43: EP3-19 アルテミス─Death from Above '頭上からの死'
意外と、頭上というのは疎かになるものだ。
コロニー協定連合体 "CAU"
ライトニングストライク作戦─ブロークンフォートレス作戦
2日目
西暦3020年3月19日[STC]
協定宇宙時00:20、火星新太平洋西時間15:20
火星地表、軌道エレベータ基地ブラボー
──Side: 三人称視点
『1-4、座標を受け取った、攻撃する!』
『1-5、投下する!』
『1-6、こちらも投下!』
アルテミスの制宙攻撃機─コルセア─3機、1-4、1-5、1-6は次々とその身に抱えた無誘導弾を投下していく
もっとも、無誘導弾とはいえ、実際は軌道上の艦隊の惑星測位データに基づいた惑星上座標測位システム、通称GPSによる座標指定誘導が用いられており、実体はほぼほぼ誘導弾だ
投下後に目標を変えられないことから、CAU軍ではこれを無誘導弾として区分するらしい
アルテミスのコルセア3機は、ゼロファイター3機と分かれてすぐにシオンハートの指揮の元、座標を設定した
ESF地上部隊の主力が特に集まっているとされる3箇所にそれぞれ、だ
未だにクロノスとの戦闘を続けているシオンハートではあるが、それでも偵察隊が逐一報告する敵部隊の現情報から目標を設定していた
ESFは制宙戦闘機、スピットファイアもなく、唯一今戦域にいるメッサーシュミットもあるはずのないCAU制宙戦闘機に追われている中、このコルセア3機を迎撃する手段を持ち合わせていなかった
いるはずのない兵器への対策など、あるわけがない
対バトルワーカー用の通常の銃火器など、ろくに当たるわけもなく、コルセア3機は容易に目標を達成した
機体の速度等から投下後の軌道を予測し、最適なタイミングで投下された3つの無誘導弾は着弾地点にいたESFバトルワーカーにその威力を遺憾なく発揮した
『損害報告!』
『直撃した5-2が粉々だ! まわりにいた奴らも半壊してる!』
『航空部隊は何してるんだ!?』
ESFのバトルワーカーパイロット達には動揺が走る
考えてもいなかった頭上からの攻撃に、目に見えて士気が下がる
『敵攻撃機が旋回してる! 防御態勢を取れる者は即座に構えろ!』
『防御って何すりゃいいんだ!?』
『知るか! 当たらないように祈ればいいんじゃないのか!』
コルセアの無誘導弾は地面との距離を検知する空中炸裂弾ではなく、地面、ないしあらゆる表面に激突した場合に作動する着弾信管だ
故に、直撃さえしなければ致命傷とはならないが、直撃すれば即死、直撃しなくても至近弾であれば大損害を負うことは間違いなかった
そして、この場合、機体をなるべく低くして回避しようとしたESF地上部隊のバトルワーカーは却って爆心に機体を近づけてしまうこととなり、余計に被害が増加する要因ともなった
もちろん、最初から車高のそう高くない戦闘車両の類も同じ運命を辿るばかりであった
『隊長! 敵機が前進してきてる!』
『なんだって? 全員前だ! 前を見ろ!』
CAU地上部隊もこの隙を逃すほど甘くはない
『ガートル、こちらフェオ1-1、部隊を再編し、敵部隊との交戦に備え前進する。』
『ネイヴィガーも同じく再度前進する。 先ほど被弾したネイヴィガー6の補修も完了済みだ。』
『了解した。 フェオ1-1、フェオ2から4を纏め前進しろ。 ネイヴィガー1は規定通りに遊撃戦に移行。 次のアルテミスの攻撃を待ってこちらも攻勢に出るぞ。』
『フェオ1-1了解。』
『ネイヴィガー1了解。 右翼側より攻撃する。』
今やCAUとESFの立場は逆転していた
上空にはCAUのゼロファイターがESFのメッサーシュミットを追いかけまわす様子が広がり、その横ではCAUのコルセアが悠々自適と言わんばかりに旋回している
そして、CAUにとってはこれ以上ない朗報であり、ESFにとっては最悪とも言える知らせがシオンハートの元に入る
『ガートル、こちらドロップタワー。 まもなく空域にアルテミス2が入る。 指揮をそちらに移譲する。』
『了解した、ドロップタワー、確かアルテミスは3隊いるはずだが?』
『そうなのか? ...確認した、確かに軌道上の...所属不明艦で現在アルテミス3が出撃準備中だ。 .なんで所属不明艦なんだ?』
『極秘部隊って奴だろ、ドロップタワー。』
『...まぁ、そういうものか。 一応聞いていいだろうか、ガートル。』
『なんだ?』
『...アルテミスが3隊いるという情報はどこから?』
『私は間違っても大隊長だぞ? それに一応不本意っちゃ不本意なんだが、准将だしな。』
『...それもそうだったな、まぁいい、ガートル、アルテミス3については追って連絡する。』
たった1隊ですら戦況を覆しつつあるアルテミス隊が後2隊もいる
その事実をどうやら以前から知っており、そして再認識したシオンハートの目に希望の灯が灯る
絶望的状況を切り開くため、頭上からの死は降り注ぎ続けるのだ
──火星低軌道上、軌道エレベータブラボー付近
人知れず、暗躍する者達がいる
その人影の眼前に浮かんだホログラムモニタには黒髪の女性が映っている
「セラフよりレイナ、セラフィエルシステム、全機転移完了。 軌道突入を開始。 最終キャリブレーションを実行中だ。」
『了解、セラフ。 何を動かす?』
「そうだな... セラフィエル2を撃つ。 精密狙撃ならこれが一番だしな。」
『セラフィエル3を落とした日には目も当てられなさそうね。』
「味方ごとふっ飛ばしていいならそれもあるけどな。 まぁ本当にそれでいいなら最悪セラフィエル1もある。」
『...いつも思ってたけどセラフ、どうしてセラフィエル1...1号機がよりにもよって原子力兵器...核弾頭搭載型なの?』
「知るか。 玲花博士に聞いてくれ。」
『...はぁ、まぁ母上ならやりかねないわね。 分かったわセラフ。 頼むよ。』
「任せてくれ。 最終キャリブレーションが終わったら地表に向け突入する。 ほんと、ジャッジメントもいいモノを作ってくれたよ。」
『それストライカー1隻と同コストらしいから大切にね』
「マジで?」
『えぇ。』
「マジか...」
誰も見ていない暗い宇宙で、1人浮かぶオレンジ髪の少女は呟いた




