39: EP3-15 機甲師団
...まだだ、まだ何かある。
コロニー協定連合体 "CAU"
ライトニングストライク作戦─ブロークンフォートレス作戦
1日目
西暦3020年3月18日[STC]
協定宇宙時22:07、火星新太平洋西時間13:07
火星地表、軌道エレベータ基地ブラボー
ESF地上軍、その『機甲師団』の脅威を排除しなければならない
──Side: 三人称視点
『シオンハート、そろそろホークアイの射程距離に入る!』
『了解だルプスレフィア。 チームに攻撃準備をさせろ。 すぐにでも攻撃を開始する。』
『了解シオンハート、いつでもいいよ!』
『よし...』
既にESFの戦闘車両、バトルワーカーその他を含むESFバトルワーカー機甲師団は眼前とでも言うべき距離に迫っていた
ESF機甲師団のその戦闘車両は様々だ
主力戦車たる『MAT-970』や高機動歩兵戦闘車の『HVIAV-998』、無誘導ミサイル自走砲『MLSPV-989』...他にも数々の車両が揃っている
バトルワーカーも第2.5世代型の『FWG2B-87AG アトラスグラウンドB』や『FW3-98N ネアス・アドニス』の地上用重武装型など、地上戦に特化したものが揃っている
対するCAUは第2世代末期の狙撃型バトルワーカー『UF2980SSH ホークアイ』、そして、第2.5世代砲撃型バトルワーカー『UF2869BTS-E スコルピオンⅡ』の2種からなる砲狙撃隊が先鋒とも言うべき攻撃に備えていた
『RTA2よりガートルへ。 敵バトルワーカー隊後方にアーチェリーを確認。 97mm機対機速射砲タイプだ。』
『ガートル了解。 ガートルよりネイヴィガー1、エピター1-1へ。 敵バトルワーカー、アーチェリー97mmを確認した。 被弾に注意せよ。』
ガートル─シオンハート─は特務とは言えど准将階級である
CAU軍の規定上、バトルワーカーパイロットは大佐階級までしか存在しないからこその『特務准将』であり、その指揮権限は本来准将相当のそれであった
しかしながらシオンハートがそれを振るうことはまず珍しく、そもそも平時において准将の指揮権限が必要なほどの大規模な戦闘というものがなかったのだ
更に言えば、セイバー第1艦隊、カエデ艦隊長は中将、つまりはシオンハートよりも高位であり、離れることのなかった2人において、シオンハートの特務准将という階級は事実上意味を成していなかったのだ
しかし、このブロークンフォートレス作戦においてはそれがついに意味を成すこととなった
ウィルクス艦隊長、エンスウェン艦隊長両名が地上におけるセイバー連隊ユニットの指揮をシオンハートに移譲し、艦隊司令部─正規軍─もこれに賛同し、CAU正規軍地上ユニットの指揮権を移譲した
よって、今のシオンハートはライトニングストライク作戦におけるCAU地上軍の最高指揮官となっていたのだ
『エピター1-1了解、エピター各機、重装防御陣形! 97mmは水平発射に優れているが、上から降ってくることはない! いいな!』
『ネイヴィガー1了解。 ガートル、他の敵戦力はどうなっている?』
エピター各機がより密集し、隙間の無い防御陣形を整える
続けてネイヴィガー1─マルコシアス─が問いかける
『あー... ガートルよりRTA2へ、他に何が見える? 報告してくれ。』
『了解... アドニスの...何だあれは? ガートル、同じく敵部隊後方にネアス・アドニスらしき機影があるが、背部武装が異常に大きい。 それに脚が4本ある。 背部武装は...アーチェリーの168mmより大きいと見て間違いない、今までの報告にはないタイプだ。』
『脚が4本だと? こちらのスコルピオンのようなものか?』
『その認識で間違いないと思う。 ガートル、画像を送ります。』
シオンハートの元に偵察隊A2の隊長機から画像が送られてくる
『ふむ... 奇妙な形だ。 だが確かにそうだな...』
シオンハートが言う通り、それは確かにESFのネアス・アドニスによく似ている
しかし、当然だがCAUのライラ・ジーナと同じく汎用バトルワーカーであるネアス・アドニスに脚は2本しかない
『...そうか...! なるほどな...』
『ガートル? 何か気づいたか?』
『あぁいや、ネイヴィガー1、聞いていたとは思うが、アーチェリーに加えてネアス・アドニスの重砲機が確認された。 目測だが200mmクラスの...対艦砲を背部武装として装備、それに腰部ハードポイント2つに支脚を装備している多脚型だ。』
『多脚型? そこのスコルピオンのようなものか、ガートル?』
『そうだ。 奇妙なものを連中は出してきたな。』
ネアス・アドニスは汎用型の最も標準的なバトルワーカーだ
故に、機体各部に用意されたアタッチメント・ハードポイントへの追加武装でいくらでも拡張できるようになっている
ESFはそれを使い、ネアス・アドニスを重砲機に改装していたのだ
『FW3-98N-AT ネアス・アドニスアーティレリー』と呼ばれるそのタイプは、背部ハードポイント2つを使い艦対艦砲をベースにした超大型砲である『205mm無誘導滑腔砲』を装備している
更に左右腰部ハードポイントに支脚を装備する事で205mmもの超大口径による凶悪とも言える反動を支えるような構造になっている
『確かに奇妙だな... だが、200mmクラスとなると笑い話ではないぞ、ガートル。』
『...確かに笑えないな。 試算だが、貫通型の砲弾ならエピアルテースをシールドごと貫通する恐れもあるはずだ。 尤も、榴弾だとしても衝撃だけでパイロットを殺しかねないが。』
『徹甲榴弾の類なら考えたくもないな。 それにそれ以外の突飛もない砲弾の可能性もある。』
『あらゆる可能性を考慮しておかないとな。 さて...』
200mmを越えるサイズであればその中身が何であるかは想定できる範囲を超えている事が多い
事実、純粋な金属塊である貫通弾系統ならばバトルワーカー程度に耐えられるものではない
唯一分かる点といえば、205mmもの大口径レーザーを稼働させられるようなバトルワーカーは、例え重装フルアーマーアルティアでも不可能だと言うことだろうか
『ガートル、敵の詳細を纏めました。 今送ります。』
『ありがとうRTA2、見させてもらおう。』
シオンハートの元にエリアの概略図に敵味方双方の大まかな配置が記載されたデータが送られてくる
友軍たるCAU地上部隊はネイヴィガー隊、エピター隊を前線としてその後方にライラ・ジーナをはじめとした主力部隊、そしてその更に後方、基地内部にホーク隊、ボンバー隊で構成される長距離攻撃隊が展開している
対するESF地上部隊は速度のある車両部隊を先頭に、続いてネアス・アドニスを中心とした混成バトルワーカー隊、その後方に各種長距離攻撃機が続いていた
両軍ともに似たような構成であるが、防衛側と攻撃側で綺麗に差がある構成でもあった
『パニ... ルプスレフィア、どうだ?』
『んー... あ、行けるよ! ファデーニ?』
『了解ルプスレフィア大佐。 全機、照準合わせ! システムの補正はあるが重力、コリオリ力の影響を忘れるな!』
『...ルプスレフィアはもう少しコールサインを... いや... いいか...』
シオンハートの呟き通り、ルプスレフィアはコールサインでなく名前を呼んでしまうようだ
今のファディーニもホーク1-1のパイロット─ホーク隊指揮官─である
...いつも言ってるけどこれなんで大隊長務まってるんだろう...
もちろん、自機でないホークアイの『55mmスナイパーライフルAP』の射程距離を正確に把握して指揮したりと間違いなく優秀な指揮官のはずなのだが...
『RTA2よりガートル! 敵部隊後方のバトルワーカーが停止... 攻撃態勢を取ってる! 砲撃が来る!』
『了解、ガートルよりエピター全隊へ、耐衝撃用意! ルプスレフィア、敵の前衛を挫くんだ!』
『エピター1-1、了解した!』
『おっけー! ファディーニ、攻撃開始!』
『あー... ホーク1-1、了解。 各機、FCSの指示通りに攻撃せよ。 ...トリガーフリー、オープンファイア!』
ホーク1-1の号令と同時に、ホーク隊各機のスナイパーライフルが火を吹いた
─FFRよりHQ、戦況報告を行う
CAUが手を出した
衝突は最早避けられない
現時点で作戦エリアにデイモス、並びにクロノスは認められない
依然として要警戒と判断
このまま観測を継続する
─FFR、通信終了




