろうか?」
「ちょっとグローリア、言い方ってものがさ。」
「黙りなさい。 ともかく、だ。 私も何かと多忙だ。 故に、連絡役としてこのシェルヴィを送ったのだが... どうにも嫌な予感がしてな。 見に来たらこの有様、というわけだ。」
「...そういうことなら最初からそうと言ってくれ、シェルヴィ...」
海王星圏での戦いの後から、ずっとローランドとディケのサポートをしていたセイバー連隊所属と思わしきエンジニア、グローリアだ
気の抜けたローランドは手にしたハンドガンを背中へと戻しながらシェルヴィから離れる
「ところでそれとは別に聞きたいことがある。 グローリア、シェルヴィ、どうやって部屋に入った?」
「黙秘する。」
「あ、私用事思い出したんで! じゃね!」
「あっおい!」
ほんの瞬き一瞬の間に、2人の姿は消えていた
「...疲れてるんだろうか...」
ローランドの虚しさが籠るような呟きは誰にも聞かれず消えていった
──Side: 三人称視点
前線基地アルファの片隅、そこに2人の人影があった
「で、レイナ。 状況はどうなんだ?」
「そうだな... 一度ジャッジメント本部に戻るとしようか。 補給するものも色々あるからな。 それに、ホーライ級が無事任務を果たしたというのも見てみたいしな...」
「了解した、レイナ。 セラフィエル2も一応メンテしておかないとな。」
「そうするといい。 よし、では行こうか。」
「あいよ。」
腰より下まで届くような黒髪の長身の女性と、オレンジ色のショートヘアの髪の小柄な少女が奇妙な会話をする
別に誰も来ないというような場所ではないのだが、何故か彼女らの周りには誰一人として姿が見えない
2人は基地から離れるように歩き出すと、基地の範囲を抜けたあたりで、景色に溶け消えていった
「そうか。 ホーライは上手くいった、か。」
「はい。 エルヴィスは時を越え、帰還。 しかし、エルフィンストーンによると、この行いこそが...」
「分かってるよ、ブラック君。 パラドックスってそういうものなんだよ。 時間軸系の異常が起きなかっただけマシってところさ。 ま、サンダイアル・プロジェクトの資料は見たけども、一応ベースになった理論では類似事案で成功してるからね。 それよりは今回のは安定性が低いから、儲けものさ。」
「...それもそうですね。」
「ところでブラック君。 例の計画は?」
「プロジェクト・アバターですか? でしたら、パーシヴァルとエルヴィスで実証実験を開始しましたが...」
「そっか。 そのまま進めるようにアイヴァンに伝えてくれ。」
「了解、閣下。」
「...あぁそうだ、それとアイヴァンにもう1つ。 ディケにも用意してやってくれ。 ...それから、今終わってる範囲でいいからアストライアの進捗もね。」
「ディケに? 分かりました、閣下。」




