26: EP3-2 伏兵
26話へようこそ
まだまだ、前哨戦
コロニー協定連合体 "CAU"
ライトニングストライク作戦
1日目
西暦3020年3月18日、協定宇宙時11:37
木星、火星中間宙域、小惑星帯
CAU連合艦隊
小惑星帯には『伏兵』が潜んでいるかもしれない
『オーバーロードよりガンマ7、そちらの状況を報告せよ。』
『こちらガンマ7、今のところ異常なし。』
『了解。 オーバーロードよりベータ4、そちらの状況を報告せよ。』
『こちらベータ4異常なし。 ...いや待ってくれ。 レーダーに何か...』
『イプシロン3よりオーバーロード! こちらから1時の方向に未確認機30を確認! サイズは...ファイタークラスと一致! こちらに向かってきてる!』
『オーバーロード了解、ガンマ、イプシロン全ユニットは対ファイター迎撃準備。』
『オーバーロード、ベータ4だ、こちらの10時の方向、バトルワーカーらしき反応を捉えた。 数は30、小隊規模だ。』
『了解、2方向からの同時攻撃か。 ベータ、デルタ全ユニットは順次バトルワーカー隊を出撃せよ。 アルファ全ユニットは一旦待機し出撃を待て。』
CAU連合艦隊は小惑星帯付近へジャンプ後、既にESFジャンプドライブジャマー圏内の小惑星帯を進行していた
陣形は冥王星方面軍の1艦隊を中心に『アルファ』として
その左右に土星方面軍の2艦隊が左翼に『ベータ』、右翼に『ガンマ』として
更にその外側に木星方面軍の2艦隊が左翼に『デルタ』、右翼に『イプシロン』として
それぞれ展開されている
セイバーの2艦隊は第3艦隊を『アルファ』後方、更にその後方に第2艦隊を展開していた
艦隊旗艦は『アルファ』中央部に位置する『ランティッヒ級』の指揮能力強化改装型である『ランティッヒコマンド』、コールサイン『オーバーロード』である
─Side: セイバー第1艦隊、派遣部隊オメガ
セイバー第2艦隊、輸送艦『サディア』バトルワーカーハンガー
『ウィルクスへ、こちらシオンハート。 肩慣らしにオメガチームも出撃する。』
『分かった、シオンハート。 正規軍艦隊に敵を近づけるなよ。』
『勿論だ。』
「ディケ、準備はいいか?」
『もちろんです、エリソン。 オペレーティングシステム、オールグリーン。』
シオンハート特務准将から出撃命令が出た。
任務は艦隊に接近しつつある敵バトルワーカー隊の迎撃。
小惑星帯に主力部隊が配備されているとは考えづらいが念の為、らしい。
ついでに雑兵程度なら肩慣らしにもちょうどいいだろう、と。
『武装システム最終チェック。 JBW-SW2、ショートレンジビームライフル、異常無し。 JBW-BW1、エジタイトブレード、出力正常。 EWEリアクター出力95%で維持。 エジタイト残量99%以上。 照準システムとENIをリンク開始... 機体システムをローランド・エリソンへ譲渡。』
「オーケー、受け取ったぞ、ディケ。」
『確認しました。 以降私はオペレーティングアシストへと移行します。』
ディケのアバター体、そのホログラムが手のひらサイズでコクピットに現れる。
これはディケのアバター体を知ってからの恒例だ。
ライブラの武装も最近になって1つ新型が配備された。
『JBW-SW2 ショートレンジビームライフル』だ。
SW1、試作ビームライフルで収集されたデータを元に取り回しとエジタイト効率を追求したものだ。
ライフルのサイズそのものを小型化したことで取り回しが大きく向上、更に発射ごとの出力を絞ることでEWEリアクターへの負荷を軽減している。
当然威力と射程は低下しているが、それでもESFの主力バトルワーカー『ネアス・アドニス』の装甲には十分致命傷に成りうる水準を維持している。
SW1が過剰火力だったという話でもあるな。
まぁあれは試作型だから仕方ない。
『ローランド、行けるな?』
「もちろんです、准将。」
『よし、じゃあそろそろ出撃だ。 』
続けてシオンハート特務准将が全隊に指示を出す。
『オメガチーム、出撃だ! 敵は少ないが油断はするなよ!』
『了解、大隊長。』
『了解した。』
『ダー。』
さて...良いところを見せないとな。
ほんの数分もかからず艦隊左前方、交戦予想エリアに着く。
『接敵するぞ。 各自自由に撃て、味方には当てるなよ!』
特務准将がそう言って急速に加速していく。
...あの人に着いてくのは誰にも無理だ。
敵は既にこちらに気づいている。
『エリソン、敵機のスキャンデータを表示します。』
視界の端にデータがログとして流れる。
ESF第3世代バトルワーカー『ネアス・アドニス』が20機...
第2世代重装型バトルワーカー『アトラス』が10機...
まぁ、このライブラの敵では無いはずだ。
『正規軍艦隊デルタのバトルワーカー隊が交戦開始。 シオンハート特務准将が同じく交戦区域へ突入。』
「俺達も遅れないようにしないとな。」
『砲撃に注意しろ! あのアトラス、デカブツを背負ってる!』
『重砲タイプか、さすが待ち伏せ部隊って感じだな。』
『アドニス型は多種多様だな、こっちも思わぬ攻撃に注意したほうがいい。』
正規軍の通信チャンネルから報告や忠告が聞こえてくる。
既に俺達は交戦区域にいる。
「ディケ、システム制御は任せるぞ。」
『了解。 良い狩りを。』
脳内でギアを切り替える。
さて...
目標をロック、接近...
当然、高速で移動すれば目立つ。
そして、目標にしていた敵がこちらに気づき迎撃しようとしてくる。
「オーケー、アドニス、武装は...27mmライフル、多少の被弾は無視できるか。」
『被弾しないに越したことはありませんよエリソン。』
「もちろんそりゃそうだ!」
機体を横に滑らせ敵の照準を揺らす。
宙間戦闘では基礎中の基礎だが、俺の場合はそれを通常のパイロットよりもより機敏に、即応しながらできる。
敵機に対し右に左に時に上下に機体を動かしつつ突撃する。
視界に設定しているインジケータがライフルの有効射程内を知らせてきた。
射程が短くなっている以上、十分な接近が必要だ。
こちらに必死に撃ってきている敵機に照準を定め、トリガーを引く。
狙い通りにネアス・アドニスの腹部にあるコクピットに直撃し、敵機が沈黙する。
撃破1、だな。
『お見事です、エリソン。 この調子で行きましょう。』
「ありがとよディケ。 ま、次つっても...」
『...相変わらずだけど大隊長には着いていけないな。 いい意味で。』
『だな。 もう15機殺ってる。 まさにワンマンアーミーというか...』
『見ろよ正規軍の奴ら。 明らかにドン引きだ。動きが止まってるぞ。 まぁ楽できていいんだが...』
「な? こういう事だ、ディケ。」
『...敵機残り8機。 一応直近の敵機を表示しま...それも今シオンハート特務准将が撃破。 残り7機。』
「...いやでもこれ、俺達必要あったか...?」
『気にしないほうがいいと思いますよ、エリソン。』
「...それもそうか。」
ほんの20分程度で敵は壊滅した。
ほとんどが特務准将の戦果だから恐ろしいもんだ。
『オーバーロード、こちらデルタ1。 敵バトルワーカーを殲滅した。』
『同じくイプシロン1、敵ファイターを殲滅した。』
『オーバーロード了解。 全隊を収容しこのまま進行する。』
『ウィルクス、おかしいと思わないか?』
『何がだ、エンスウェン?』
『こんな何でもないような位置で少数の敵が投入されたことだ。 無意味な戦力の逐次投入にしか見えない。』
『確かにそうだな。 罠でなければいいんだが...』
『罠ごと食いちぎってやればいいだろう、その時は。』
『それもそうだ。』
─Side: CAU正規軍艦隊司令部『オーバーロード』
30分後
「司令、敵バトルワーカーの交戦中の通信データの復号が完了しました。」
「あぁありがとう。 それで? 何か分かったか?」
CAU正規軍もESFの不可解な行動に疑惑を抱いていた
故に、通信から何か掴めないかと解析をしていた
「幾つか音声データとして復号出来ましたのでまず聞いていただければ。」
「再生してくれ。」
『クソ、話が違うぞ!』
『奴ら俺達をけしかけといてこれっぽっちも...ひっ───』
『あの黒いの速すぎる、追い切れない!』
『覇権派の連中、俺達を捨て駒にしたんだ!』
「...なるほどな。 ESFは派閥同士の対立が酷いとは聞いていたが...」
「でしょうね。 それともう1つ、関連して悪い報せがあります。」
「教えてくれ。」
「先程この宙域を離脱する所属不明バトルワーカーをセイバー第2艦隊の望遠カメラが捉えました。 恐らく、敵の偵察です。」
「先程の戦闘は...そういうことか。 捨て駒をけしかけ、こちらの戦力を探る...」
「そう推測して現在参謀班が再調整をしています。」
「そのまま続けさせてくれ。 用心しすぎるということはない。」
同刻
火星地表、赤道直下
軌道エレベータ基地ブラボー
『全要員へ、現在火星へCAUの大規模な艦隊が接近中。 小惑星帯での迎撃プロトコルを放棄し、火星防衛ラインでの迎撃へと移行する。 接敵予想時刻からの逆算から、本基地、あるいはチャーリーが標的と推測される。 即応要員は基地防衛体制へ移行せよ。 全バトルワーカー隊は軌道エレベータにて宇宙へ上がれ。』
「少尉! 出撃だ!」
「了解! クロノス、グルーバー、チェスター、5分で用意してくれ!」
「了解、少尉殿!」
「りょ、了解!」
「ふふーん...見せてもらうよ、ウィルクス。 あ、了解、ユウ少尉。」




