45: EP3-21 オペレーションライトニングストライク
とりあえずは、どうにかなった。
まだ注視する必要はあるけども、それでも。
コロニー協定連合体 "CAU"
ライトニングストライク作戦─ブロークンフォートレス作戦
2日目
西暦3020年3月19日[STC]
協定宇宙時04:00、火星新太平洋西時間19:00
火星地表、軌道エレベータ基地ブラボー
『オペレーションライトニングストライク』は終わった
しかしこれは戦後ではない
激化する戦況、その次なる一手を彼らは議論する
──Side: 三人称視点
「やぁ、ウィルクス。 地上はどうだ?」
「どうもこうも、大して変わらないな。 全く、凄いものだな、旧時代のテラフォーミングは。」
「金星、火星の自転速度や重力、その他気候等を地球と瓜二つに仕立て上げた。 一体、何をどうしたらそんなことができるんだろうな。」
太陽が西の空に沈む頃、彼らは軌道エレベータ基地ブラボーの司令室で集合していた
セイバー連隊からは艦隊長であるアリア・K・ウィルクス、オルグ・C・エンスウェン、そして大隊長であるエル・シオンハート、ルイナ・ルプスレフィア、リグ・マルコシアスが集まっていた
それと、正規軍の上級司令部の面々が、だ
彼らの目的、それは、今後の方針だった
「さて、ウィルクス艦隊長、次はどうするんだ?」
「そうだな... 選択肢は2つだ。 ここで足を止め、橋頭保を築き上げる。 あるいは、撤退した敵を迅速に追撃し、このエリア一帯を確保する。」
「消極的攻勢か、積極的攻勢か、か。」
「私としては積極的なほうを支持するが...他はどうなんだ?」
正規軍の艦隊長とウィルクスの会話にシオンハートが加わる
「自分はそれに賛成するが... その前にどちらにしろ補給が必要だろう。 それはどうなっているんだ?」
意見を求められたエンスウェンがある意味当然のことを口にする
それに正規軍の将校の1人が答える
「現在、土星圏からの輸送艦隊を手配している。 ジャンプフィールドが安定次第にはなるが、それなりの量は運べるだろう。 もっとも、一度で足りるとは思っていないから、複数回のピストン輸送と言ったところだろうがな。」
「なんであれ来るのならばいい。 この場にいるのなら分かっているだろうが、通常の兵士は補給なしではすぐに瓦解する。 皆が皆、聖人君子ではないからな。」
不遜、尊大そのもののエンスウェンの物言いではあるが、事実である以上、その場にいる全員が同意を示す
「そうだ、正規軍の偵察隊からの報告は?」
ウィルクスが正規軍へと問う
「軌道エレベータアルファ上空についてか? それなら、今のところ敵艦隊に動きはない。 いや、語弊があるな。 艦隊を再編しようとしているのは間違いないが、明らかに数が不足しているというところだろう。 すぐに動き始める兆候はない、だな。」
「そうか。 今後我々がどう動くにしろ、軌道上の制宙権は必須だ。」
「それぐらいはしてみせるさ、ウィルクス艦隊長。」
再びシオンハートが口を開く
「まぁ、とりあえず補給を待つとして、だ。 その後は...私としては、先の通り積極的攻勢を支持する。 ここで敵に立て直す隙をみすみす与えてやる必要もない。 確かに地上部隊に被害は出ているが、許容不可能なラインではないからな。 強いて言えば...輸送艦隊には工廠艦はあるのか?」
「あぁ、派遣の予定がある。 もちろん、本国の工場ほどの設備は期待しないでくれ。」
「それはセイバーも同じだ。 ないよりかはあればあるだけいい。 幸い、軌道上への打ち上げはここがあるからな。」
こことはもちろん、軌道エレベータブラボーのことだ
戦闘の後、エンジニアが最低限の修繕を行ったことで基部基地と軌道ステーションとの行き来が可能になっていた
「ところでウィルクス、セイバーの輸送艦隊はどうなっている?」
「そちらも準備中だ。 正規軍艦隊と一緒にジャンプする予定だな。」
「了解だ。」
ふとそこで、マルコシアスがシオンハートに問いを投げかける
「シオンハート嬢、あればでいいのだが、もしこのまま攻勢を仕掛けるとして、プランはあるのか?」
「そうだな... さすがに相談、議論しつつ決める必要はあるが、私としては部隊を分ける必要があると思うな。 偵察隊が東西に撤退した敵部隊を確認しているからな。」
「なるほどな。 まぁ、確かに議論が必要だ。 また話すとしよう。」
続けてウィルクスが話し始める
「記憶が確かなら...この時期の新太平洋西部は、荒れるはずだな。」
「春の嵐か? 確かに、時期だな。」
「スプリングストーム?」
ルプスレフィアがシオンハートに疑問を呈する
「あぁ、この時期の新太平洋西部の嵐はそう呼ばれているはずだ。」
「ふーん。」
ルプスレフィアがすぐに興味を無くしたかのように答える
「厄介だな、あまり強い嵐になると軌道上との通信は不安定になるかもしれないな。」
「地上側に十分強力な通信設備があれば話は別だがな。 移動用では無理な話だ。 通信基地、とでも言うべきか。」
「今のところは、そちらに行く場合は嵐に見舞われないことを祈るだけだな。」
「まぁ、そうだな。」
彼、彼女らはその後も様々な議論を交わす
一度の戦いが終わったからといって、すぐに全てが終わるわけではない
それでも、今この一瞬のささやかな休息を実感もしていた
そうこうしているうちに、集まりは自然と解散し、各々がしっかりとした休息を取るためにそれぞれの艦へと戻っていく
彼らの家は軌道上にあり、ここではない
依然として偵察隊は軌道エレベータ基部周辺の警戒を続けてはいるが、反転、反撃の兆候はない
逆に言えば、軌道上も地上も奇妙なまでに静かではあった
それは嵐の前の静けさか、あるいは
判断するためには、まだ情報が不足していた




