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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP3『オペレーションライトニングストライク』

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31/124

31: EP3-7 反転攻勢

物語は、続く。

コロニー協定連合体 "CAU"

ライトニングストライク作戦 ─ ブロークンソード作戦

1日目

西暦3020年3月18日、協定宇宙時(STC)18:30

火星(マーズ)近傍宙域、CAU-ESF艦隊交戦宙域



イージスは崩壊した

CAUは『反転攻勢』へと踏み切る



極光

そう表現するしか無かった


アイサイトはその場にいた誰しもに瞬きする間すら与えずに、戦場を駆け抜けた

惑星間を遠い過去では考えられなかったほどの速さで繋ぐワープドライブ

それそのものを砲とし、自らを砲弾とする

光速以上の速さで全長200m近くもある物体が衝突する時の衝撃は恐らく今までに太陽系で観測されたあらゆる衝撃を上回っただろう



『艦隊長! 艦隊長、しっかりしてください!』

『...はっ...』


1人の男が命を賭した行い

それは、正しく報われた


ESFのオービタル・イージスは宇宙の藻屑と消え去った

アイサイトの、かの艦長の命懸けの賭けはそれに耐えるという選択肢を与えなかった

極光が収まった時、そこにはかつてモノだった何かの残骸が残るのみであり、それも大部分は火星の方向へと大きく吹き飛ばされていた


『緊急通信、RTSガンマ、エンスウェンよりウィルクスへ、聞きたいことが... ウィルクス? ウィルクス、どうした?』


エンスウェンは半ば放心状態のウィルクスに気づき、何事かと訝しんだ


『...エンスウェン、敵超長距離兵器は...破壊された。 これより第2艦隊は...アポリオンを発動する。』

『やはり第2艦隊がやったのか... 待て、アポリオンを?』


放心状態だったウィルクスの目に炎が宿る

そして、エンスウェンの問いを無視するかのように...


『通信科! 艦隊へ一斉通達! これより本艦隊はあらゆる投入可能な全リソースを投入し、敵艦隊の掃滅を図る! リアクター安全係数を0.05まで解放せよ!』

『りょ...了解、艦隊長!』

『待て待てウィルクス、何のつもりだ? お前らしくない、一体どうしたんだ?』

『エンスウェン... 私達はこれ以上、犠牲を払うつもりはないんだ。』

『...やはりらしくないぞ、ウィルクス。 お前が...そんなにも、気にかけるとはな。』

『エンスウェン...分かってくれ。 』


ウィルクスがエンスウェンに分からない程度に、止められたはずだった、と呟き、そして続ける


『それより、第3艦隊はどう動く?』

『分かった... 敵兵器が破壊されたなら...こちらが優位だ。 正規軍ネットワークにも情報を共有、一気に攻め込み敵艦隊を崩す、これ以上の無意味な損害増加は許容できないからな。 ネイヴィガーとカエデのオメガに突破口を開かせる。 ウィルクス、お前の第2艦隊でその敵艦隊に出来た破口をこじ開けてくれ。』

『分かった。 通信科、全スポッターへ通達、バトルワーカー隊の攻撃に乗じ、敵艦隊に突破口を開けるぞ!』

『了解!』


セイバーはこの好機を逃すまいと、行動を開始する

情報共有を受けたCAU正規軍もこの流れに乗るべく、防戦一方の陣形から攻撃的な陣形へと配置を変え始める


艦隊と艦隊

バトルワーカーとバトルワーカー

お禅立てはもう終わった

戦いは決戦へと移ろうとしていたのだ







その頃、ESF艦隊には混乱が広がっていた



『どうなってる!? 何故いきなりイージスが破壊されたんだ!』

『分からん、内通者がいたのか?』


ワープドライブを兵器とするなどとは、誰も思いもしなかった


『地表の司令部も混乱してる。 情報が正しく伝わってない。』

『敵バトルワーカーが突出してきてる! エリア3でヤバい連中が暴れてる、増援を送ってくれ!』

『エリア2艦隊指揮所より艦隊司令部、あー... 敵艦隊が一斉攻撃の構えを見せている。 防御陣形から突撃陣形らしき陣形へ移行しているようだ。』


ESF軍は火星を背に、左翼から右翼にかけて艦隊の展開エリアを5つに分けていた

エリア3、つまり最も中央に位置するそのエリアではバトルワーカー同士の決戦が始まっていた


『少佐! 敵が押し寄せてきてます!』

『分かっている! リヨン、援護しろ、敵の先鋒を挫く!』

『了解、少佐!』

『グルーバーとチェスターは俺を援護しろ。 クラウスの背中は俺たちで抑える。』

『了解しました!』

『りょ、了解です!』


ユウ・リヨン、そして彼の所属するライデン隊もそこにいた

元々パイロットとしては腕の立つ隊長のクラウス・ハーネルとその僚機たるエルマー・ブルックリン、そして若くも優秀であるユウ・リヨンの3名で新人の2人、カスパー・グルーバーとマルク・チェスターをサポートしながら戦果を挙げていた

...6人1組の分隊に後1人足りないのは、あのクロノスだ



『少佐後ろです!』


リヨンが叫びつつハーネルの背後の敵に対し攻撃する

それが衝撃でたじろいたところにハーネルが振り向きざまに振り回したソードが直撃し、両断される


『よくやったリヨン...今のはさすがに焦ったな。』

『危ないところでした、少佐。 しかし敵の勢いが急に凄まじくなりましたね。』

『あぁ、それだが、報告が上がっている。 こちらのイージスが先程撃墜されたそうだ。 その直後から敵艦隊が一斉攻撃に出ている。 ここで決着をつけるつもりなのだろう。』

『イージスが? あのイージスがですか?』

『そうらしい。 信じられないが... 内通者がいたか何かだろう。 敵艦隊からイージスを狙えるわけがない。』

『内通者ですか...』

『うむ... 』


一息つくための短い会話の後、俄に通信が騒がしくなる

ハーネルが分隊に号令し、話し始める


『エルマー、リヨン、状況が急変した。』

『どうしたんだクラウス?』

『なんでしょう?』


ブルックリンとリヨンが短く応じる


『第2大隊のキーラー大隊長が撃墜された。 通信にも応答しないらしい。』

『キーラー大隊長が!?』

『マズイな、キーラー大隊長はこのエリアの守備責任者だ。 クラウス、引き継ぎは?』

『指揮系統が混乱している。 ...何? 突破された?』


ハーネルが呟き、リヨンがそれに何事かと問う


『少佐?』

『分隊! 至急キーラー大隊長のいたゾーンへ向かう! 敵バトルワーカー隊の集中攻撃により突破されたそうだ、既に艦隊方面へ敵バトルワーカーが前進中らしい。』

『どうなってる? 後衛がいるだろう?』

『...覇権派の連中が今頃になって通達しているが、後衛は1機の敵バトルワーカーに荒らされ壊滅状態らしい。』

『クソが、あんのアホ共、また隠蔽しようとしたのか!?』

『今はそんな事はどうでもいい... 1時間ほど前から、後方で敵機を見かけたという報告が少数あったが、まさか事実だったとはな...』

『あぁクソ、クラウス、分かった。 グルーバー、チェスター、急ぐぞ。 遅れずに着いてこい!』

『了解!』

『了解、大尉。』


本来遊撃隊であるライデン隊の売りはやはりこのフットワークの軽さだろう

特定の部隊に属さず、隊長であるハーネルが必要と判断した場所へ急行する

例え数が減ろうとも、それは変わらないのだ






その頃、その敵バトルワーカーことローランドとディケは...



「ディケ、今度こそ全部か?」

『...はい、今度こそです。』


ローランドは1度ゾーン3の前線方向へ向かい、敵の後方へと圧力をかけていたがESF艦隊より後続の敵バトルワーカーが現れるやいなや、それを単機で迎撃していた


そして、勇敢にも立ち向かってきたそれらすらをもほぼ一掃したローランドは一息ついていた


「エジタイト残量は...30%か。 一旦帰還したほうがいいか。」

『ですね。 これ以上継続すると最悪の場合帰還が困難になります。』

「じゃあそうし... ディケ?」


コックピット内で浮かぶホログラムのディケが一瞬悩んだような表情を見せたのをローランドは見逃さなかった


『...いえ。 なんでもありませんよ。』

「今の間は... まぁいいか。 ディケ、母艦への最適ルートを算出してくれ。」

『了解、エリソン。』


これだけ高性能なAIならば感情の起伏があって当然だろうとローランドは納得し、次の行動へ移る


しかし奇妙なのは、いくら機体性能に圧倒的な差があれど、1人の人間にここまでのことが可能なのだろうか?

ESF艦隊の後衛は決して少数ではなかったし、それどころか中隊規模...120機ものバトルワーカーがいたはずだ

もちろん、その全てを撃破したわけではなく、撤退したものを除けば精々が半数程度だろう

つまり、ローランドは単機で実に60機もの敵機を葬ったのだ

それほどのことが...果たして可能なのだろうか?

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